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25話 ドラゴンテイル初の○○○結成!?
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ドラゴンテイルコミュニティから程近い場所にある大きな木の下で大きなナリをした少年が遠い目をしながら三角座りをして抜けるような青い空を眺めていた。
甚平姿に長ズボンを履いた黒い肩まで伸びた髪を子犬の尻尾のように縛る少年は若干16歳のドラゴンテイルの代表の太助である。
色々する事が山積みになり、誰よりも寝る時間が遅く、そして起きるのは逆に一番に目を覚まし、薬草採取に出たり、ポーション作りに勤しんだ。
元々、忙しい身の太助であるがこうも忙しくなったのは3日前からである。
欠伸を噛み殺して隣に目を向けると豪快に大きな口を開けて寝息を立てるティカ、リンとアコは手を握り合うようにして眠る様は疲れた太助に癒しを与えてくれる。
「そういや、ジッちゃんが子供は癒しだって言ってたの最近、分かってきた気がするな」
と微笑みを浮かべて見つめる太助はある意味、末期である事に気付いていない。ここにホーラがいたなら頬を張って「気をしっかり持つさ!」と怒鳴っていただろう。
末期である事に気付いてない太助は更に視線を奥に向けるとウンザリとした表情を浮かべる。
そこには寝てからピクリとも動いた素振りが見えないピンク色の髪を肩ぐらいまで伸ばす美しい少女が眠っていた。
何も知らなければ、もしかしたらその姿を見て太助はときめく未来があったかもしれないが真実を知る太助がときめく事はなかった。
そこで寝ていたのはミンティア。アコと一緒にホルンに連れられて3日前にやってきた。
ホルンに要請してあった応援要員である女神、ミンティアであるがこの3日、いや、初日でいかにこの子が使えないと太助とロスワイゼは身を持って知る。
何かをさせようとすれば、すぐに逃げようとするのにご飯の時間になると当然のように食卓におり、よだれかけ、本人曰く、お食事エプロンを装着して瞳を輝かす。
なんとか無理やりでもやらせようとしたが1つを除いて、やらせなければ良かったと思わされる始末。
せめて、『軽食処 三代目』で給仕をと思ったがそれも初めて1時間でロスワイゼに太助に返却された。
「一応、頑張る気はあるみたいなんだけどぉ? 運べは転ぶ、注文は間違える、これじゃさすがにお客さんに申し訳ないから……」
困った顔したロスワイゼが「転んで熱いコーヒーをシロウさんにぶっかけて、シロウさんの注文を聞き間違って……あら、シロウさんしか迷惑がかかってないぃ?」と呟き、「シロウさんだけなら問題ないかしら?」と言って考える展開があったがやはり止めた。
止めた理由にシロウに迷惑になるからという理由は一切なかったと感じた太助はちょっとだけシロウに同情を覚えたらしい。
はぁ、と頭を抱える太助は北川家がある方向に目を向ける。
「どうして出来るのが洗濯だけ? お嫁さんの必須スキルみたいに駄女神の必須スキルだとでもいうのかな?」
今頃、学校の子達、残念な水の精霊と鬼ごっこでもしてると思われる太助にとって元祖、駄女神を思い出して深い溜息を零す。
大きな口を開けて豪快に寝るティカを見つめて太助は拳を握り締める。
ティカには洗濯以外にも出来る事を増やそうと……
決意を新たにする太助であるが、疲れる原因が目の前の者達だけでなく他にもある事を思い出して溜息を零す。
ポケットから取り出した2通の手紙はテツから宛てられたものであった。1つは太助宛てでもう1つはエンティ宛てである。
太助宛ては既に目を通してあり、師匠であるテツからエンティの身受け、正確に言うならコミュニティ入りして実践を積ませて欲しいという依頼であった。
確かに太助の目から見てもエンティは訓練ではなく、実践で鍛える領域に入っているように見える。
だが、教えを受けるだけでも反発気味であるエンティがどこまで言う事を聞くだろうと頭が痛い。
しかし、物は考えようかもしれないと太助は今回のテツの要望を前向きに考えていた。
