モテ王子の後輩が俺にだけ過保護すぎる件

てぃな

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嫌いな人間

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 人見知りのせいか昔から人に強く当たってしまうのが悩みだった。友達になりたくてもどうしても素っ気ない態度をとってしまう。それでも周りに恵まれたおかげでぼっち生活は免れたが、特別教室の真ん中ではしゃぐ訳でもなかった。そう、春田は所謂2軍男子だった。

「はいしゅーごー」

 肩書きだけの部長が集合の合図をかける。
 こんな春田でも一つだけ好きなものがあった。それがサッカーだ。特別上手いという訳でもなかったが、あのシュートを決めた時の快感が大好きだった。
 
 春田の通う高校のサッカー部は強豪校ではなく、熱心な顧問や部長がいる訳でもない。もちろん部員もだ。まるで春田みたいな中途半端に遊びでサッカーをしている人達の集まりなのだ。
 部長の話によると今日はミーティングはなしでこのまま解散らしい。まあいつもの事なのだが。話が終わると、駄弁りながら部室に向かう者、自主練(というなの暇つぶし)をする者で別れる。
 いつもはこのまま帰る春田だが、今日は姉の彼氏が家に来る事を思い出し、仕方なく残ることにした。

(適当に時間つぶそ。)

 時計に目をやるとまだ17時。姉の彼氏が19時頃に来ると言っていたから、鉢合わせないためには最終下校時刻まで残る必要がありそうだ。
 とりあえず必要なものを用意しようと倉庫へ向かう。

(相変わらず埃っぽいな...)

 目の前に舞う埃を手で払いながら目的の物を見つけ、一刻も早く出ようと小走りで出口へ向かう。しかし、それがこの後最悪の事態を招くのだ。

「あぶねっ、」

 足元をよく見ておらず出口付近の棚に足を引っ掛け躓いてしまった。幸いド派手にすっ転ぶことは免れたが、


___ガタガタッ


_______バサッ


「っ、!?」

 揺れた棚から何かが落下し、運悪く春田に直撃してしまった。その弾みで尻もちを着く。何が起きたか分からず立ち上がろうとするが、どうしたわけか体が思うように動かない。
 それもそのはず、棚から落ちてきたのはテニス用のネット。それが春田の体全体に覆い被さってきたのだ。よく見るとネットのあちこちが破れており、どうやらもう使われていない古いもののようだ。どうしてすぐ捨てないのか。

 自力で脱出を試みるも体力が奪われるだけだった。

(......もしかしてこのまま朝まで...)

 この最悪な状況に絶望しかけていたその時、


「......大丈夫ですか?」

 偶然にも誰かが倉庫に来たみたいだ。嬉しくなり顔を上げると、そこには春田が最も嫌いな人間____黒沢が立っていた。一人ネットの中に捕らわれる春田を奇異の目で見つめる黒沢。

「別に平気。」

 すぐに助けを求めればいいものを、プライドが許さないのかよく分からない強がりをみせる春田。

「.....あー、上から落ちてきちゃったんですかね....」

 黒沢から目線を外し、ただひたすら一点を見つめる春田に、苦笑いしながら絡まったネットをどうにか外そうとする黒沢。
 元から無愛想な春田だったが、この男に対しては一層それが強まってしまっていた。それには訳があった。



 黒沢は同じサッカー部の後輩である。入学した時から学校中で芸能人級のイケメンが入ってきたと話題になっていた。実は俳優だとか、某大手アイドル事務所所属だとかそんな噂がたつ程だ。
 そしてその男はサッカー部へ入部。それからは放課後の部活を見に全学年の女子がこぞってグラウンドを囲んだ。大した練習もしていないのによく飽きずに見てられるものだ。毎日あまりにも多くの生徒が黒沢の元へ押し寄せるので、顧問から「放課後のグラウンドを囲む行為は禁止」との命令が出たらしい。

 黒沢は誰にでも優しく、中身までイケメンだった。男女分け隔てなく接し、瞬く間に学校の王子的存在になった。

 そのため、女子にチヤホヤされる黒沢に対して他の部員が嫉妬したり妬んだりする事もなく、その明るく接しやすい性格に誰もが虜になった。

____春田以外は、だが。



 春田は昔から人を信用するのが苦手だった。特に何か人間関係で問題があった訳ではなく、ただ、なんとなく生きていくうちに人間の黒っぽい感情に敏感になってしまっただけなのだが。人見知りなのもこの性格のせいなのかもしれない。

"人には必ず裏がある"

 これが春田の脳内に深く植え付けられていた。だから、"純白"という言葉がぴったりなこの男が嫌いなのだ。裏の顔を隠して笑顔を振りまき皆を騙して。きっと心の中では馬鹿にして笑っているに違いない。

「結構複雑に絡まっちゃってますね。」

 こうして今も地道にネットを解いてくれる黒沢。こういう優しいところが女子にモテるのだろう。.....うん、やっぱり気に食わない。

「....いいって、自分でなんとかするし。」

「ふふ、何言ってるんですか。1人じゃ絶対無理ですよこれ。俺がどうにかするので、春田さんはじっとしててください。」

 ふんわり微笑む黒沢に一瞬目がくらむ。

(くっ、.......いくら顔がイケメンだからって騙されるものか...)

 

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