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春樹は変態になったってしまった (完)
春樹は変態になってしまった
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男子が、女子トイレに入っていく。
その異様な光景を見て、唖然としていた。
その男子は、扉が閉まる時、後ろを振り向いた。
軽く見えた、その男子の横顔。それは、私の彼氏だった。
「え」
無意識に、口から言葉にもならないような音が溢れた。
心臓が口から飛び出るくらい驚き、思わず二度見した。その時にはもう、彼はトイレに入っていた。
扉の閉まる音が、やけに鮮明に聞こえる。周りはガヤガヤとしていて絶対に聞こえるはずがないのに。
開いた口が塞がらない。
そこでやっと追いついた心が、不安と怒りを運んできた。
(あいつまじで何やってんの?トイレに堂々と入っていくとか正気じゃないでしょ!まじで、意味分からない。てか、なんで堂々と入ってんの?何しに入ったの?まさかやってんの?浮気?)
頭の中が、まるで息を吹き返したかのように、いろんな疑問で埋め尽くされていく。
「翼、今日遊び行かない?」
彼の脳天気な声がトイレから聞こえる。
沸々と怒りが込み上げてくる。
「「「ギャーーーー」」」
彼の声をかき消すように、叫び声が聞こえる。
女子の甲高い声で、地面を震わすほど大きな音がでた。
本当に恐怖を感じると、可愛さというものは消し飛ぶのだと感じた。
何事だ、と周りがさらにざわざわしだす。
ドン
鈍い音が響き渡る。
それと同時に、彼はトイレから飛んできた。
顔は向こうを向いていて、見えなかった。
ドスン
壁に激突してまた鈍い音がなる。今まで感じていた怒りがどこかに飛んでいき、彼を心配する。彼は、怪我をしていないだろうか。
「トイレに入ってくんなよー」
トイレから、ひょいっと顔を出した翼が、軽くからかうように言う。
けれど彼は返事をしない。本当に大丈夫なのだろうか、という不安が膨れ上がっていく。『死』という言葉が、頭をよぎる。不安が体を支配して動けない。そんな状況は、時間の経過とともに軽くなっていく。
体が動くようになり、彼のもとへ行くと、とても満足そうな笑顔の彼がいた。いい夢でも見ているのだろうか。こんな時なのに呑気なやつだ。
彼を心配していた感情は、段々と、こんなやつの彼女で大丈夫なのか、と自分を心配するものへと変わっていく。かわりに彼への怒りが込み上げてくる。
複雑な感情と、止まることなくあふれる答えの得られない疑問。完全に、脳の処理が追いつかなくなり、クラっと立ち眩んだ。最後に見えたのは、廊下の年季の入った天井。強い衝撃とともに、私は意識を手放した。
目を開けると、綺麗な天井が見える。見覚えのない天井、寝ているベットはあまり寝やすいものではない。ここがどこだか気になって体を起こす。すると、そこには見覚えのある先生がいた。彼女は、井上真希先生。去年この学校に赴任してきたばかりの先生だ。
彼女を見てやっと、ここが保健室だと気づいた。先生は私を見ると、少し笑いながら声をかけてきた。
「あら、起きたのね。おはよう、富田さん」
「おはようございます?」
彼女の奥の窓から見える景色は、真っ暗だったので、もう「こんばんは」の時間じゃないかと、不思議に思いながら挨拶を返す。
「まあ、間が悪いわね。ついさっき、あなたを運んできた春樹くんが帰っちゃったわよ。次に会ったときに、ちゃんとお礼するのよ」
「あっ、はい。わかりました」
倒れた私を運んでくれた、彼の優しさを感じて、心が熱くなる一方、倒れたのは、彼のせいだという怒りが込み上げ、メラメラと闘志を燃やしている。
その間に、先生は、せっせと私の荷物をと私の前に運んでくる。
先生は、私の顔を見て、ウンウンとうなずき、また声をかけてきた。
「最近来てなかったから、調子がいいのかと思ってたのに、急に倒れるなんて、びっくりしちゃったわ」
「心配かけてすみません。ちょっとハプニングがあって、気が動転しちゃって...」
私は実は、保健室の常連なのだ。ベットで寝なきゃいけないほどの体調不良にはなったことがないが、身体が弱いのでちょくちょく保健室に来ている。だから、先生とは顔見知りなのだ。
「その様子なら、もう大丈夫そうね。一応、親に連絡して迎えに来てもらう?」
「いえ、結構です。あまり親に心配かけたくないので」
普段から、私の身体が弱いせいで親に迷惑をかけているので、もう心配させたくない。
「そう。じゃあ、日も落ちたことだし、気をつけて早く帰りなさい」
そう言って、荷物を渡してきた。
バックを手に取り、保健室から出る。
「失礼しました。さようなら」
先生に挨拶をして、帰ろうとしたら、また先生が話しかけてきた。
「お大事にね。そうそう、あなたを連れてきた彼、顔に怪我をしていたのよね。引っかき傷のような怪我が。治療をしようとしても、断られたし、なんだったのかしらね。さようなら」
そう言い残して、先生は保健室に戻って行った。
あんなに派手に飛んでいたのに、身体に怪我がないということに驚く。
トイレの中で、何があったのだろうと、疑問に思いながら帰路についた。
その異様な光景を見て、唖然としていた。
その男子は、扉が閉まる時、後ろを振り向いた。
軽く見えた、その男子の横顔。それは、私の彼氏だった。
「え」
無意識に、口から言葉にもならないような音が溢れた。
心臓が口から飛び出るくらい驚き、思わず二度見した。その時にはもう、彼はトイレに入っていた。
扉の閉まる音が、やけに鮮明に聞こえる。周りはガヤガヤとしていて絶対に聞こえるはずがないのに。
開いた口が塞がらない。
そこでやっと追いついた心が、不安と怒りを運んできた。
(あいつまじで何やってんの?トイレに堂々と入っていくとか正気じゃないでしょ!まじで、意味分からない。てか、なんで堂々と入ってんの?何しに入ったの?まさかやってんの?浮気?)
