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第5話 萌拳修業
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アンナさんの厳しい修行は24時間年中無休で続いた。
まだ半年だけど。
この間の厳しい修行内容については「びっくり世界の最強武術 ~ 萌拳編 ~」(トモヤ・サガミ著)を買って読んで欲しい。
とにかく修行は凄まじく厳しく……そしてエロかった。
修行開始から半年後、色々な意味で一皮むけたぼくは修行の最終段階に入る。
「ではご主人様、これまでの修行の集大成をわたくしに示して見せてください!」
「はい! 師匠!」
こうしてぼくはアンナ師匠に萌拳奥義「七女神拳」の演武を始めた。
★ 七女神拳 第一路 ―― 竈と燻製の女神ラヴェンナ ――
世界で最も古い創世神話に登場する女神ラヴェンナは、聖樹ミスティリナを世界にもたらした根源の神とされている。
ぼくは両手で輪を作り、聖樹の歩法で移動しつつ両腕を前後左右に振り回す。これは女神の豊満な乳房を表した動きだ。この乳房の輪はあらゆる敵を弾き飛ばす。
「ハァァッ!」
乳房の輪の間から、ぼくはハイキックを繰り出した。これはアドリブだ。
このようにラヴェンナの型にはトリッキーな動作が含まれる。これはこの女神が予測不可避の行動を取ることに由来するものだ。この攻撃は未来を見通す妖異さえも回避することができないと言われている。
★ 七女神拳 第二路 ―― 弓と純潔の女神エルフリン ――
女神エルフリンの弓は一矢で数千の妖異を同時に屠ったと伝えられている。その神気を纏うことで穢れを払う力が宿り、死霊に対してクリティカルなダメージを与えることができる。
「シュシュシュシュ」
ラミニスタ歩法で地面にイメージしたラミニスタ大陸を描きながら、ぼくは抜き手を何度も繰り出していく。
エルフリンの矢を表したこの抜き手が振るわれるたびに、周囲の空間が浄化されていく。邪霊はもちろん、実態を持たない妖異に対して有効な技だ。
★ 七女神拳 第三路 ―― 秩序の女神ラーナリア ――
女神ラーナリアは調和を乱すものを許さない。外なる世界から侵入してきて好き放題に暴れる妖異たちに対して女神は必殺のお説教を繰り出すのだ。
ぼくは両手を腰に当てて上半身を前四十五度に傾ける、人差し指を立てた片腕を振り回す。その腕を目の前に振り出しながらラーナリア発気の呼吸に切り替える。
「メッ! メッ! メッ! メッ!」
端からみたらお母さんが悪戯をした子供を叱っている動きにしか見えないが、声を発する度にぼくの指先から神気弾が打ち出され、地面に焦げ跡を残していた。
そう! 萌拳は中距離攻撃も可能なのだ!
★ 七女神拳 第四路 ―― 知識の女神トリージア ――
この世界において最も高い文明を有しているトゥカラーク大陸を司るのが女神トリージアだ。ミスリル製の眼鏡を掛けたトリージアは巨大な本を持ち、常に知識を増やし続けているとされている。
ぼくは手に持った本を開いて読んでいる姿勢を取る。さらに大地をくり抜くトゥカラーク立ちという構えを取り、片手で眼鏡をクィッと直す仕草をする。
「フンスッ!」
この状態こそ突破不能の絶対防御、読書の邪魔すんなし!
この型を取っている間は、どんな敵の攻撃もはじき返してしまうのだ!
