14 / 40
case2 連れ去られた幼馴染
確かに変わった未来。
しおりを挟むパーティーは始まった。
ぞろぞろと集まってくる来賓者達。高価な服装を身に纏い、己の権力を誇示している様にも見える。腕輪や指輪等の絢爛豪華な華奢品は勿論、立ち振る舞いにもどこかしら品位を感じる。
ケージは委縮して後ずさる。
「代行屋は、ちゃんとやってくれたんだよね……」
後は彼頼みだと暴れる心臓を抑え込む。
隣では豪勢な料理の数々に目を輝かせているカナリアの姿があった。昔から食べ物には目が無かったよなと口を綻ばせ、ケージは息をついた。
『夢』から内容は書き換わったのか。
ここから先の未来をケージは知らない。
おお、と一際大きな歓声に包まれる室内。スポットライトの先にいた男は、観衆に手を振ってこたえた。どきり、とケージの心臓が高鳴るのを感じた。
「どうして……奴がここにいるんだ」
計画は失敗したのか?
パーティーが中止にならなかったのもそれが原因なのか!?
動悸が激しく、意識が遠ざかる。
ふらふらとよろめくケージに気が付いたカナリアがそっと背中を支えた。言い争いをしてまだ時間も経っていなかった為、気まずくなって目線を逸らせてしまう。
「大丈夫、ケージ」
「う、うん……なんでもないよ」
言うべきか悩んだ。やはりここから逃げるべきだと。だが、代行屋と交わした約束はもう一度カナリアと面と向かって話し合う事だ。ここで逃げては約束を反故にしてしまう。
「カナリアちゃん、さっきはごめんね」
「どうしたの、いきなり。もういいよ気にしてないから」
「でも、カナリアちゃんの事が心配なのは本当だ。カナリアちゃんが、もし今困っている事があるならボクは助けたい、力になりたい。だから……カナリアちゃんも本当の事を」
「あ、お話が始まるみたいよ」
不思議そうに見つめていたカナリアだったが 話は途中で途切れた。シスア・マイスターは壇上へと上がり、一礼する。表情に陰りは一切ない。本当に代行屋が働きかけていたならば、これほど清々しい表情を浮かべているはずがないとケージは率直に思った。
『今回は、パーティーに参加していただき誠に感謝する。先の決闘は本当に見事であった。特に、強者と名高い我が息子にあれ程見事に勝利したケージの剣技。惚れ惚れしたぞ』
「あ……りがとうございます」
一瞬言葉が出なかった。お礼の返事が出たのは、ほんの偶然で、激昂に身を任せて襲い掛かる可能性だってあった。出来なかったのは、単に呆気に取られていたのと、人を暗殺しようという陰湿な部分がまるで見えてこなかったからだ。
嘘偽りのない賛辞に、来賓者は応えた。温かな拍手に包まれて、ケージは呆然とする。見れば、決闘相手だったオルゴも惜しみなく拍手を送っていた。
「何が……起きてるんだろ」
「ケージが凄かったってことでしょ。格好良かったよ」
僅かに頬を赤らめながら、カナリアが耳元で囁いた。
魅惑的な声色に身体が震えあがる。全身が燃え上がる様に熱くなり、今までの考え事が一気に抜け落ちる感覚に襲われた。
「では、乾杯といきましょうか。隠れし最強の冒険者ケージが名を馳せた最初の記念日、今後更なる活躍を期待して、乾杯!」
「「「「「かんぱ~い」」」」」
「乾杯……」
まるで何が起きているのか分からず、チンとグラスを交わす。小気味いい音と共に、カナリアはぐいっとジュースを飲み込んだ。その瞬間、ようやく毒の事を思い出す。毒殺を警戒するならまず一番警戒すべきはグラスや取り皿、それを躊躇なく一気に口に付けてしまった。
「カナリアちゃんっ!」
ダメだ、本当に死んでしまう。
サッと全身を撫でる様な寒気。
「ぐ……ごほ、ごほっ」
カナリアが胸を押さえて呻いた。
やはり、毒がグラスに塗り込んでいたのか。或いは、飲み物に何か混入していたのか。取り返しのつかない事になったと、目を瞑って耳を塞ぎこんだ。
もう、未来は……変えられない。
「あははっ、ごめんごめん。いきなりケージが叫ぶものだからむせちゃったよ。それで、ケージ……さっき何かを言いかけてたけど、何か用だったの?」
「あ、あれ……生きてる。カナリアちゃんが生きてる!」
涙がじわりと溢れてくる。この一週間抱えていた様々な悩みやストレスが晴れ、途方もない安堵が全身に押し寄せた。カナリアが何を思っているかなんてどうでもいい。嫌われているかどうかなど些細な問題だとケージは結論付ける。
「よかった……ありがとう、ありがとう、代行屋」
うう……と目元を押さえて泣きじゃくるケージにカナリアはあわあわと慌てふためく。いきなり泣き崩れるものだから、背中をさすって泣き止むのを待つ他なかった。
「ね、何があったの。ねえったら……って、わぁ!」
ケージは問答無用でカナリアに抱きついた。女の子特有のふわりとしたいい匂いがケージを安心させる。胸元に顔を埋め、声を押し殺した。それでも、確かに変わった未来がそこにある事実を未だ受け入れられないでいた。
「ねえ、ちょっと……皆に見られてるからっ。恥ずかしいよぉ、ケージったら。何があったの、どうしてそんなに泣いてるのよ~っ!」
その微笑ましい姿を、来賓者達は生暖かい目で見守った。決闘の商品としてカナリアを賭け合っており、今ようやく勝ち取った現実を受け入れたのだと認識していた。
「屈強なる戦士もやはりおなごには弱いですな」
「まだ、十五であろう。仕方あるまいさ」
その後パーティーは恙なく終了したのだった。
0
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。
絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。
一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。
無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!
Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。
故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。
一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。
「もう遅い」と。
これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
デバフ専門の支援術師は勇者パーティを追放されたので、呪いのアイテム専門店を開きます
夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ノアは、敵を弱体化させる【呪物錬成】スキルで勇者パーティを支えていた。しかし、その力は地味で不吉だと疎まれ、ダンジョン攻略失敗の濡れ衣を着せられ追放されてしまう。
全てを失い、辺境の街に流れ着いたノア。生きるために作った「呪いの鍋」が、なぜか異常な性能を発揮し、街で評判となっていく。彼のスキルは、呪いという枷と引き換えに、物の潜在能力を限界突破させる超レアなものだったのだ。本人はその価値に全く気づいていないが……。
才能に悩む女剣士や没落貴族の令嬢など、彼の人柄と規格外のアイテムに惹かれた仲間が次第に集まり、小さな専門店はいつしか街の希望となる。一方、ノアを追放した勇者パーティは彼の不在で没落していく。これは、優しすぎる無自覚最強な主人公が、辺境から世界を救う物語。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。
絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。
辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。
一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」
これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!
無能と追放された俺、死にかけて覚醒した古代秘術を極めて最強になる
仲山悠仁
ファンタジー
魔力がすべての世界で、“無能”と烙印を押された少年アレックスは、
成人儀式の日に家族と村から追放されてしまう。
守る者も帰る場所もなく、魔物が徘徊する森へ一人放り出された彼は、
そこで――同じように孤独を抱えた少女と出会う。
フレア。
彼女もまた、居場所を失い、ひとりで生きてきた者だった。
二人の出会いは偶然か、それとも運命か。
無能と呼ばれた少年が秘めていた“本当の力”、
そして世界を蝕む“黒い霧”の謎が、静かに動き始める。
孤独だった二人が、共に歩き出す始まりの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる