Night Sky

九十九光

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昔の自分が見たら褒めてくれるかなー2

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「ここまで聞いても武術を覚えたいって言うなら、書庫のそういう系の本を読んだほうがいいよ」

 花子は最後にお情けのアドバイスをして、その日の訓練に入った。



 その日の昼休み。遊大は書庫に来ていた。覚えないよりましという結論に至り、武術の本を読んでみることにしたのだ。

 受付前のパソコンで検索し、柔術や空手の本がどこにあるかを検索する。さすがは軍人を育てる施設。該当する本は数十冊もあった。

 遊大は検索した本がある地下1階の一スペースに向かう。だが実際にそこにある似たり寄ったりに見える本の数々を目にすると、どの本を取ればいいか分からなくなってしまった。

「いたいた。何してるの、遊大君」

 そこに後ろから声をかけてくれた人がいた。風雅だった。

「回天さんこそ、昼休みは1時間半しかないのに……」

「だから心配して探したんだよ。食堂に向かわずこんなところで何してるの?」

 風雅にそう尋ねられ、遊大は事情を説明した。

「こんなこと言われても困りますよね。回天さんは、はじめから攻撃的なユニゾンに生まれたんですから」

 遊大が最後にそう付け加える時には、風雅は考え込むような顔をしていた。そして小声で、「この子も僕と同じ悩みを……」と呟いた。

「……。回天さん?」

 遊大が心配そうに声をかけると、風雅はこう提案した。

「今晩、ちょっと君を見てあげるよ。どうかな?」

 遊大はまだよくその意味を理解できなかったが、一応了承した。

 そして時間はその日の夜。遊大と風雅は寮から少し離れた林にやって来た。

「見てくれるって言ってましたけど、具体的に何を……」

 遊大が恐る恐る風雅に尋ねる。風雅は「遊大君は、僕が攻撃的なユニゾンだって言ってたよね」と聞き返す。遊大がそれを肯定すると、風雅はこう答えた。

「僕も昔、今の君と同じ悩みを持っていた」

 風雅のその言葉に、遊大は衝撃を受けた。空港でのテロリスト制圧に大いに役立っていた風雅が、攻撃力のなさを悩みにしていた。もはやそれが不思議でならなかった。
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