★ 七女神拳 第五路 ―― 闇の女神シャリン ――
闇の魔術が蔓延るミコラシア大陸を司るのが女神シャリン。弱々しい外見とオドオドした振る舞いで相手の油断を誘い、闇の力で万物を腐らせてしまうと言われている。
ぼくは両手を組み合わせて、あたりをキョロキョロ見つつ、挙動不審の歩法を取る。
「カタライッ!」
そう叫んだぼくの周囲に黒い光が広がって消える。この光に触れた妖異のほとんどが腐って溶けてしまうのだが、たまにマブダチ化する場合がある。危険と表裏一体の技なのだ。
★ 七女神拳 第六路 ―― 戦いの女神ヴァルキリエ ――
神馬エインヘルヤに跨って戦場を駆け巡る女神ヴァルキリエは武技の達人だ。あらゆる武器を使いこなす才能を与える神として知られている。女神の祝福を受けた武器はあらゆる魔術を無効化するとも言われている。
「ラァァァ!」
ぼくはヴァルキリエの声を放った。この咆哮によって恐怖に囚われた敵は体が動かなくなってしまうのだ。
その瞬間に槍の型で敵の心臓を一撃に葬るのが基本の流れとなる。
★ 七女神拳 第七路 ―― 融和の女神フランソル ――
この世界に最後に降臨したのが融和の女神フランソルだ。美しい黒髪の持ち主であることから黒のフランと呼ばれることもある。
神話では、女神の黒髪に惹かれたすべての敵が戦意を喪失したとか、三千世界から彼女を応援するためにハチマキと輝く杖を手にした勇者たちが集ってきたと言われている。
「フサッ!」
ぼくはフランソルの黒く長い髪をイメージしながら、それを手でフサッとかき上げて、くるりと一回転する。
周囲が金色に輝く。この輝きに触れた妖異はたちまち戦意を喪失するのだ!
「プハァァァ」
一通りの型を終えたぼくは終式と呼ばれる、終わりの姿勢を取ってその場に佇んだ。
「お見事!」
アンナ師匠がぼくの前に立って言った。
「ありがとうございます! 師匠!」
「うむ。その取扱いの難しさから、本来であれば萌拳は誰にも伝えることなくわたくしだけの代で終わらせようと思っていました」
師匠は萌拳を伝承するつもりはなかったのか。ぼくは心底驚いた。
「だがご主人様! わたくしは貴方になら伝えても良いと! 貴方ならこの思いを受け止めてくれると信じていました!」
「はい! ありがとうございます! 師匠!」
「では、最後の秘伝を授けます」
「はい!」
師匠が指をパチン!と鳴らす。
ワラワラワラワラ。
突然、森の中から聖樹教会の神父さんが息を切らしながら走り出てきた。その後にシスターと花束を持ったリーラさんが続く。
「な、何事!?」
驚くぼくを尻目に師匠は話を続ける。
「萌拳は人や魔物に使うとどうなるかお話しましたよね?」
「え、ええぇ。敵に惚れられてしまうんでしたっけ?」
「その通りです! そうなってしまった敵を回避するために一番の方法は何かわかりますか?」
「い、いえ」
「使い手が最愛の人と結ばれることです! 萌拳で惚れ化してしまった敵は、愛する人が手に入れた最高の愛を壊すことをたぶん望みません! 」
「な、なるほど! さすが師匠です!」
師匠が何を言ってるのかよくわからなかったので、ぼくはとりあえず褒めておくことにした。
「良いですか! 萌拳はその技の性質から戦っている敵に欲情してしまうことがあるのは避けられません!」
そう言って師匠はくるりと回転してぼくの方へ向き直る。師匠の長く美しい黒髪とメイド服のスカートがふわりと宙を舞い、師匠の切れ長の瞳がキラリと光ってぼくの目をまっすぐに見つめていた。
「良いですか!」
両足を開いて大地を踏みしめ、手をぼくの方にビシッと突き付けて師匠が叫ぶ。
「貴方が敵の乳を揉み! 股をさすり! あるいはどこぞをペロペロしようと! わたしはそのすべてを許しましょう。だがしかし!」
師匠が自分の股間にそっと両手を添える。
「貴方が生涯で入れる穴はここだけ! ここだけです! それだけは絶対に忘れてはなりません!」
「はい師匠!」
「では誓いなさい、ご主人様!」
「誓います! ぼくが生涯で入れるのは師匠のだけです!」
神父さんがぼくと師匠の前に進み出てた。
「では指輪の交換を」
シスターが指輪をぼくと師匠に手渡してきたので、とりあえず流されるままにぼくは師匠と指輪を交換する。
「では近いの口づけを」
ンチューッ!
ぼくはいつもの流れで自然に師匠と口づけを交わす。
「んっ?」
ちょっと待ってこの流れは……?