頭の中が、まるで息を吹き返したかのように、いろんな疑問で埋め尽くされていく。
「翼、今日遊び行かない?」
彼の脳天気な声がトイレから聞こえる。
沸々と怒りが込み上げてくる。
「「「ギャーーーー」」」
彼の声をかき消すように、叫び声が聞こえる。
女子の甲高い声で、地面を震わすほど大きな音がでた。
本当に恐怖を感じると、可愛さというものは消し飛ぶのだと感じた。
何事だ、と周りがさらにざわざわしだす。
ドン
鈍い音が響き渡る。
それと同時に、彼はトイレから飛んできた。
顔は向こうを向いていて、見えなかった。
ドスン
壁に激突してまた鈍い音がなる。今まで感じていた怒りがどこかに飛んでいき、彼を心配する。彼は、怪我をしていないだろうか。
「トイレに入ってくんなよー」
トイレから、ひょいっと顔を出した翼が、軽くからかうように言う。
けれど彼は返事をしない。本当に大丈夫なのだろうか、という不安が膨れ上がっていく。『死』という言葉が、頭をよぎる。不安が体を支配して動けない。そんな状況は、時間の経過とともに軽くなっていく。
体が動くようになり、彼のもとへ行くと、とても満足そうな笑顔の彼がいた。いい夢でも見ているのだろうか。こんな時なのに呑気なやつだ。
彼を心配していた感情は、段々と、こんなやつの彼女で大丈夫なのか、と自分を心配するものへと変わっていく。かわりに彼への怒りが込み上げてくる。
複雑な感情と、止まることなくあふれる答えの得られない疑問。完全に、脳の処理が追いつかなくなり、クラっと立ち眩んだ。最後に見えたのは、廊下の年季の入った天井。強い衝撃とともに、私は意識を手放した。
目を開けると、綺麗な天井が見える。見覚えのない天井、寝ているベットはあまり寝やすいものではない。ここがどこだか気になって体を起こす。すると、そこには見覚えのある先生がいた。彼女は、井上真希先生。去年この学校に赴任してきたばかりの先生だ。
彼女を見てやっと、ここが保健室だと気づいた。先生は私を見ると、少し笑いながら声をかけてきた。
「あら、起きたのね。おはよう、富田さん」
「おはようございます?」
彼女の奥の窓から見える景色は、真っ暗だったので、もう「こんばんは」の時間じゃないかと、不思議に思いながら挨拶を返す。
「まあ、間が悪いわね。ついさっき、あなたを運んできた春樹くんが帰っちゃったわよ。次に会ったときに、ちゃんとお礼するのよ」
「あっ、はい。わかりました」
倒れた私を運んでくれた、彼の優しさを感じて、心が熱くなる一方、倒れたのは、彼のせいだという怒りが込み上げ、メラメラと闘志を燃やしている。
その間に、先生は、せっせと私の荷物をと私の前に運んでくる。
先生は、私の顔を見て、ウンウンとうなずき、また声をかけてきた。
「最近来てなかったから、調子がいいのかと思ってたのに、急に倒れるなんて、びっくりしちゃったわ」
「心配かけてすみません。ちょっとハプニングがあって、気が動転しちゃって...」
私は実は、保健室の常連なのだ。ベットで寝なきゃいけないほどの体調不良にはなったことがないが、身体が弱いのでちょくちょく保健室に来ている。だから、先生とは顔見知りなのだ。
「その様子なら、もう大丈夫そうね。一応、親に連絡して迎えに来てもらう?」
「いえ、結構です。あまり親に心配かけたくないので」
普段から、私の身体が弱いせいで親に迷惑をかけているので、もう心配させたくない。
「そう。じゃあ、日も落ちたことだし、気をつけて早く帰りなさい」
そう言って、荷物を渡してきた。
バックを手に取り、保健室から出る。
「失礼しました。さようなら」
先生に挨拶をして、帰ろうとしたら、また先生が話しかけてきた。
「お大事にね。そうそう、あなたを連れてきた彼、顔に怪我をしていたのよね。引っかき傷のような怪我が。治療をしようとしても、断られたし、なんだったのかしらね。さようなら」
そう言い残して、先生は保健室に戻って行った。
あんなに派手に飛んでいたのに、身体に怪我がないということに驚く。
トイレの中で、何があったのだろうと、疑問に思いながら帰路についた。
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