バカは一度死んだぐらいでは治らないー兄貴を道連れにして異世界転生ー

バイブルさん

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11話 ギルドの真ん中で兄やんっ! とバカは再び叫ぶ

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 3人はアウトローギルドに入る。

 奥に受付と思われるカウンターがあり、そこには数人の受付嬢の姿がある。

 今は夕方から夜に差し掛かる時間のせいかカウンターは暇そうだ。受付にいる受付嬢も書類整理や仕事納めの準備をしている姿すらある。

 酒場は併設されてはないようだが手前にいくつもあるテーブルで酒盛りしてる姿見える。
 おそらく楽しそうにしてる集団は仕事が上手くいったグループで逆にヤケ酒してる集団は逆なのだろう。

 どうやら酒を持ち込んで勝手に騒いでいるようだ。

「ええな、ええな、こういう雰囲気ワイ好きやで。今度混ざろうっと」

 ジュンは目を爛々とさせて羨ましそうに眺める。

 それを見る兄貴はこういう場所で騒ぐぐらいならジュンには健全で助かると心で思う。

 ジュンが好きなお姉ちゃんのいる店とかだと揉めると面倒事になりかねないが、冒険者、もといアウトローと殴り合いの喧嘩で済む。
 死傷沙汰とならない限り、アウトロー相手ならなんとかなる。兄貴が耳にしてる限りのアウトロー達の扱いであるならば。

 アウトロー同士の揉め事は、まあ、つまるところだいたいの事は拳で解決、そういう集団ということだ。

 ジュラもジュンの様子を見てウンウンと頷いている。

 健全さという面で兄貴と同じ思いのようだ。

 兄貴は今度と言いつつ、今、混ざりたそうに羨ましげに見ているジュンの首根っこを掴まえて引き寄せる。

「お前が言ってるように今度だ、今度。それより片付け作業が済んでしまったところで手続きしてくれと言いたくないから先に手続きに行くぞ」
「ぶぅ~、ヘイヘイ」

 不貞腐れたジュンを引きずって受付に向かう兄貴と唇を尖らせて拗ねるジュンを見てクスクスと笑うジュラが続く。

 ざっと見渡して、まだ仕事納めの準備を始めてなさそうな受付嬢を捜す兄貴。

 その中で唯一、無駄にキリッと前を見据える丸眼鏡をかける受付嬢を発見した兄貴はその受付嬢の前に行く。

「そろそろ仕事納めかもしれんが登録の手続き頼みたいんだがいいか?」
「はい、いいですよ。それに私は遅番なので大丈夫です」

 そう言われた兄貴は依頼によっては遅く帰ってくるアウトローも居るからそれに対応されてるのかと納得する。

 丸眼鏡をかけた受付嬢は、では~、と呟きながら何やら用紙を取り出し、羽根ペンを手にする。

「御三方全員登録でよろしかったですか?」
「そそ、ワイ、ジュンとジュラと兄(にい)やんの3人」

 いよいよ登録だと不貞腐れていた事を忘れたジュンが兄貴を押し退けてカウンターに身を乗り出す。

 そんなジュンが鬱陶しいとばかりに手で押し退ける兄貴。

「まあ、そう言う事だ。頼めるか?」
「はい~大丈夫ですよ。そうそう、ギルドの説明などはご必要ですか?」

 受付嬢は器用に羽根ペンを滑らかに動かしながらもこちらを見ながら聞いてくる。

「頼めるか?」
「はい、ではご説明しますね」

 兄貴は既に事前に調べて知っていたが、ジュンは勿論、ジュラも知らないはずだからお願いする。

 要約すると悪い事はしないようにという事。

 アウトロー同士の喧嘩にはギルドは不介入。しかし刃傷沙汰、殺人至る程になると除名処分や指名手配を受ける場合がある。つまり、揉め事は拳でお願いします、という事らしい。

 この辺まではジュンも前世のアニメなどから知っている冒険者ギルドのイメージとそれほど離れてないので理解出来たようで頷いている。

 だが、アニメ知識があるジュンにも馴染みのない話が飛び出す。

「最後にですね、アウトローギルドには『インスタントスキル』というものを取得出来る制度があります」
「「インスタントスキル」」

 ジュンとジュラが仲良く首を横に傾げる。

 兄貴はそれを聞いて少し渋い表情だ。

 知らないジュンとジュラに向けて受付嬢が説明を続ける。

「アウトローギルドでは生まれ持ったスキル、後発で発現したスキルなどを登録出来るシステムがあります。それを持ってない人に発現させる事が出来るのです」

 ジュンとジュラは素直に「おお~」と驚き、感動してるようだ。

 安易にスキル取得出来てしまう、というところが気に入らないのが兄貴。何かズルをしてるように感じるからである。
 しかも、自分で取得したスキルと違い、成長もしないという事で劣化スキルとも言われている辺りが余計に面白くない。

