純愛Lovers

らいねこ

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プロローグ

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ピンクの淡い色の桜が満開になろうとしている季節。


雨宮 咲(あまみや さき)は幼馴染みと共に、高校へと入学する当日の日。


桜並木を歩いて進むと、大きな建物が見える。


全体の土地面積がどのぐらいあるのかは、建物が多すぎるし広すぎてわからない。


全寮制高校なので見渡しても端が見えない程の大きさで、その圧迫感に潰されそうになりながらも、ここで3年間を過ごすのだと改めて気を引き締める。


「天ちゃん…」


横に並ぶ幼馴染みを呼ぶ。


“天ちゃん”と呼ばれた少年は自分よりも少し背の高い眼鏡をかけた高城 天(たかぎ てん)で、家も近所で家族ぐるみの長い付き合いだ。



自分は人よりも言葉で伝えるのが苦手だけど、天はそんな自分を可愛がってくれていた。


また、色々な体術を段で持っていたりと見た目とは程遠い特技だが、そのお陰で守ってくれたりしてくれる、とても心強い味方だ。


そういう自分は…男なのに、かわいらしく、華奢で頼りない容姿なので、何回も誘拐されたりしていて、その度に天に助けられていた。


そんな自分の声に不安の色が出たのか、天は安心させるように返事をした。


「咲、大丈夫だよ」


その言葉に安堵のため息をついた。



そして…


「うん、行こう」


こうして、全てが始まる学校の校門に足を進めた…。




この男子校は有名な進学校で、将来的に有名大学の推薦枠が多い事で知られている。
 

もちろん誰でも入学し、入れる訳ではなく推薦枠に入るのは容易な事ではない。


文系、理系、スポーツでの推薦があり、定員数も決まっている。


咲は文系で、天はスポーツで推薦を勝ち取った。


中学校での惜しみない努力のお陰で入れたが、ここからがもっと努力をしなければならない。


半年毎に成績が落ちた者、精進しない者、問題を起こした者など、いくつかの条件に入ってしまうなど、ふるいにかけられ人数を減らしていくという徹底ぶりで、この高校のレベルを成り立たせている。


そんな高校だが、生徒のやる気を出させるために娯楽と言ってもいい  “姫”  制度があった。


全生徒の中から1人、(例外もあるらしい)姫と呼ばれる生徒を、現生徒会長が推薦する。


姫は生徒会長付きになり、生徒会長が卒業すると共に一緒に卒業する。


この学校生活全てを生徒会長1人に捧げるので、姫になると相応の優遇が受けられる。


その他に、全校生徒の恋愛は許可されているが、適切な交際を心掛けましょう程度なので、どうなるかは学生に任せてるらしい。


あまりにも目に余る事があれば退学も検討との事。






生徒会長と姫が恋におちるなんて、どこかの恋愛ストーリーにありがちで。


入学式に自分がそんなストーリーの主人公になるとは思っても見なかった…。

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