「ぼく師匠と結婚してませんか?」
「そうです! 旦那様!」
師匠が身体に飛びついてきたので、ぼくは思わず師匠をお姫様抱っこしてしまう。
「えっ? えっ? えっ?」
ぼくが困惑しているとリーラさんが花束を師匠に手渡す。
「おめでとう二人とも! あたしは絶対二人がこうなるって思ってたよ!」
「ありがとうございます!」
師匠が満面の笑みで花束を高く放り投げた。シスターが必死でそれをキャッチする。
「結婚したの? ぼく?」
「もしかして……い、いやでしたか?」
腕の中の師匠が目を伏せる。
「そんなわけないだろ。ぼくが愛しているのは君だけだよ……」
ここ半年の萌拳修業の成果で、反射的にそんな甘々なセリフがぼくの口を突いて出た。
耳元で低音スイーツボイスを囁かれてしまった師匠の身体が一瞬プルプルと震える。
濡れたな。
ここ半年の萌拳修業の成果で、ぼくには師匠の身体の状況が手に取るように理解できるようになっていた。
「アンナ……愛してるよ」
ここ半年の萌拳修業の成果で出た言葉だけど、これはぼくの本心でもある。
「ひゃ、ひゃい。わひゃひも愛してまひゅ……」
さらに濡れたな。
ぼくはアンナと再び濃厚な口づけを交わす。
「コッ、コホン!」
あんまり長かったので、神父さんが咳払いして結婚式の結びの言葉を述べた。
「これにて女神ラヴェンナとその子ミスティリアの名において、二人を夫婦とする。二人力を合わせて家にはよき竈を持ち、末永く燻製を神々に捧げよ。さすれば死の時が違えども、死の床が違えども、ラヴェンナの楽園にて二人は再び結ばれ、永遠に神々の祝福を授からん――はい。終わり! 二人ともおめでとう!」
ぴっ、ぴっ、と神父さんは腕を動かして聖樹の印を結ぶ。
「旦那さま!」
アンナがぼくに言った。
「これで萌拳秘伝の伝授を終わります! 以後、わたくしのことを師匠とは呼ばず、アンナと呼ぶように!」
「はい! 師……アンナ!」
なんだか色々とどさくさ紛れにコトが進んでしまったようにも思える。でもぼくはアンナとこうなることが、修行四日目の朝にはもう分かっていた。
ぼくの腕の中で眠るアンナと、その後にアンナの血が染みついたシーツを見たときから分かっていた。というか決めていた。
ぼくは最高の一歩手前まで幸せだった。そしてその一歩はどうしても譲れない。
「アンナ……」
ぼくの瞳をのぞき込んだアンナは、ぼくの想いをたちまち理解してくれた。
「ミラクシャさんとサマンサさんですね」
「ああ、それと……」
ぼくは自分の決意をその場にいる全員に伝えた。
「ザックは潰す!」
まだ半年だけど。
この間の厳しい修行内容については「びっくり世界の最強武術 ~ 萌拳編 ~」(トモヤ・サガミ著)を買って読んで欲しい。
とにかく修行は凄まじく厳しく……そしてエロかった。
修行開始から半年後、色々な意味で一皮むけたぼくは修行の最終段階に入る。
「ではご主人様、これまでの修行の集大成をわたくしに示して見せてください!」
「はい! 師匠!」
こうしてぼくはアンナ師匠に萌拳奥義「七女神拳」の演武を始めた。
★ 七女神拳 第一路 ―― 竈と燻製の女神ラヴェンナ ――
世界で最も古い創世神話に登場する女神ラヴェンナは、聖樹ミスティリナを世界にもたらした根源の神とされている。
ぼくは両手で輪を作り、聖樹の歩法で移動しつつ両腕を前後左右に振り回す。これは女神の豊満な乳房を表した動きだ。この乳房の輪はあらゆる敵を弾き飛ばす。
「ハァァッ!」
乳房の輪の間から、ぼくはハイキックを繰り出した。これはアドリブだ。
このようにラヴェンナの型にはトリッキーな動作が含まれる。これはこの女神が予測不可避の行動を取ることに由来するものだ。この攻撃は未来を見通す妖異さえも回避することができないと言われている。
★ 七女神拳 第二路 ―― 弓と純潔の女神エルフリン ――
女神エルフリンの弓は一矢で数千の妖異を同時に屠ったと伝えられている。その神気を纏うことで穢れを払う力が宿り、死霊に対してクリティカルなダメージを与えることができる。
「シュシュシュシュ」
ラミニスタ歩法で地面にイメージしたラミニスタ大陸を描きながら、ぼくは抜き手を何度も繰り出していく。
エルフリンの矢を表したこの抜き手が振るわれるたびに、周囲の空間が浄化されていく。邪霊はもちろん、実態を持たない妖異に対して有効な技だ。
★ 七女神拳 第三路 ―― 秩序の女神ラーナリア ――
女神ラーナリアは調和を乱すものを許さない。外なる世界から侵入してきて好き放題に暴れる妖異たちに対して女神は必殺のお説教を繰り出すのだ。
ぼくは両手を腰に当てて上半身を前四十五度に傾ける、人差し指を立てた片腕を振り回す。その腕を目の前に振り出しながらラーナリア発気の呼吸に切り替える。
「メッ! メッ! メッ! メッ!」
端からみたらお母さんが悪戯をした子供を叱っている動きにしか見えないが、声を発する度にぼくの指先から神気弾が打ち出され、地面に焦げ跡を残していた。
そう! 萌拳は中距離攻撃も可能なのだ!
