Night Sky

遠い夏の思い出ー10

「た、助かりました、遠夏さ」

　太陽は遊大を無視してピンク髪の人物に襲いかかる。

「ああやっておびき寄せたのか！　路地裏に人が倒れてるって言って現役兵士をおびき寄せて殺したのか！」

「殺した？　ああ、こないだやった兵士のことね。死んじゃったんだ～」

　太陽は怒りに身を任せて槍を振り回す。しかしここは狭い路地裏。槍の穂先はビルの壁にぶつかり、爆破を起こして彼の体勢を崩す。

「バカじゃん！　こんな狭い場所でそんな長い武器が使えるわけないでしょ！」

　ピンク髪の人物はナイフで太陽の右手を斬りつけ、彼の手から槍を放し、太陽を仰向けに押し倒す。

「遠夏さん！」

「動くな、夜空遊大！」

　ピンク髪の人物は太陽の脇腹にナイフを突き立て、遊大を脅す。

「……。せめてお前の所属と目的を教えろ」

　遊大は恐る恐る相手に話しかける。

「僕はユニゾン革命隊の戦士。シャルル総督にロイドの素体となる人間を捧げ、あのお方のお役に立つのが目的さ」

　ピンク髪の人物は淡々と遊大の質問に答えた。

「それが兄貴を殺した理由か……！」

　押さえつけられている太陽が、泣きながら語り出す。

「お前の言う通り、俺はバカだよ……。兵士を目指すって言ったら両親に、お前みたいなバカになれるわけがないって言われたくらいにはバカだよ……。でも兄貴は違ったんだ……。誰かの役に立ちたいって思いを持てる奴がバカなわけがないって言ってくれたんだ……。お前らみたいな何考えてんのか分かんねえテロリスト集団に殺されていい人じゃなかったんだ！」

　その言葉を聞いて、遊大は何も言えず、ピンク髪の人物は吹き出した。

「何言うかと思えば、結局はよくある仇討ち物語かよー！　ダッセー！　仕事に私情持ち込むなよー！」

　ピンク髪の人物は顔を太陽の右目に近づけ、こう呟いた。

「お前みたいな奴が他人の足を引っ張るんだ」

　そして次の瞬間、太陽の目からこぼれていた涙を舐め取り、彼を解放した。

「立て」

　ピンク髪の人物は太陽に命令する。すると彼の体は、その意思と関係なく立ち上がった。