Night Sky

九十九光

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私がいなきゃダメだからー3

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「し、しかし、私にそんな大役ができるとは」

「できるって。これは支部長の判断なんだから」

 謙遜する糸美に花子が声をかける。

「君のリーダーとしての素質は教官みんなが知ってる。だから今回の判断になったんだよ。君のとっさの冷静さと判断力は人々の精神的主柱になれる。何事も経験だよ」

 それと同時に一通のメールがパソコンに届いた。

「今、教官代理としてのやることリストをメールで送った。その他分からないことが適宜あれば、その都度教官棟に連絡を入れるように。じゃあおやすみ」

 こうして通話は一方的に切られた。



「というわけで、今日からしばらくの間、私八脚糸美がこの第一部隊の教官代理を勤めさせていただきます」

 迷彩に着替えて第4武道場に集合した第一部隊の面々を前にして、糸美はホイッスル片手に改めて宣言した。

 しぶしぶ承諾した糸美だったが、彼女はやると決めたら徹底して役に徹するタイプ。誰もそれを止められなかった。

「じゃあまずは本訓練前の準備運動から。ホイッスルに合わせて腕立て伏せしましょう」

 その言葉に小麦が嫌そうな顔をする。中等部以降の訓練で行う腕立て伏せは片手で行うもの。それを左右の手で合わせて60回行うことになっている。それがキツいから嫌がっているのだ。

「秋晴さん、まだ片手腕立て慣れてないんですね」

「ラーメンばっか食って筋肉つけねえからだ」

 上からの情けで両手を地面につける遊大に、颯天が小麦をバカにするように言う。

「あ、夜空君も今日から他の皆さんと同じメニューをこなしてもらいますよ。上からのお達しです」

 糸美のその言葉に、遊大は思わず「え?」と漏らした。

 ここでの腕立て、腹筋、背筋は、全員がホイッスルの合図に合わせて行うことになっている。当然、慣れていない遊大と小麦は、腕立てを1回行うだけで一苦労。「てめえら俺らに合わせろや! てめえらが腕立てしねえとこっちも硬直状態なんだよ!」と、颯天が罵詈雑言をぶつける。

「落ち着いてくださいよ、実砂さん。筋力は人それぞれなんですから」

 そう言いながら糸美は遊大の横につき、彼の腕や肩に触れながら、アドバイスをする。
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