★ 七女神拳 第四路 ―― 知識の女神トリージア ――
この世界において最も高い文明を有しているトゥカラーク大陸を司るのが女神トリージアだ。ミスリル製の眼鏡を掛けたトリージアは巨大な本を持ち、常に知識を増やし続けているとされている。
ぼくは手に持った本を開いて読んでいる姿勢を取る。さらに大地をくり抜くトゥカラーク立ちという構えを取り、片手で眼鏡をクィッと直す仕草をする。
「フンスッ!」
この状態こそ突破不能の絶対防御、読書の邪魔すんなし!
この型を取っている間は、どんな敵の攻撃もはじき返してしまうのだ!
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闇の魔術が蔓延るミコラシア大陸を司るのが女神シャリン。弱々しい外見とオドオドした振る舞いで相手の油断を誘い、闇の力で万物を腐らせてしまうと言われている。
ぼくは両手を組み合わせて、あたりをキョロキョロ見つつ、挙動不審の歩法を取る。
「カタライッ!」
そう叫んだぼくの周囲に黒い光が広がって消える。この光に触れた妖異のほとんどが腐って溶けてしまうのだが、たまにマブダチ化する場合がある。危険と表裏一体の技なのだ。
★ 七女神拳 第六路 ―― 戦いの女神ヴァルキリエ ――
神馬エインヘルヤに跨って戦場を駆け巡る女神ヴァルキリエは武技の達人だ。あらゆる武器を使いこなす才能を与える神として知られている。女神の祝福を受けた武器はあらゆる魔術を無効化するとも言われている。
「ラァァァ!」
ぼくはヴァルキリエの声を放った。この咆哮によって恐怖に囚われた敵は体が動かなくなってしまうのだ。
その瞬間に槍の型で敵の心臓を一撃に葬るのが基本の流れとなる。
★ 七女神拳 第七路 ―― 融和の女神フランソル ――
この世界に最後に降臨したのが融和の女神フランソルだ。美しい黒髪の持ち主であることから黒のフランと呼ばれることもある。
神話では、女神の黒髪に惹かれたすべての敵が戦意を喪失したとか、三千世界から彼女を応援するためにハチマキと輝く杖を手にした勇者たちが集ってきたと言われている。
「フサッ!」
ぼくはフランソルの黒く長い髪をイメージしながら、それを手でフサッとかき上げて、くるりと一回転する。
周囲が金色に輝く。この輝きに触れた妖異はたちまち戦意を喪失するのだ!
