純愛Lovers

らいねこ

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3日目

3日目 8

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寮の部屋の前に着いた。


(…もっと、触っていたい)


そう思ってしまうぐらい、愁が好きだ。


自分の中でどんどんと、愁に対する想いが膨らんでしまう。


愁と一緒に、色々な物を見てみたい。


見せてあげたい。


そう思っていると、愁の手が離れた。


(あっ…)


愁と手を繋いでいるのが当たり前ではないのに、寂しく感じてしまった。


(天ちゃんと繋いでいて離れても、寂しいと感じることなんて無いのにな…)


咲は離された手を見つめる。


そんな咲の気持ちがわからない愁は、咲と向き合って言った。


「咲、本当にありがとう。皆が普段見れている風景を一生分、見た気がするよ」


(…まだ、見せてあげられるのに!)


口を開こうとしたら、天が走って来た。


「咲!遅かったな」


天は、咲と愁の間に入る。


そして、愁に向かって言った。


「…生徒会長、変な事に咲を巻き込まないでください。食堂に行くので、これで失礼します」


天は早口に愁に言うと、咲の手を引っ張って食堂へと向かう。


「天ちゃん!」


咲は天に声をかけるが、返事を返してもらえなかった。


(あ…)


振り返ると、愁は申し訳がなさそうに見ていた。


(違う!そんな顔をして欲しいわけじゃないっ)


愁には、笑ってて欲しい。


しかしそれを、どう言っていいのか解らず、そして悩んでいる時間もなく、どうにか声を出した。


「愁先輩!!明日、生徒会室に行きますから…」


それだけ言い、 咲は天に引っ張られながら食堂に連れて行かれたのだった。




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