雄一がトトランタにやってきた頃の冒険者の仕事は簡単に言うと狩りや犯罪者の取り締まりみたいなモノが主であった。だが、太助達の世代では犯罪者を取り締まるのは国がしっかりしてきており、簡単に言うと警察のようなものが機能しており冒険者がする機会は皆無とは言わないがほとんどされなくなっていた。
残るは狩りであるがやっているのは事情を抱えたソロぐらいである。そういう意味ではテルルもそれに分類される。
今の冒険者の花形はダンジョン攻略である。
その為には基本、パーティである事と冒険者試験、こないだカリーナが失敗したゴブリン退治ではなく王都で行われる試験で受かる必要があった。
ダンジョン攻略するパーティである以上、やはり信頼を置ける相手となるのは必然。
同じ釜の飯を食べ合う同士であれば、多少、喧嘩をしても知らない相手より信頼する。
テルルとカリーナは間違いなく遠距離タイプの冒険者に該当する。ロスワイゼは近接ではあるが訳あって冒険活動が出来ない。
そこでテツの要望で加入を勧められているエンティに繋がる。彼女は間違いなく近接タイプの冒険者になる。
太助達にとって願ったり叶ったりという訳である。
だから、エンティをコミュニティ入りさせると繋がる訳であるがあの頑固なところがあるエンティを説得するのは骨が折れそうだと思うだろうと察したテツが手紙の一文に交渉材料が添えられていた。
「なんか物で釣るみたいで気が引けるな……」
そうぼやいていると前方から競い合うように走るカリーナとエンティの姿を捉える。
なかなかいい勝負をしているようで拮抗していた。
このまま行くとどちらが勝つか分からないと思っていると苛立った様子で2人が太助から10m程、離れた位置で止まる。
そして、精神を集中を始めるカリーナと木刀を抜くエンティが全身に魔力を纏う。
「へぇ~」
2人の様子を見て、太助から見ると頼りないが、エンティが来た頃から考えると格段の成長を見せる2人。
小さい礫のような氷を頭上を生むカリーナが構えるエンティに放つ。
「私が先よ!」
「いや、私からだ!」
放たれた礫を避け、木刀で受け流し、叩き落とすなどするエンティを見て頷く。
「ふむ、まだ弱い魔力で発動したものだけのようだけど、それなりに狙えるようになったみたいだ。エンティも魔力を纏う事でぎこちなかった動きがマシになってるな」
どうやら張り合う事でお互いの成長を早めたようだ、と気付いた太助は笑みを浮かべる。
同時にエンティはここで得るモノが多そうで周りにも良い影響がありそうだと思うと先程のテツの提案、物で釣るような方法を取る事に決心がついた。
「おーい、2人共、おいで、話があるんだ」
小競り合いのような喧嘩をしていた2人にギロっと睨まれて正直言うと怖かった太助であったが立ち上がる事で自然に目線を一旦逃がす。
ブスっとした顔をした2人が太助を見上げてくるのに苦笑いしつつ、太助はエンティにテツからの手紙を手渡す。
嫌そうに受け取り、書かれている文字からテツだとすぐに気付いて喜色を浮かべたエンティが嬉しそうに手紙を読み始めるのを眺めるカリーナが拗ねた様子で太助に文句を言う。
「で、私には何の用?」
「ちょっと待ってね。エンティが手紙を読んでからで、じゃないと何度も同じ説明をするからね?」
おまけ扱いされたと思ったらしいカリーナが更に機嫌が悪くなったのを見て、一生懸命宥めようとするが効果はない。
更に先程まで喜色を浮かべていたエンティが嫌そうな顔をしているのが目に入る。
大事そうにテツの手紙を懐に仕舞ったエンティが見上げてくる。
「冒険者になるのはいいですけど、どうして私が貴方のコミュニティに?」
「まあ、師匠が俺に気を使ったという事もあるんだろうけど……ダンジョン攻略のためにね?」
そう言う太助が「ダンジョン攻略に求められるパーティの基本は知ってるよね?」と問われてエンティは納得はしたくないが分かるとばかりに嫌々頷く。
「分かりますけど、私にメリットがありません。今、指導して頂いている事にはちょっとだけは感謝してますが」
ちょっとだけなんだ、と苦笑いを浮かべたい太助であるが確かにエンティの言う通りである。
