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その葛藤に意味はないの
十弍
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「なぁ、その命が尽きそうな奴ってお前と同じ鴉なのか?」
歩く音だけが森の中にやけに響く。
【いんや、ただの猫だよ。病気で捨てられたただの猫だ】
病気で……つまり、人間の勝手で捨てられたって事か。
…………昔、ずぶ濡れで死にそうになってた子猫を助けようとして、結局あいつらに殺された事あったな。嫌な事思い出した。
あの時僕が拾ったりしなければ、楽に死ねたかも知れないのに。殺される事なんてなかったのに。
【どうした?顔色悪いぞ】
「いや、なんでもない。ちょっと疲れただけだ」
【そうか。悪いな】
「………………なぁ、病気で捨てられたって、病気をするまでは可愛がられてたのか?」
僕がそんな質問をするのが意外だったのか、鴉は目を丸くする。
【ああ、そうだよ。病気をするまでは可愛がられて幸せだったんだよ。けどな、病気が分かった途端に、別の子猫を買ってそいつをゴミみたいに捨てやがったんだ。あいつの飼い主は家族じゃなくて、結局思い通りになる人形が欲しいだけだったんだよ】
「なんでお前はその猫の事に詳しいんだ?」
【……ずっと見てたからな。生まれたてで捨てられて、オレが半年間面倒見てやったんだ。やっと家族が出来て幸せに暮らせてると思ってたのに、最後の最後でこれかよ。オレはあんな風に捨てられる為に、あいつを見守ってきた訳じゃない】
淡々と、でも激しく燃える怒りと憎しみの込められた声が、酷く哀しく聴こえる。思い通りにならない人形はいらない……か。まるで僕と同じようなものだな。
♢♢♢♢♢♢
やがて、小さな洞窟に着いた。そこでガリガリに痩せ細った黒猫が、苦しそうに息をしながら横たわっていた。
何を思ったのか僕は、その黒猫の頭を撫でて抱き抱え膝に乗せた。黒猫は穏やかな表情で僕を見る。
ーーうぬが触れた事で痛みが無くなったのだよ
そう、声が頭に響く。
「病気を治してやる事は出来ないのか?」
ーーそれは出来ないよ。私らに出来るのは破壊だけだからね
「…………そうか。ごめんな、お前を救ってやる事が僕には出来ないんだ。お前はどうしたい?このまま穏やかに死にたいか?」
黒猫は鳴いて応える。
歩く音だけが森の中にやけに響く。
【いんや、ただの猫だよ。病気で捨てられたただの猫だ】
病気で……つまり、人間の勝手で捨てられたって事か。
…………昔、ずぶ濡れで死にそうになってた子猫を助けようとして、結局あいつらに殺された事あったな。嫌な事思い出した。
あの時僕が拾ったりしなければ、楽に死ねたかも知れないのに。殺される事なんてなかったのに。
【どうした?顔色悪いぞ】
「いや、なんでもない。ちょっと疲れただけだ」
【そうか。悪いな】
「………………なぁ、病気で捨てられたって、病気をするまでは可愛がられてたのか?」
僕がそんな質問をするのが意外だったのか、鴉は目を丸くする。
【ああ、そうだよ。病気をするまでは可愛がられて幸せだったんだよ。けどな、病気が分かった途端に、別の子猫を買ってそいつをゴミみたいに捨てやがったんだ。あいつの飼い主は家族じゃなくて、結局思い通りになる人形が欲しいだけだったんだよ】
「なんでお前はその猫の事に詳しいんだ?」
【……ずっと見てたからな。生まれたてで捨てられて、オレが半年間面倒見てやったんだ。やっと家族が出来て幸せに暮らせてると思ってたのに、最後の最後でこれかよ。オレはあんな風に捨てられる為に、あいつを見守ってきた訳じゃない】
淡々と、でも激しく燃える怒りと憎しみの込められた声が、酷く哀しく聴こえる。思い通りにならない人形はいらない……か。まるで僕と同じようなものだな。
♢♢♢♢♢♢
やがて、小さな洞窟に着いた。そこでガリガリに痩せ細った黒猫が、苦しそうに息をしながら横たわっていた。
何を思ったのか僕は、その黒猫の頭を撫でて抱き抱え膝に乗せた。黒猫は穏やかな表情で僕を見る。
ーーうぬが触れた事で痛みが無くなったのだよ
そう、声が頭に響く。
「病気を治してやる事は出来ないのか?」
ーーそれは出来ないよ。私らに出来るのは破壊だけだからね
「…………そうか。ごめんな、お前を救ってやる事が僕には出来ないんだ。お前はどうしたい?このまま穏やかに死にたいか?」
黒猫は鳴いて応える。
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