バカは一度死んだぐらいでは治らないー兄貴を道連れにして異世界転生ー

バイブルさん

文字の大きさ
15 / 22

14話 祝福を受けるニィヤンを見守るバカ

しおりを挟む
「すまない、騒がした」

 ニィヤンは神様とライラに軽く会釈する。

 いつも通りのニィヤンに見えるが煙草を持つ手が若干まだ震えている様子から完全復活とは言えないようだ。

 ジュンに死んだと叫ばれた後、そのジュンにハー○ブレイクを喰らってそれが蘇生処置となり帰ってきたニィヤン。

 その当のジュンはガードしながら上半身を八の字を描く動きをしながらガンギマリの目をしながら静かに言う。

「会長、ワイまだまだいけるで!」
「誰が会長だ」

 ニィヤンはジュンの頭に拳を落とす事で正気に戻させる。同時にいつもの流れというジュンの折檻で調子を取り戻す。

 苦笑いしたライラが

「達観してるかと思えば意外な弱点もあるのね、可愛いとは思うけど」
「兄(にい)やんは前世よりその辺メッチャ弱なってるから気を付けてくれ。後、兄やんはウブで可愛いんや!」

 ごっつい体に鬼族の特有の厳つい系の顔をするニィヤン。

 自分でも分かっているから可愛いは勘弁してくれとは思うが先程の失態を思うと黙るしかなかった。

「また話を戻すけど、この女の子達は確かに貴方に幸せにして貰える可能性があるのは間違いないけど貴方じゃなければという話じゃないわ」

 未だに周囲に浮くピンクの球体を示しながら告げられる。

 最初、ニィヤンはそれを幸せにするのが転生を見逃す条件と思ってしまい、それを幸せにするのが義務かと思ってしまったようだ。

 女の幸せイコール結婚ではないが一定数の女はそうである層は確実にある。

 何人、いや、この球体の数からすると何千もありうる結婚を要求されるのかと思った瞬間、思考がフリーズして心臓もフリーズしてしまったニィヤン。

 だからニィヤンは強く念押ししたい。

 大抵の男はこの事実に辿りついたら思考停止するし、俺は決してウブではないと。

 そんなニィヤンの想いは無視されて話は続けられる。

「でもね、そうではない子は存在するの」

 ライラがそう言って両手で辺りを払うようにすると浮いていた球体が消える。いや、全て消えたかのように見えたが3つだけ残る。

 しかし、先程周りに浮いていたピンクの球体と違い、黒くなった球体である。

 それを優しくコワレモノを扱うように両手の上に集めるライラ。

「そう、このように真っ黒、未来が閉ざされており不幸と絶望が約束された女の子が存在するの」

 それをニィヤンに見せるように近づけてくる。

 近づけられた黒い球体を覗き込むニィヤンはある事に気付く。

「ん? これは……」
「気付いてくれたみたいね。そう僅か、本当に僅かではあるのだけどピンク色が生まれてる」

 真っ黒かと思われた球体に針が刺された跡と言われたら納得してしまいそうなピンク色が確かに存在した。

「これが貴方が転生して生まれた。正直、どうする事も出来ないと思っていたから驚いたわ」
「俺にどうにか出来ると?」
「可能性よ。でも、この短い間のやり取りでも分かったわ。貴方はこの可能性だけと言われても決して見逃せない。やってくれるのでしょ?」

 そう自信ありげにライラが言ってくる。

 やるかやらないかと問われたらニィヤンは当然やると答えるが……

「やるのはいいが、相手が分からなければ何も出来ずに手遅れになる。教えて貰えるのか?」
「それは私にも誰かは分からないわ。普通であれば辿れば分かるのだけどこの3つはその繋がりが切れてる」

