Night Sky

九十九光

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グレーなショウの時間だー5

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「まだ我々の妄言だと思っている人も多いだろう。そこで日中のユニゾン革命隊の協力で撮影した、1か月前の中露半島の映像をお見せしよう」

 画面はドローンで撮影したらしい空中映像に切り替わる。眼下にはかつて町の残骸が転がっており、そこには苔も生えていない。瓦礫の隙間から雑草も生えていない。木の一本も生えていない。

 さらに映像が切り替わり、今度は地を進むラジコンか何かで撮影したらしい映像になった。動物の鳴き声は一切聞こえず、風が吹く音だけしかしなかった。

 今度は水中映像に切り替わる。海なのか湖なのか分からないが、水は非常に透明で、魚の一匹、貝の一つもいなかった。水が透明なのは、プランクトンがいない証拠だった。

 そして最後に、国連衛星で撮影されたらしい衛星映像が流れる。中露半島を映しており、そこは砂の黄土色と瓦礫の灰色で構成されていた。生物が棲めない環境なのは一目瞭然だった。

「まだ証拠ならある」

 落ち着いて椅子に座り直した仁が、一冊のノートを取り出す。クグンハ語で『日記』と書かれたノートだった。

「これは我が家で代々受け継がれてきた、戦時中と空白の10年を生きた、僕の先祖の日記だ。国連はクグンハに関するあらゆる書物を破棄または改竄したらしいが、完全には消せなかった。僕の一族はこれでクグンハ語の読み書きを学び、世界が犯した罪のすべてを知った。自分は哀れな被害者クグンハの一族。そう知ったら日本を、世界をすべて壊し、罪を償わせてやるって思いが強くなった。兵士になったのも、内部から国家転覆を狙ったからだ。そこに舞い込んだのが、ユニゾン革命隊への二重スパイの仕事。調度いい機会だった。同じような理由で世界の罪を知っていたシャルルとはすぐに仲良くなった。井美府太郎を殺し、十二勇士の関東支部侵入の手引きをし、多くの同僚と慕ってくれる訓練生を間接的に殺すことに、一切の抵抗はなかった。……。何せアイツらは死んでも償いきれない罪を背負った悪魔の民族なんだからな!」

 仁が再び立ち上がり、踊るように廻り出す。
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