Night Sky

九十九光

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おっきいね おっきいね 夢 おっきいね おっきいねー4

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 完全に刃でかっ切るとほほ同時に、オジェは消滅した。

「まずは、報告からだな」

 時速80キロで動き続けて疲労困憊の雨は、その場にへたりこんでスマホを取り出した。



 気がつくと光は狭い掃除用具入れに体育座りの姿勢で押し込まれていた。強引に外に出ると、女子トイレの中だった。

「……。みんな善戦してるな」

 光は用具入れから1本デッキブラシを取り出すと、辺りを警戒しながらスマホに文字を打ち込む。

『今五感が戻った。戦闘に復帰する』

 そう打ち込んだ光は、入り口側まで来ていたサロモンの側頭部をブラシで殴りつける。

「ってえな! なんで透明人間が来てるって分かった!」

 頭を押さえて質問するサロモン。それを聞き流しながら、光は殴ったデッキブラシを確認する。

「体表面を透明にするだけじゃなくて、血まで透明なのかよ。流血させれば目印になって戦いやすくなると思ったんだがな」

「……! 答えろよ、てめえ!」

 サロモンは右腕を透明な鋭い刃に変えて光を襲う。光はそれを、まるで見えているかのようにかわし、レーザーを撃つように手を構える。

 サロモンはそれを見て光反射の準備をするが、光が放ったのは攻撃力のない眩しい光。目を押さえるサロモンのシルエットが浮かび上がった。

 光はデッキブラシをサロモンのみぞおちへと打ちつけ、彼をトイレ入り口と通路を仕切る壁へと叩きつける。

「こちとら3年間、自分のユニゾンで透明にした仲間とコミュニケーション取る練習してんだ。五感さえちゃんとしてれば、透明人間への対処法なんざ朝飯前だ」

 そう言って光は自身も透明にして、サロモンの視界から消え去った。

「見ると見せないの使い分けこそ、光のユニゾンの真骨頂。かかってこいよ、フルチン透明人間が」
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