Night Sky

九十九光

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ひゅ~どろろ ひゅ~どろろー6

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 2人は十字架に近づき、とりあえずそれを調べようとする。その時だった。

 十字架の周辺で爆発が起き、十字架真下の地面から何かが飛び出してくる。それを後ろから赤い光が派手に照らした。

 何事かと思い思わず伏せる2人。そこに十字架の上に立つ人影が口上を述べた。

「凍りついた世界に新しい風が吹く。時計の針は動き出す。走り出せ! コワードリー・レンジャー・ウロタンダー!」

 青いマントに赤いヒーロースーツを身にまとった人物が名乗ると、彼の背後で再び爆発が起きる。だがその声は糸美と小麦には充分聞き覚えがあった。

「あなた、第二部隊の藤木勇者(フジキ ユウシャ)さんですよね」

「違う! 私はコワードリー・レンジャー・ウロタンダーだ! それ以上でもそれ以下でもない!」

《藤木勇者 ユニゾン名:コワードリー・レンジャー・ウロタンダー……赤い戦隊ヒーローのような姿に変身できる。身体能力の向上、謎の爆発など、戦隊ヒーローのお約束は大体できる。マシンや巨大ロボも呼べる。》

 その光景を、林の奥から見ていた第二部隊の心惑優磨(シンワク ユウマ)は、心の中でこう思った。

 スベったー! 藤木の奴パねえレベルでスベったー!

「奥には優磨君がいるよね? さっきの赤い光は優磨君のユニゾンだよね?」

 小麦に指摘されて、優磨はこう思った。

 パねえー! 俺の存在もパねえレベルでバレたー!

《心惑優磨 ユニゾン名:エイリアンエイリアン……両目から赤い光を放つ。広範囲を照らしたり、収束してレーザーにできたりする。》

「君たち! 私の正体を勘繰るより、先程の演出について何か言うべきことがあると思わないかね?」

 勇者が2人に尋ねると、糸美は少し間を置いてから、「この時間に爆発は近所迷惑ですよ」と答えた。

「違う! さっきのは初代仮面ライダーの死神カメレオンの回における、仮面ライダーの登場シーンのオマージュだ! そこに気づけぬとはそれでも日本人か!」

 優磨はこう思った。

 藤木の特撮好きパねえー! 昭和の特撮の話なんて分かる女子いないっしょー!
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