追放されたおっさん、辺境ダンジョンで【家庭菜園】始めたら、伝説の植物が育ちすぎて

帝国妖異対策局

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突撃! 魔神の魔神殿

第50話 二人の帰還、そして王命伝達

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 王都から辺境への道のりは、行きとは比べ物にならないほど早かった。

 王命という後ろ盾を得たことで、道中の関所や宿場での手続きがスムーズになった…というのもあるが、それ以上に精神的な高揚感が二人を突き動かしていた。

(アラン様にお伝えしなければ!)

 王命を伝えれば、きっと……

『あぁ、ブリジット。俺に魔神討伐で人々を救い王国の英雄になるチャンスを作ってくれるなんて。君は何て素敵な女性なんだ』

(そこからギュッってハグからの、チュッからの、熱い二人のベーゼに……)

 期待が高まり過ぎて、かなりおかしくなっているブリジットだった。

 聖女セシリアも同様、

(きっと、アラン様にはお喜びいただけるはず…!)

 王命をお伝えすれば、きっと……

『あぁ、セシリア、君は何て素晴らしい女性なんだ……』

 以下略であった。

 そんな二人の期待を乗せて、馬車は辺境の地へとひた走る。

 そして数日後、二人は辺境へと戻ってきたのであった。

「着きましたね、セシリア様!」
「ええ。…少し、なんだか私、緊張してきましたわ」

 あれほど王都で熱弁を振るったブリジットだったが、いざアラン本人に王命を伝えるとなると、自然と背筋が伸びるのを感じていた。

 馬車が豪邸の前に止まると、玄関の扉が勢いよく開き、中から子どもたちが飛び出してきた。

「「「「ブリジットー! セシリアー! おかえりー!」」」」

セシリアが優しく微笑み、駆け寄ってきたミミーニャを抱きしめる。ブリジットも、子供たちの無邪気な歓迎に頬を緩ませた。

「二人とも、いったい何があった!?」

 アランも、玄関ホールに出てきて二人を迎えた。その隣には、メイド服姿のレンが無表情で控えている。

「おかえりなさいませ、ブリジット様、セシリア様。王都での任務、ご苦労さまです」

 そう言ってレンは丁寧にお辞儀をする。

「ただいま戻りました、アラン様、レン様」

 セシリアがレンに丁寧に挨拶を返す。

(ただいまって……まるで二人が家にでも帰って来たみたいに……)

 レンや子どもたちが、二人が戻って来たのを当たり前のように受け入れるのを、アランだけが訝し気に思っていた。

 リビングに通され、ソファに腰を下ろした二人。

 アランは、いつもそうしているように人数分のお茶を用意する。その手際の良さは、すっかりこの豪邸の主婦…いや主夫の風格である。

「それで、どうだったんだ? 王様への報告は」

 アランがカップを配りながら、努めて平静を装って尋ねた。

 もう今の時点で、面倒ごとがやってくる予感がしていて、落ち着かない。

 ブリジットとセシリアは、顔を見合わせると、意を決したようにアランに向き直る。

 その表情は、先程までの再会の喜びとは打って変わり、極めて真剣なものだった。

「アラン様」

 ブリジットが、改まった口調で切り出した。その声には、彼女の騎士として精一杯の強い意志と、アランへの深い敬意が込められていた。

「まず、ご報告いたします。我々の王都での報告は、国王陛下に聞き届けられました。陛下は、アラン様が我々を救ってくださった奇跡、そしてその比類なき御力に、大変感銘を受けておられました」

「はあ…それはどうも……」

 セシリアが、潤んだ瞳でアランを見つめ、言葉を続ける。その声は、聖女らしく清らかでありながら、どこか熱っぽさを帯びていた。

「そしてアラン様のその偉大なるお力を、ぜひとも、魔神の脅威に晒されいる王国の民のためにお貸しいただきたいと、国王陛下は……」

「へっ?」
 
 アランの嫌な予感は、確信へと変わりつつあった。背中に冷たい汗が流れるのを感じる。

 そして、ブリジットが決定的な言葉を告げた。

「アラン様に、正式な『王命』が下されました!」

「―――っ!?」

 アランは、言葉を失った。息が詰まる。王命? この俺に? なぜ? どうして?
 
 混乱するアランをよそに、セシリアが優しく、しかし有無を言わせぬ響きで続ける。

「陛下は、アラン様に『魔神ウディナ・キキモーラによるこれ以上の脅威の排除』を命じられました。どうか、アラン様の聖なる御力をもって、我らが王国をお救いください…!」

「は?」

 アランの口から、間抜けな声が漏れる。

「はぁああああああああ!?」

(魔神の脅威の排除? 俺が? 魔神を? 意味が分からない。王命? たかがポーターの俺に? 冗談じゃない。悪夢だ。これはきっと悪い夢に違いない)

 アランは、現実逃避する先を求めて辺りを見回した。

 子どもたちは、難しい話はよく分からないといった様子で、セシリアにもらったお土産の菓子を食べていた。


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