Night Sky

九十九光

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拉麺が美味いことだけはー5

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「呼吸器科の医者に診てもらうんだな。ただし、刑務所病院のな」

 沙漠が顔を上げて仁の顔を見つめる。そこで彼は思い出した。目の前の男が、日本に5人しかいない最強クラスの国家戦力、特級兵士の一人、灰色仁であることに。

《灰色仁 ユニゾン名:ハイパーリアリティショウ……自らの体を有毒性の灰にできる。》



「てな感じで、車は壊れるわ警察の取り調べは受けるわで遅れたわけ」

 寮に戻った小麦と仁が一同に説明する。店の開店9時半に間に合うように外出し、帰ってきたのは午後3時だった。

「ならば今日のラーメンパーティーとやらは中止か? 今から麺や具材の仕込みをするのは間に合わんだろう」

 普段通り他のメンバーとは少し離れた位置にいる文活が確認する。

 しかし小麦の意思は固かった。

「いややるよ! 遊大君を除いた全員でかかれば夕飯の時間には間に合う!」

「待てデブ! なんでてめえが勝手に進めた話に俺らまで付き合うんだ! 言い出しっぺのてめえだけでやれ!」

「いいじゃねえか、颯天~。女子の頼みを断ってたらモテねえぞ?」

 キレ気味の颯天を太陽がなだめる。他のメンバーも、呆れ気味ながらも小麦に付き合う気でいる。

「僕も手伝いますよ。一人だけ何もしないなんて悪いですよ」

「お前はいいだろ。祝われる立場なんだからな」

 立ち上がって手を挙げる遊大を大樹が止める。その後の小麦の、「見学はご自由に~」の言葉で、14人全員がキッチンに入ることになった。

 料理長の小麦は麺の仕込みを担当する。小麦粉は彼女のユニゾンで無限に出せるため、麺の材料に関しては事欠かない。無限替え玉ができるとウキウキする小麦の後ろで、「こってりした豚骨ラーメンで無限替え玉……。考えただけで胃もたれする……」と、人陰は暗い表情をしていた。

 嫌々仕事をする颯天は、作り置きしてある豚骨スープの暖め直しと灰汁取りを延々と続けていた。常に苛立った表情をしており、「もっとスマイルスマイル~」と後ろから太陽に煽られた際には、「黙ってろ、エロガッパ!」と返していた。
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