エンティ程の実力があれば、どこのコミュニティでも普通に入れる。
しかし、エンティが更なる高みを目指すのであれば北川家を除けば、太助の力を借りなければ成せない事もあった。
「その指導なのだけど、師匠から俺宛ての方に伝言があって、その伝言を見たところエンティ、師匠に教わりたいけど駄目だと言われてる事があるんでしょ?」
ビクッと肩を揺らすエンティに太助は小太刀を抜いて目の前に見せ、小太刀に魔力を纏わせ雷を発生させる。
それに目を広げて興奮気味に見つめるエンティから小太刀に纏わせた魔力は発散させて仕舞う。
「これをコミュニティに在籍して初心者ダンジョンを攻略したら教えていいと言われてるんだけど?」
「で、でも、それは最悪、ユウイチ様に……」
「そうそう、2の冒険者になったらアレも教えていいって師匠が?」
トドメを刺されたように膝を付くエンティ。
更に不満そうにするカリーナが太助の服の裾を引っ張る。
「どうしてコイツだけ?」
「ああ、カリーナももっと制御が付いてたら、と考えてる事があるから任せて?」
そう言われて怒るに怒れないとブスッと唇を尖らせるがどことなく嬉しそうなカリーナに苦笑を浮かべる太助。
どうやら2人はおとなしくやってくれそうだと思い、とりあえずは冒険者になるところからか、と考える太助は少し難しい顔をする。
「後は回復をしてくれるメンバーが居れば安心なんだけど……」
「……それは私がやりましょう」
後ろから声して振り返るとムクリと起き上がったミンティアがこちらにやってくる。
「ずっと寝た振りをしていた私が話は聞かせて貰いました。癒し、守りの魔法あれば使う事が出来ます」
「うん、まずは涎を拭って、落ち着いて話を始めてくれて良かったんだよ?」
太助がズボンのポケットから取り出したハンカチでミンティアの口から垂れるように出ていた涎を拭う。
一瞬、何かを考える素振りを見せたミンティアが半眼のカリーナと不安を隠せないエンティを見つめて力強く頷く。
「ずっと寝た振りをしていた私が話は聞かせて貰いました。癒し、守りの魔法あれば使う事が出来ます」
「ええっ!? やり直すの!?」
太助の突っ込みにも怯む様子を見せないミンティアを眺める。
どうやらドラゴンテイルの初めてのダンジョン攻略するパーティの結成への道は示されたようだ。
甚平姿に長ズボンを履いた黒い肩まで伸びた髪を子犬の尻尾のように縛る少年は若干16歳のドラゴンテイルの代表の太助である。
色々する事が山積みになり、誰よりも寝る時間が遅く、そして起きるのは逆に一番に目を覚まし、薬草採取に出たり、ポーション作りに勤しんだ。
元々、忙しい身の太助であるがこうも忙しくなったのは3日前からである。
欠伸を噛み殺して隣に目を向けると豪快に大きな口を開けて寝息を立てるティカ、リンとアコは手を握り合うようにして眠る様は疲れた太助に癒しを与えてくれる。
「そういや、ジッちゃんが子供は癒しだって言ってたの最近、分かってきた気がするな」
と微笑みを浮かべて見つめる太助はある意味、末期である事に気付いていない。ここにホーラがいたなら頬を張って「気をしっかり持つさ!」と怒鳴っていただろう。
末期である事に気付いてない太助は更に視線を奥に向けるとウンザリとした表情を浮かべる。
そこには寝てからピクリとも動いた素振りが見えないピンク色の髪を肩ぐらいまで伸ばす美しい少女が眠っていた。
何も知らなければ、もしかしたらその姿を見て太助はときめく未来があったかもしれないが真実を知る太助がときめく事はなかった。
そこで寝ていたのはミンティア。アコと一緒にホルンに連れられて3日前にやってきた。
ホルンに要請してあった応援要員である女神、ミンティアであるがこの3日、いや、初日でいかにこの子が使えないと太助とロスワイゼは身を持って知る。
何かをさせようとすれば、すぐに逃げようとするのにご飯の時間になると当然のように食卓におり、よだれかけ、本人曰く、お食事エプロンを装着して瞳を輝かす。
なんとか無理やりでもやらせようとしたが1つを除いて、やらせなければ良かったと思わされる始末。
せめて、『軽食処 三代目』で給仕をと思ったがそれも初めて1時間でロスワイゼに太助に返却された。
