自然に口無し されど罰の花束を

六月 鵺

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その葛藤に意味はないの

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「手を繋いだら行ってみよう」

窓際の席。頬杖をついて空を見上げながら、好きな歌のワンフレーズを誰にも聴こえないように口ずさむ。
今日も今日とて、つまらない学校に一日の大半を費やさなきゃならない。はぁ……さっさと終わってくれねーかな。

「うわっ!?」

驚いて反射的に腕で顔を守る。
鴉が何故か、俺の横の窓のサッシに器用に止まってる。鴉は首を傾げながら僕を見つめる。
てかこの鴉……足が三つあって額にも三つ目の紅い目がある。なんなんだよこいつ…普通の鴉じゃない。

「何ー、あの鴉?」

鬼夜きやをじっと見てるよ、あの鴉。気持ち悪ーい」

「鴉相手に八つ当たりでもしたんじゃねーの?」

「鴉って苛めた相手をずっと覚えてるって言うもんねー」

ああ五月蝿うるさい耳障りだ。でもそんな事より、あいつらには普通の鴉にしか見えてないのか?僕にしか、足と目は見えてない……?

【何を驚いてんだ?奴らと混ざったんだろ?今更オレみたいな弱いあやかしなんざ敵にもなんねーだろ】

「……は?何を言って…?」

夢?これも夢か?今夢の中にいるのか?手の甲をつねってみたけど、普通に痛い。

【おいおい、覚えてねーって言うのか?自覚なし?まぁいいや。お前に話があんだよ。夜に、そうだな日付が変わる頃に、山の北側に来い。その代わりに、色々教えてやる】

「わ、分かったよ……。行けばいいんだろ」

【お、話が分かる奴はいいねぇ!じゃあ、待ってるぞ!】

嬉しそうに笑いながら言うと、そのまま飛び立って行った。本当になんだったんだあの鴉。

「何あいつ、鴉と喋ってたよ!」

鴉の声は他の奴らには聴こえなかったのか?それともただの鳴き声にしか聴こえなかった?

「きもーい!」

「てかさー、なんであいつ学校来てんの?」

五月蝿い、僕を見て笑うな。そんなに僕を苛めて楽しいか!違う、怒りを感じるな。こいつらはただの雑音、聞き流せ。僕がこいつらの為に感情を動かす必要はない。
机の上の死ねや学校来んなや、生きてる価値ねぇよの落書きも放っておけばいい。消したりするからまた書かれるんだ。
こいつらも、虐待するくせに世間体を気にして高校に行かせるあいつらも、ただの空気だ。
本でも読んで気を紛らわそう。机の中に入れた本を取ろうとした時だった。

「つっ!」

指先に痛みが走って思わず手を引く。見ると指先にぷくっと膨らんだ血が。血を拭くと結構深くまで刺さったのか、傷が血の筋みたいになってる。
中を覗いてみると、剣山が置いてある。大声で怒鳴りそうになるのを抑える。
くすくすと聴こえるように笑う奴ら。怒るな。何も感じるな。こんなつまらない事ばかりする奴らと同じになるな。

「……嘘だろ」

絆創膏を貼ろうとしたさっきまで傷のあった指先は、何事もなかったかのように傷が消えている。
本当に何がどうなってんだよ。
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