Night Sky

壊せ 予定調和の未来をー５

　光が目を開けると、彼女は手術台に仰向けに固定されていた。腹は妊娠でもしたのかと思うほど膨れ上がっており、周りには顔がよく見えない医者らしき人間が２人いた。

「はい、それじゃあ帝王切開始めまーす」

　医者の一人が言う。光が状況の説明を求めるが、医者は言うことを聞かずに彼女の膨れた腹にメスを入れていく。

　瞬間、光に激痛が走った。麻酔すらされていなかったのだ。

「ほらこれ、見えますか？　子宮。この中に赤ちゃんがいるんですよー」

　光の目の前にモニターが伸びてきて、腹を切開して見えた膨れた子宮を彼女に見せる。

「待って！　この先は！　この先だけは！」

「じゃあ今度は子宮を切開しますねー」

　医者は光の話などまるで聞かずに子宮にメスを入れる。さらには激しい激痛に、光は思わず絶叫した。

「あ、赤ちゃん出てきましたー」

　そう言って医者は光に取り出した赤ん坊を見せる。複数の目、腕、脚を持った、いわゆる奇形児だった。

「目を背けないでー。まだまだ出てきますからー」

　次に出てきたのは、バラバラになっている赤ん坊の骨の集まりだった。

「はい、また出てきましたー。千手観音みたいな奇形児ですー」

　医者たちは出てくる子供を逐一光に見せる。彼女は吐き気と激痛と恐怖心でいっぱいだった。

　一方文活は、全裸の状態で養豚場の一角のようなスペースにいた。周囲には自分と同じような状況の人間が複数いる。

　遊大が見せた幻覚か？　ともかく情報を得ないと。

　文活はそう思って自分と同じ豚舎の人間の一人に声をかける。

「あ……。あううあ……」

　その人間はまともにしゃべれなかった。まるで知性を感じられなかった。

「お前らー。出荷の時間だぞー」

　そこに一人の男の声が聞こえてくる。豚舎の通路を通るのは、豚の頭をした明らかに知性のある生命体だった。

「お、おい。出荷っていったい」

「こら、暴れるな。こっち来い」

　豚人間たちは文活を含めた豚舎内の人間を強引に引っ張ってトラックに乗せていく。そして10分ほどぎゅうぎゅう詰めの状態で運転されたところで、トラックの荷台から降ろされる。目の前には一軒の工場があった。