Night Sky

九十九光

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知らない 知らない 僕は 何も知らないー4

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 せめて下に降りて着火できるアイテムを手に入れればまだ分からない。そうすればすべてを巻き込んで大量の石油で焼き払えるのだから。だが下層へ降りる階段の前にはフロリマールが陣取っている。

「おやおや~? ここにも愛を教える必要がある方がいらっしゃるようで~」

 そこに全身を歯車にしてどこからか飛んできたジラールが、王子の背後から合流する。

「……! この」

「待ちな! ソイツに下手に痛みを与えると、それに応じた拘束具がつけられるぜ!」

 王子が強化プラスチックの棒でジラールを殴ろうとした寸前に、フロリマールが種明かしをする。

「ちょっと~。なんで愛を教える前に私のユニゾン教えるんですか~?」

「うるせえ! てめえのユニゾンは初見殺しにもほどがあるんだよ!」

 ケンカを起こす使徒2人。そんなことよりこの2対1という最悪の状況をどうするか、それだけが王子の頭を駆け巡る。

「さあ! 俺と熱い勝負をしようぜ!」

「私が愛を教えて差し上げます~!」

 2人の攻撃が前後同時に王子に襲いかかる。このままリンチに遭うだけか。そう思った次の瞬間。

 ジラールの真後ろから裸足の信也が現れ、素早い挙動でジラールとフロリマールを爪で引っ掻いた。

「王子君! 今のうちに離れて!」

 金属の歯車に引っ掻いたことでさほどのダメージを与えていない信也。なんの拘束もされずに王子とともに2人に向かい合う形を取る。

「おま……! ここ8階建てのビルの屋上だぞ!? 階段使わずどうやってここに来た!?」

「詳しい説明はあとで! それよりもうすぐ30秒経つよ!」

 30秒経過。フロリマールとジラールがようやく本来の動きを取り戻す。

「どいつもこいつも漢と漢の真剣勝負に水差しやがって!」

「いいじゃないですか~。愛を教える対象が自分から集まってくれたんですから~」

 人数差が同じになろうと、まだまだ余裕を見せる使徒2人。その間王子と信也は話し合いをする。

「正直あのパンダ野郎のユニゾン、両方とも俺には捌ききれねえ。任せられるか?」

「構わない。じゃああの歯車男は任せていいよね?」

「責任持つぜ。漢として」

 2人の標的は定まった。
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