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case3 異国日本からの転移者
アンネとの再会。
しおりを挟む「ご主人様っ」
ばっと俺に駆け寄って来る少女。
日に日に健康状態は回復し、肌のツヤも手入れの努力が伺える。
「やあ、久しぶり。アンネ」
冒険者ギルドは特に騒ぐ様子はない。
近所のペットが、一度遊んだ相手を見てはしゃぐようなものだ。
一週間に一度、俺に会いにやってくる奥山は後ろで軽く会釈した。
俺も約束を果たしてくれてありがとう、と礼を返す。
「アンネね、いっぱい話したい事あるんだっ」
奥山は横の酒場で時間を潰すとてをひらひらさせた。
残り二人の奴隷達は奥山にぴったりと追随していく。
二人になれるよう、気を効かせてくれたのだ。
「よし。じゃあ、落ち着ける場所でまたゆっくり話そうか」
メンタルケア、なんて大それた言い方だろうか。
だが前に一度、奥山は俺に言っていた。
『君の存在が現在の彼女の支えになっている。認めたくないけどね』
俺なりの責任を果たす為に、俺は目の前の少女と向き合うのだ。
□■□
名前 アンネ
性別 女
体力 22510/22510 魔力85000/87500
『恩恵』『歌唱』
「アンネは凄いな。元のステータスが幾らだったか分からない位成長している。よく頑張ったな、偉い偉い」
「えへ……えへへっ」
アンネはまだ子供だ。
俺がこうして頭を撫でるだけで分かり易く笑みを零す。
この強さだと、世界でも五十番以内には入っていそうだ。
魔法に限って言えば、俺よりも既に強いかもしれない。
「ご主人様とはうまくやれているのか」
「だから違う、しのぶはしのぶ。ご主人様はあなたっ」
「いい加減認めろよ……奥山は既に金貨五枚以上の稼ぎは出している。この前だって、アンネが止めなければ俺がその分の金を貰っていた所なんだぞ」
「ご主人様も……そんな事言うの?」
「アンネ……」
そろそろ聞くべき頃合いだろうか。
どうして俺にそこまで固執するのか、俺でなくてはいけない理由。
何か意味があるんじゃないか。
「なあ、アンネ」
「アンネが元々隣国にいた魔法師って事はもう知ってるよね」
アンネから切り出した。
隣国から流れて来た奴隷だという事実は早々に突き止めていた。
「アンネは最初、全てを忘れていた。奴隷に落ちた時……生きるのに必死で、使命を忘れて。ただ生き延びたいと強く思ったの」
アンネは俯きながら訥々と過去を離し始めた。
一か月経って俺が初めて聞く話だった。
「思い出し始めたのは、しのぶと冒険を始めてから。ううん、始める前、あなたの顔を見たときから思い出し始めていた。アンネの記憶、アンネの使命を」
「君の使命……なんなんだ一体」
「黒竜王を倒せる人間を探す事。それが、アンネの使命だった」
アンネは椅子に座らせる。
長い話になるなと、ある程度の予想は出来た。
幸い今の部屋は代行業を営む時の個室だ、誰も入ってはこない。
俺は頷いて続きを話させた。
「黒竜王はアンネ達の国ラナンキュラスを滅ぼそうとした。永きに渡る眠りから覚め、国民を恐怖に陥れた。黒竜王は、万物を溶かし尽くすブレスで街を葬り去り、体表から毒の瘴気が人々を襲う。アンネ達が倒そうと決心するまでに街は五つ滅んだ」
『姫様、アンネが必ず守ります』
『アンネ、ダメよ。行っちゃダメぇ!!』
「最強の魔法師と呼ばれた時代もあった。何しろアンネの唄は文字通り人の格を底上げする。奇跡の唄声に国民達は、国を守る兵士は活気を取り戻した。もう少しで倒せるはずだった……っ」
ギリリ、血が滲む程アンネは強く拳を握りしめた。
唇からぽたりと鮮血が滴る。余程の悔しさに美しい顔を歪ませていた。
「……ライゼンベルクの兵士が攻めて来たのは丁度その頃だった」
「まさか……!」
『ベリアルさん、知らないんですか? 最近隣国との国境付近で小競り合いがあったらしく、近々戦争になるかもしれないと』
『国王様との密会は、暗殺の件の相談でしょう。そして、その全ては戦争で隣国に攻め込む際の大義名分を作る為。『『聖女』はお前達のせいで殺された。だから、お前達には報復を受けて貰う』とかなんとか言って』
全てが繋がっていく。
隠された謎が明らかにされていく。
「つまり俺達は……俺達の国の兵士は、黒竜王討伐で疲弊した所を、背中から奇襲したっていうのか!?」
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