二度目の世界で今度こそ俺は

開拓

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獣人国ゼルガルド王国編

#20冒険者

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 俺の名前はロベルトC級冒険者チーム<ウォルフ>のリーダーだ。
 俺達は四人組のパーティで、結成四年のチームだ。
 前衛担当の人族の俺ロベルト、同じく前衛の獣人族のライアン、人族の魔術師レイナ、人族の探索者ユウナ。
 男二人女二人の前衛後衛がそろった、バランスのいいチームだ。
 結成時は俺と魔術師のレイナの二人組のチームだった。
 当初は俺も村で魔物の討伐に駆り出された経験があるくらいだったし、レイナも珍しく魔法の適正があっただけで初級魔法がせいぜいの新米パーティだった。
 しかし魔法の適正があるものが結成からいるなんて幸運はほとんどない。
 俺達は順調に力を伸ばし、二年かけて俺は一対一であればCランクの魔物なら単独でも倒せるようになり、レイナも死に物狂いで勉強し、たった二年で水の中級魔法を覚えた。
 少しずつD級内でも知名度があがったところで、ライアンとユウナをチームに入れることが出来たのも幸運だった。
 ライアンはガタイがよく、パーティの盾として優秀な戦士だし、ユウナは素晴らしい弓使いで、薬草などにも詳しく、索敵にも優れた感覚を持つ。
 四人が揃ってそろそろ一年だが、異例のスピードでC級冒険者チームとなり最近はかなり知名度も上がってきている。

 そんな俺の持論だが、冒険者には必要なものが三つあると思っている。
 一つはパーティ。いいメンバーが集まること、これはかなり運の要素が大きいが重要だ。
 冒険者は人種などをあまり気にしない者が多いが、中には気にする者もいる。そういう奴とパーティになるといざこざに巻き込まれる為、パーティは慎重に集めなくてはいけない。

 一つは安全を常に意識する事だ。パーティとして無理のないよう安全マージンを取りつつ、協力することでコツコツとクエストをこなし、装備を整え上を目指すのが基本だ。
 いくら報酬が良くても、死ねばそれまでだし、生きてさえいれば少しずつでも強くなれるし金も溜まる。

 そして最後の一つが信用だ。
 信用を築くのは難しい。一つのミスで今まで培った信用はすぐに崩れ去ってしまう。
 築くのは大変で、なくすのは一瞬という極めて難しいものだ。
 依頼者からのクエストを忠実にこなすことを繰り返し、少しずつ信用や知名度を集める。
 そうやって少しずつ上を目指していく。それが冒険者だ。

 こんな説明の後だが、持論以前に常識というものがある。マナーと言ってもいいが。
 それは、目上の冒険者に敬い、迷惑をかけないことだ。
 なぜこんなことを言うのかというと、もうすぐ集合時間になるというのにクエストを受けたD級冒険者の二人組パーティがまだ来ない。
 今回俺達のほかにD級二人組のパーティが二組来ると今朝冒険者ギルドで確認している。
 俺達ウォルフ四名と冒険者歴一年の獣人二人組みの新米パーティ<レイク>。そして昨日冒険者登録をしたばかりというパーティー名すらない二人組の新米、合計八人でのクエストのはずだ。
  レイクの二人組は俺達が付くより前に到着して、隊商の荷積みを手伝っていた。ランク下の者がある程度雑務をこなす、これが冒険者の隠れた常識だ。
 戦闘になればランク上のパーティの足を引っ張るのは確実なのだから、こういうところで役立つべきということで、隠れた常識として一般化している。
 俺達もD級だったときこういう下積みをして、コツコツ頑張ってきた。
 確かに昨日冒険者になったばかりでは、こういう常識も知らないかもしれない。今後教えてやればいいと思っていたが、出発の五分前になってもまだ来ないのだ。
 荷積みも詰み終えてしまい、これはさすがにどうかと思い、俺達やレイクの二人も口には出さないがイライラしていた。

「あとの二人はまだですかなぁ」

 この隊商のリーダーであるマルウェルさんだ。この隊商は馬車5台編成で、二つの商家が合同で行っている。
 馬車に対して冒険者が少ないが、マルウェルさんと同行する商人5人とは別に私兵を5人ほど雇っているそうだ。
 そのため、この人数でも隊商として成り立つとの説明を受けている。

「クエストのキャンセルをしたのかもしれません」

「ギリギリであればまだこちらに知らせが来てないのかもしれませんな」

「時間になりましたら出発しましょう。正直D級の新人二人が来ても、さほど戦力にならないと思いますし、私達ウォルフとレイクでしっかりお守りしますよ。宜しく頼むなレイク」

「はい! こちらこそウォルフの方々と一緒のクエストを受けられて光栄です! 精一杯頑張ります!」

 ふと外門に通じる大きな通りを見ると、こちらに向かって歩いてくる二人組が見える。
 新人だろうかと思ったがさすがにそれはないとすぐに分かる。
 なぜなら向かってくるのは子供と、若く美しい女性の二人組だからだ。
 あの女性の子供ではないだろうから、姉弟だろうか。
 それにしても、姉がとても美しい。とても高価そうな白いケープを纏い、目線を下にずらすとブーツとショートパンツの間から少しだけ見える太ももがまた目を釘付けにする。
 何と言っても美しい容姿とプロポーションだ。物静かな印象を受ける整った顔だが、可愛らしさも併せ見える素晴らしい美人だし、プロポーションもケープに隠れてはっきりとは解らないが、あの足を見るだけで絶対にきれいだと理解してしまう。
 うちのユウナも若くかなり美しいと評判だが、彼女には劣る。
 それよりもこの外門の外は街道とはいえ魔物も出る。姉弟二人で外に出るのは危険だ。
 ひょっとすると隊商に便乗して、他の街に移動したい者かもしれない。こういう機会でもなければ、普通の人は街の間を移動できないのだ。

「失礼、隊商に同乗希望の方だろうか」

「冒険者のセインとサーリャだ。女性をあまりじろじろ見るのは失礼だろうが」

 こうして俺達ウォルフの波乱の旅が始まった。
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