「一応、頑張る気はあるみたいなんだけどぉ? 運べは転ぶ、注文は間違える、これじゃさすがにお客さんに申し訳ないから……」
困った顔したロスワイゼが「転んで熱いコーヒーをシロウさんにぶっかけて、シロウさんの注文を聞き間違って……あら、シロウさんしか迷惑がかかってないぃ?」と呟き、「シロウさんだけなら問題ないかしら?」と言って考える展開があったがやはり止めた。
止めた理由にシロウに迷惑になるからという理由は一切なかったと感じた太助はちょっとだけシロウに同情を覚えたらしい。
はぁ、と頭を抱える太助は北川家がある方向に目を向ける。
「どうして出来るのが洗濯だけ? お嫁さんの必須スキルみたいに駄女神の必須スキルだとでもいうのかな?」
今頃、学校の子達、残念な水の精霊と鬼ごっこでもしてると思われる太助にとって元祖、駄女神を思い出して深い溜息を零す。
大きな口を開けて豪快に寝るティカを見つめて太助は拳を握り締める。
ティカには洗濯以外にも出来る事を増やそうと……
決意を新たにする太助であるが、疲れる原因が目の前の者達だけでなく他にもある事を思い出して溜息を零す。
ポケットから取り出した2通の手紙はテツから宛てられたものであった。1つは太助宛てでもう1つはエンティ宛てである。
太助宛ては既に目を通してあり、師匠であるテツからエンティの身受け、正確に言うならコミュニティ入りして実践を積ませて欲しいという依頼であった。
確かに太助の目から見てもエンティは訓練ではなく、実践で鍛える領域に入っているように見える。
だが、教えを受けるだけでも反発気味であるエンティがどこまで言う事を聞くだろうと頭が痛い。
しかし、物は考えようかもしれないと太助は今回のテツの要望を前向きに考えていた。
雄一がトトランタにやってきた頃の冒険者の仕事は簡単に言うと狩りや犯罪者の取り締まりみたいなモノが主であった。だが、太助達の世代では犯罪者を取り締まるのは国がしっかりしてきており、簡単に言うと警察のようなものが機能しており冒険者がする機会は皆無とは言わないがほとんどされなくなっていた。
残るは狩りであるがやっているのは事情を抱えたソロぐらいである。そういう意味ではテルルもそれに分類される。
今の冒険者の花形はダンジョン攻略である。
その為には基本、パーティである事と冒険者試験、こないだカリーナが失敗したゴブリン退治ではなく王都で行われる試験で受かる必要があった。
ダンジョン攻略するパーティである以上、やはり信頼を置ける相手となるのは必然。
同じ釜の飯を食べ合う同士であれば、多少、喧嘩をしても知らない相手より信頼する。
テルルとカリーナは間違いなく遠距離タイプの冒険者に該当する。ロスワイゼは近接ではあるが訳あって冒険活動が出来ない。
そこでテツの要望で加入を勧められているエンティに繋がる。彼女は間違いなく近接タイプの冒険者になる。
太助達にとって願ったり叶ったりという訳である。
だから、エンティをコミュニティ入りさせると繋がる訳であるがあの頑固なところがあるエンティを説得するのは骨が折れそうだと思うだろうと察したテツが手紙の一文に交渉材料が添えられていた。
「なんか物で釣るみたいで気が引けるな……」
そうぼやいていると前方から競い合うように走るカリーナとエンティの姿を捉える。
なかなかいい勝負をしているようで拮抗していた。
このまま行くとどちらが勝つか分からないと思っていると苛立った様子で2人が太助から10m程、離れた位置で止まる。
そして、精神を集中を始めるカリーナと木刀を抜くエンティが全身に魔力を纏う。
「へぇ~」
2人の様子を見て、太助から見ると頼りないが、エンティが来た頃から考えると格段の成長を見せる2人。
小さい礫のような氷を頭上を生むカリーナが構えるエンティに放つ。
「私が先よ!」
「いや、私からだ!」
放たれた礫を避け、木刀で受け流し、叩き落とすなどするエンティを見て頷く。
「ふむ、まだ弱い魔力で発動したものだけのようだけど、それなりに狙えるようになったみたいだ。エンティも魔力を纏う事でぎこちなかった動きがマシになってるな」
