Night Sky

九十九光

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裸踊りで大笑いー11

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「教えて! 私ガス吸ってから何してた!?」

「え……!」

「どうか教えてください! 映像にでも撮られてたら大変ですし!」

「いや……!」

「俺もいいかな……。やっぱり気になる……」

「あ、西後さんはいつも通りでした」

「なんでこの陰キャだけ答えるんだ! 俺にも教えろ!」

「いや……! 実砂さんはマジで聞かないほうが……!」

「お前が答えないなら光に聞く! アイツ今どこだ!」

「お、お風呂入ってます……!」

 一同から質問攻めに遭う遊大。必死な形相をしている彼彼女らに、正直なことを答える勇気は遊大にはなかった。むしろそれが優しさだと理解していた。

「あ、あーあ! 僕も汗かいちゃったなー! お風呂入ってこよー!」

 風呂場に向かってダッシュする遊大。後方から「貴様ぁぁぁぁぁ! 逃げるなぁぁぁぁぁ! 責任から逃げるなぁぁぁぁぁ!」と声がする。遊大はその声を無視して脱衣場に入った。

「風呂から出たら必ず吐かせてやる。このまま一生過ごすなんてできねえ」

「落ち着け、実砂。言わないこともまた優しさだ」

 荒れる颯天を大樹がたしなめる。

 そして重要なことに真っ先に気づいたのは、糸美だった。

「……。夜空君、お風呂行くって言いましたよね」

「言った。てか入った」

「照州さんもお風呂でしたよね」

「……。あ」

 末恐ろしい人たちだ。やっぱりあのくらいの年になると色々気にすることがあるのだろうか。

 性教育もろくに受けずに中等部に来た遊大には、その程度しか考えが及ばなかった。

 そして着ているものをすべて脱いで、「照州さん、入りますよー」と言いながら風呂場へのドアを明ける遊大。

 ちなみにこの直前まで、遊大は光は男だと思っていた。

 光はちょうどドアのほうを向いてシャワーを浴びていた。その胸は本当にわずかだが膨らんでおり、胴回りもわずかだがくびれていた。臀部は丸みを帯びており、そして股間には、遊大にあるものがなかった。

「……! え!? 照州さんって、女」

「てめえ何入ってきてんだ、ぶっ殺すぞコラァ!」

「あ゛あ゛ー! ごめんなさいごめんなさいごめんなさーい!」

「やっぱり、光ちゃんが女だって気づいてなかったんだ」

「無理もねえ。あんなつるぺたで、体見られんのが嫌だって理由で着替えは毎回トイレで済ませたり一人で風呂入ったり、挙げ句一人称俺だぜ? 言われなきゃ気づかねえよ」

 その日、遊大は眠れなかった。別に光に夜通し説教されたからではなかった。
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