 だから、ニィヤンに必ず出会い、その渦中に巻き込まれる祝福を与えると言われる。

 介入すると決めているニィヤンではあるが思わず

「それって祝福ではなく呪いじゃないか?」
「祝福よ」

 ニィヤンの言葉をバッサリと斬ってみせるライラ。

 諦めるように紫煙を吐くニィヤンはある事に気付き確認する。

「助けて結婚しろ、という話じゃないよな?」
「そうね、相手が望まなかったらね」

 そう言うライラは出会った時のような暗い視線をニィヤンに向ける。

 嫌な予感しかしないニィヤン。

「良く考えて? 絶望しかない状態から救い上げた男に想いを寄せない女の子がどれだけいるかしら……だから、貴方には拒否権は私が認めない」
「横暴だぁぁ!」

 それ込みの祝福を与えましょうと言われるがニィヤンは

「だから、それは呪い……」

 最後まで言わせて貰えなかった。何故なら球体を近くで見せる為に近づいていたライラに顔を両手でガシっと掴まれて唇を唇で塞がれた為である。

「……ッ!」

 ニィヤンはグルグルと隻眼を回す。

 それを今まで黙って見守ってた2人が両手を組みながら興味ありげに見つめている。

 ジュンが

「あれってチューする必要あんの?」
「別に頬や額でもええんやで?」

 神様が呑気に答える。嫁のキスシーンを見せられているのにも関わらず呑気なものである。
 ぶっちゃけ、神様はついでにライラも貰っていって貰えないかなぁ~と思っているぐらいであった。

「しかもあれってえらく長いけど……舌も入れられとるよな、兄やんレイプされてるんとちゃう?」
「あそこまで丁寧に神力を練り込みながらやってるところを見ると本気で逃がさない気みたいやね」

 ジュンは相手が美人で良かったな兄やんと呑気に眺め、神様は本気でニィヤンに擦り付ける未来を夢見ながら頷いている。

 どれくらいの時間そうしていたか分からないが1分とかそういう短い時間ではなく長い時間をかけられたキスもとい祝福の完了の時がきたようだ。

 プハッという擬音が聞こえそうな唇の離れ方をしたライラは頬を紅潮させ、口許を手の甲で拭い、「ご馳走様♪」と可愛らしく言ってるがジュンには猛獣が舌舐めずりしているようにしか見えない。

 当の漸く解放されたニィヤンは隻眼を回してフラフラして背から倒れる。

 ズッドーン

 人が倒れたとは思えないような音と共に完全に目を回して失神していた。

「あらあら、まだ伝えたい事があったんだけど無理そうだから、バカの弟に伝えるわね」
「ワイはバカちゃう! で、なんや?」

 訂正は入れるがとりあえず聞く体勢になる。

「必ず出会い、その問題に遭遇するようにしたわ。後、彼女達がニィヤンを求める気持ちが本物なら印(しるし)が目で分かるようにしたから印に気付いたら優しく受け止めるように伝えてね」
「なんか分からんけど分かった」

 そう自信ありげに答えるジュン。

 これをニィヤンが見ていれば分かってないと気付いたがこの場にそれを突っ込む者はいなかった。

 満足げに頷くライラを駄目亭主もとい神様に指差す。

「アンタはここに残ってニィヤンが転生した細々とした修正をしなさいよ」
「分かっとるよ。ワシも元々そのつもりじゃった」
「ついでにそこのバカの弟と一緒に折檻受けてまともになるといいわ」

 折檻の言葉にげんなりとする神様を見て満足そうにするライラ。

「じゃ、私は帰るわ。ニィヤンにまた会いましょうと伝えておいて」

 そう言うとライラの姿は掻き消え、そして同時に白い空間から商業ギルド近くの路地裏に3人は現れる。

 ジュンはハァと肩で溜息をする。

「なんや最初から最後までよう分からんかったわ。とりあえず帰って寝たい」
「そうじゃな、もう夜も遅いから寝た方がいいじゃろ」

 そう言う神様の言葉に同意とばかりにジュンは失神して倒れるニィヤンを見つめる。

 すぐに目を覚ますように見えないニィヤンを担いで帰るかと思うジュンはおんぶしようとするが

「おもっ! 重すぎるわ、何食ったらこんな重くなるんだ?」

 なんとか担ぎ上げはしたがその場から動けそうにないジュン。

「しゃーない、ゴリラっ!」

 深紅のオーラを纏ったジュンは筋力を強化させるとやっとドスドスと足を鳴らして歩き始める。

「さあ、宿に……そういやワイ宿がどこか知らん」
「こっちじゃ」
「なんで知ってるん?」
「ワシ、神様」

 良く分からない説明であったがジュンはなるほどと納得して先導する神様に着いていこうとするが特別早く歩いている神様ではないのにどんどん距離を開けられる。
 ニィヤンが重すぎるのだ。

 ジュンはゴリラだけでなくダチョウを使って神様を追いかけて宿へと向かうのであったがお姉ちゃんのいる店に行き損ねた事を気付くのは次の朝、目を覚ました時であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

処理中です...