Night Sky

九十九光

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街ゆく人 流れる雲 僕のことを嘲笑ってたー3

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「……! 悪あがきをしてゴォホッ!」

 ジラールが突如として咳き込む。やがて立っていられないほどの肺の痛みが遅い、王子に構っていられる状態ではなくなった。

「俺のユニゾンは……、石油やプラスチック、アスベストのような……、人工的な危険物を生み出せるユニゾン……。カーボンナノチューブを作れたのは……、粉末にするとアスベストと同じ危険性があったからだ……。」

 そのネタばらしを聞かされ、まともに反応できないでいるジラール。さすがに一瞬で発癌することはないとはいえ、この状態が長く続くのは危険だった。

「でもって俺は……、作った物質を自在に操れる……。今お前の後ろに何がある……?」

 次の瞬間、ジラールの背後からカーボンナノチューブの樹木が彼めがけて伸びてくる。抵抗する歯車は絞め上げ、破壊していく。さらにジラールの頭も拘束し、同様の方法で潰そうとする。

 ミシミシと音を立てていくジラールの頭。その間、彼の脳裏に知らない記憶がよぎる。

『喜界……。本当にマスクとかなしで学校行くの? そんな顔さらしたらいじめられたりしないか、お母さん心配だわ』

『大丈夫さ、母さん。人間顔より性格さ』

『偉そうにしてんじゃねえよ、ロボ人間のくせに』

『はっきり言ってキモいのよ、アンタの顔』

『顔隠せ、顔』

『絶対に顔を隠すもんか……。いつか俺のことを顔じゃなくて性格で見てくれる人が出てくる……』

『同家、喜界さんですよね? ずっと先輩のことが好きでした』

『……! こんな顔でもいいのかい!? やったー!』

『先輩! 私のお母さんが白血病にかかって……! 保険も入ってなかったせいで治療費が足りないんです! 必ず返しますから1000万貸してくれませんか!?』

『貸したら貸したっきり連絡が途絶えた……。会社にも顔を出さなくなった……。消費者金融に金借りてまで用意したのに……。あの女……! あの女ぁ!』

『それが女性を極端に嫌う理由か。でも悪いのは女性という生き物じゃない。異形ユニゾンの寂しさに漬け込んで詐欺を働く差別を逆手に取った人間さ。そんな奴らをみんなやっつけるのが、僕たちユニゾン革命隊さ。僕の手を取ってほしい。君はこんなところで朽ちていい人間じゃない』
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