 凄いと身を乗り出す2人に「凄いですよね~原理は私はさっぱり分かってないんですけど」と屈託のない笑みを浮かべる。

「こちらがその覚えられるスキルの一覧です」
「どれどれ」

 興味ありますと目を輝かす2人は一覧を手にして眺め始め、ほー、へぇー、とバカ丸出し熟読始める。

 その様子にムスッとする兄貴。

 ジュンがある事に気付き、受付嬢に聞く。

「なあなあ、スキルの隣にある数字ってなんよ?」
「ああ、それは貢献ポイントですね。ランク上昇に必要な評価ポイントと別に貢献ポイントというのが依頼達成と共に加算されていきます。それを貯めてそのポイントで交換、そして取得という流れです」
「うひょ~やる気になるわぁ。なあ、ジュラ」
「うん、ジュラも欲しいの沢山ある」

 嬉しそうな2人に対照的な兄貴が口を開く。

「そう安易にスキルを手に入れるのはどうかと思うぞ?」
「ええやん、便利なもんは使うに限るで?」

 両手を頭の後ろで組んであっけらかんに言ってくるジュンに頭を抱える兄貴。

 再び苦言を口にしようとした兄貴はジュンの手元から用紙が一枚落ちるのを見て空中でキャッチする。

「もっと大事に扱え、紙も安くは……」
「どした、兄やん」

 兄貴は用紙を覗き込んだまま固まって動かない。良く見ると僅かに肩が震えているがピタリと止まると用紙をカウンターに置く。

 澄ました顔をした兄貴が呟くように言う。

「まあ、それに頼りきりになるのは良くないが便利なシステムを利用しないのもまた愚かだな」
「ど、どうしたの! お兄さん言ってる事がさっきとまったく違うけど!?」

 兄貴の豹変ぶりに驚いているがジュンは先程、兄貴が手にした用紙を凝視して何かに気付いたようで呆れる様子を隠さずジュラの背中をツンツンと突く。

 呼ばれたジュラは振り返るとジュンが用紙のある場所に指を差している。

 そこに書かれている文字を見てジュラも納得して兄貴に向き直り苦笑する。


『猫に愛される者』


 兄貴は猫が好きである。だが、前世、今世ともに猫に嫌われ続けている。

 つまり努力でどうこう出来る話ではないというのは兄貴は痛いほど理解出来ていた。

 そして、他人から見たら無駄な努力をして四肢を付けて悲しむ兄貴を見ていたジュンは生温かい視線を向ける。

「1万ポイントか、他のスキルでも高いのでも100とかやのに……」
「ええまあ、登録した本人も欲しがる人がいないだろうと分かってネタ登録されたと聞きますし、総ポイントでも1万を超えた人なんて歴代でも数人いるかどうかと思いますよ?」

 ムリムリと手を振る受付嬢は笑う。

 だが、ジュンとジュラは違う。

 兄貴ならやる。意地でもやり切ると疑っていない。

 それ程の兄貴の猫への渇望を知っているからだ。

「これでだいたいの説明は済んだと思います」

 こんなやり取りをしてる間にも手続きを進めていたらしい受付嬢は手元で何やら書いていた用紙をトントンとカウンターで整える。

 そして、3人の前に3枚のカードを差し出される。

「これがアウトローギルドの登録証です。Fランクスタートになります、頑張ってくださいね」

 それぞれに登録証、カードを手渡されてジュンとジュラは嬉しそうにしているが兄貴はカードを見て硬直していた。

 兄貴の様子がおかしい事に気付いた2人が首を傾げていると

「それではジュン様、ジュラ様、そして、ニィヤン様のご活躍をお祈りしております」

 そう受付嬢が口にした瞬間2人は目を大きく見開き、慌てて兄貴が手にするカードを覗き込む。


 Fランク   ニィヤン


 一瞬の沈黙の後、ジュンは爆笑し、ジュラはお腹を抱えて噴き出すのを必死に堪える。

 ギギィと言う音が聞こえそうな様子で再起動し出す兄貴が受付嬢に

「コイツが言ってたのは兄貴という意味の兄(にい)やんというもので……」
「ああ! そういう意味でしたか……でもでも、どのギルドでも偽名登録は問題ありませんし……作り直します?」
「いや、偽名でも問題ないならこのままでいい」

 少し肩を落とす兄貴に申し訳なさそうな受付嬢。

 ちょっと落ち込んでる兄貴、もといニィヤンを見て爆笑し続けるジュンが指を差してくる。

「ニィヤン……ぷぷぷぅ」
「煩い、バカ」

 今回も綺麗に拳をまともに顔で受けるジュンは引っ繰り返っても笑い続ける。

 はぁ、と溜息を吐くニィヤンは紫煙を深く胸に入れる。

 そして、無事? に3人は登録を済ませたのであった。
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