どうやら張り合う事でお互いの成長を早めたようだ、と気付いた太助は笑みを浮かべる。
同時にエンティはここで得るモノが多そうで周りにも良い影響がありそうだと思うと先程のテツの提案、物で釣るような方法を取る事に決心がついた。
「おーい、2人共、おいで、話があるんだ」
小競り合いのような喧嘩をしていた2人にギロっと睨まれて正直言うと怖かった太助であったが立ち上がる事で自然に目線を一旦逃がす。
ブスっとした顔をした2人が太助を見上げてくるのに苦笑いしつつ、太助はエンティにテツからの手紙を手渡す。
嫌そうに受け取り、書かれている文字からテツだとすぐに気付いて喜色を浮かべたエンティが嬉しそうに手紙を読み始めるのを眺めるカリーナが拗ねた様子で太助に文句を言う。
「で、私には何の用?」
「ちょっと待ってね。エンティが手紙を読んでからで、じゃないと何度も同じ説明をするからね?」
おまけ扱いされたと思ったらしいカリーナが更に機嫌が悪くなったのを見て、一生懸命宥めようとするが効果はない。
更に先程まで喜色を浮かべていたエンティが嫌そうな顔をしているのが目に入る。
大事そうにテツの手紙を懐に仕舞ったエンティが見上げてくる。
「冒険者になるのはいいですけど、どうして私が貴方のコミュニティに?」
「まあ、師匠が俺に気を使ったという事もあるんだろうけど……ダンジョン攻略のためにね?」
そう言う太助が「ダンジョン攻略に求められるパーティの基本は知ってるよね?」と問われてエンティは納得はしたくないが分かるとばかりに嫌々頷く。
「分かりますけど、私にメリットがありません。今、指導して頂いている事にはちょっとだけは感謝してますが」
ちょっとだけなんだ、と苦笑いを浮かべたい太助であるが確かにエンティの言う通りである。
エンティ程の実力があれば、どこのコミュニティでも普通に入れる。
しかし、エンティが更なる高みを目指すのであれば北川家を除けば、太助の力を借りなければ成せない事もあった。
「その指導なのだけど、師匠から俺宛ての方に伝言があって、その伝言を見たところエンティ、師匠に教わりたいけど駄目だと言われてる事があるんでしょ?」
ビクッと肩を揺らすエンティに太助は小太刀を抜いて目の前に見せ、小太刀に魔力を纏わせ雷を発生させる。
それに目を広げて興奮気味に見つめるエンティから小太刀に纏わせた魔力は発散させて仕舞う。
「これをコミュニティに在籍して初心者ダンジョンを攻略したら教えていいと言われてるんだけど?」
「で、でも、それは最悪、ユウイチ様に……」
「そうそう、2の冒険者になったらアレも教えていいって師匠が?」
トドメを刺されたように膝を付くエンティ。
更に不満そうにするカリーナが太助の服の裾を引っ張る。
「どうしてコイツだけ?」
「ああ、カリーナももっと制御が付いてたら、と考えてる事があるから任せて?」
そう言われて怒るに怒れないとブスッと唇を尖らせるがどことなく嬉しそうなカリーナに苦笑を浮かべる太助。
どうやら2人はおとなしくやってくれそうだと思い、とりあえずは冒険者になるところからか、と考える太助は少し難しい顔をする。
「後は回復をしてくれるメンバーが居れば安心なんだけど……」
「……それは私がやりましょう」
後ろから声して振り返るとムクリと起き上がったミンティアがこちらにやってくる。
「ずっと寝た振りをしていた私が話は聞かせて貰いました。癒し、守りの魔法あれば使う事が出来ます」
「うん、まずは涎を拭って、落ち着いて話を始めてくれて良かったんだよ?」
太助がズボンのポケットから取り出したハンカチでミンティアの口から垂れるように出ていた涎を拭う。
一瞬、何かを考える素振りを見せたミンティアが半眼のカリーナと不安を隠せないエンティを見つめて力強く頷く。
「ずっと寝た振りをしていた私が話は聞かせて貰いました。癒し、守りの魔法あれば使う事が出来ます」
「ええっ!? やり直すの!?」
太助の突っ込みにも怯む様子を見せないミンティアを眺める。
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