「情けの種をまく少年」

髙田佳子

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情けの種

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ひとりの少年が、道を歩いていました。
その少年は、昔から何でも自分でやりたがる性格で、他人を助けたことはありませんでした。
なので、周囲からは冷たい人間と思われていました。

ある日、少年が山道を歩いていたところ、道端に倒れた老人を発見しました。
老人は足をケガしており、歩くことができませんでした。
少年は、見過ごそうとしましたが、何となく老人を放っておけず、助けてあげることにしました。

老人を助けて山を下りていくうちに、少年は老人が近くの村の長老であることを知りました。
そして、老人がさまざまな人々から感謝されていることを知りました。
また、老人が優しさと思いやりで人々を助けるために広く活動し、多くの人から慕われていることも知りました。

そこで、少年は老人に、自分自身も人の為になれる人間に変わりたいと話しました。
老人は、少年の手を取ると、自分が収穫した不思議な形の豆の種を与えてくれました。
「これは情けの種だ。君が人々の為に行動することで、この種は育つんだ」と言いました。

少年は不思議な形の豆の種を持ち帰り、不思議な形の種を撒きました。

種を蒔いたので、人の為になる事を探して、少年は人々の為に行動し始めました。

空腹で動けない人には、自分のご飯を分け与えました。
冬の寒い日には、温かいスープと暖かな服を配りました。
夏の暑い日は町中の道に打ち水をして涼しい風を届けました。
風邪をひいているおばあさんがいればお見舞いに行き、泣いている子供を見つければ優しく話しかけました。

彼は自分自身が変わりたいという強い思いを胸に秘めて、周囲の人々を助け、来る日も来る日も人助けを頑張りました。

そんなある日、不思議な形の種が不思議な形の花を咲かせました。
少年は自分に起きた変化が「情けの種」をまいたことによるものだったことを知りました。

少年は不思議な形の「情けの種」を街の人にも分けてあげました。

すると、街中の人達が「情けの種」を育て始めました。

今は、街中が優しさと思いやりで溢れ、街中のそこここに不思議な形の花が咲いています。
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