「プハァァァ」
一通りの型を終えたぼくは終式と呼ばれる、終わりの姿勢を取ってその場に佇んだ。
「お見事!」
アンナ師匠がぼくの前に立って言った。
「ありがとうございます! 師匠!」
「うむ。その取扱いの難しさから、本来であれば萌拳は誰にも伝えることなくわたくしだけの代で終わらせようと思っていました」
師匠は萌拳を伝承するつもりはなかったのか。ぼくは心底驚いた。
「だがご主人様! わたくしは貴方になら伝えても良いと! 貴方ならこの思いを受け止めてくれると信じていました!」
「はい! ありがとうございます! 師匠!」
「では、最後の秘伝を授けます」
「はい!」
師匠が指をパチン!と鳴らす。
ワラワラワラワラ。
突然、森の中から聖樹教会の神父さんが息を切らしながら走り出てきた。その後にシスターと花束を持ったリーラさんが続く。
「な、何事!?」
驚くぼくを尻目に師匠は話を続ける。
「萌拳は人や魔物に使うとどうなるかお話しましたよね?」
「え、ええぇ。敵に惚れられてしまうんでしたっけ?」
「その通りです! そうなってしまった敵を回避するために一番の方法は何かわかりますか?」
「い、いえ」
「使い手が最愛の人と結ばれることです! 萌拳で惚れ化してしまった敵は、愛する人が手に入れた最高の愛を壊すことをたぶん望みません! 」
「な、なるほど! さすが師匠です!」
師匠が何を言ってるのかよくわからなかったので、ぼくはとりあえず褒めておくことにした。
「良いですか! 萌拳はその技の性質から戦っている敵に欲情してしまうことがあるのは避けられません!」
そう言って師匠はくるりと回転してぼくの方へ向き直る。師匠の長く美しい黒髪とメイド服のスカートがふわりと宙を舞い、師匠の切れ長の瞳がキラリと光ってぼくの目をまっすぐに見つめていた。
「良いですか!」
両足を開いて大地を踏みしめ、手をぼくの方にビシッと突き付けて師匠が叫ぶ。
「貴方が敵の乳を揉み! 股をさすり! あるいはどこぞをペロペロしようと! わたしはそのすべてを許しましょう。だがしかし!」
師匠が自分の股間にそっと両手を添える。
「貴方が生涯で入れる穴はここだけ! ここだけです! それだけは絶対に忘れてはなりません!」
「はい師匠!」
「では誓いなさい、ご主人様!」
「誓います! ぼくが生涯で入れるのは師匠のだけです!」
神父さんがぼくと師匠の前に進み出てた。
「では指輪の交換を」
シスターが指輪をぼくと師匠に手渡してきたので、とりあえず流されるままにぼくは師匠と指輪を交換する。
「では近いの口づけを」
ンチューッ!
ぼくはいつもの流れで自然に師匠と口づけを交わす。
「んっ?」
ちょっと待ってこの流れは……?
「ぼく師匠と結婚してませんか?」
「そうです! 旦那様!」
師匠が身体に飛びついてきたので、ぼくは思わず師匠をお姫様抱っこしてしまう。
「えっ? えっ? えっ?」
ぼくが困惑しているとリーラさんが花束を師匠に手渡す。
「おめでとう二人とも! あたしは絶対二人がこうなるって思ってたよ!」
「ありがとうございます!」
師匠が満面の笑みで花束を高く放り投げた。シスターが必死でそれをキャッチする。
「結婚したの? ぼく?」
「もしかして……い、いやでしたか?」
腕の中の師匠が目を伏せる。
「そんなわけないだろ。ぼくが愛しているのは君だけだよ……」
ここ半年の萌拳修業の成果で、反射的にそんな甘々なセリフがぼくの口を突いて出た。
耳元で低音スイーツボイスを囁かれてしまった師匠の身体が一瞬プルプルと震える。
濡れたな。
ここ半年の萌拳修業の成果で、ぼくには師匠の身体の状況が手に取るように理解できるようになっていた。
「アンナ……愛してるよ」
ここ半年の萌拳修業の成果で出た言葉だけど、これはぼくの本心でもある。
「ひゃ、ひゃい。わひゃひも愛してまひゅ……」
さらに濡れたな。
ぼくはアンナと再び濃厚な口づけを交わす。
「コッ、コホン!」
あんまり長かったので、神父さんが咳払いして結婚式の結びの言葉を述べた。
「これにて女神ラヴェンナとその子ミスティリアの名において、二人を夫婦とする。二人力を合わせて家にはよき竈を持ち、末永く燻製を神々に捧げよ。さすれば死の時が違えども、死の床が違えども、ラヴェンナの楽園にて二人は再び結ばれ、永遠に神々の祝福を授からん――はい。終わり! 二人ともおめでとう!」
ぴっ、ぴっ、と神父さんは腕を動かして聖樹の印を結ぶ。
「旦那さま!」
アンナがぼくに言った。
「これで萌拳秘伝の伝授を終わります! 以後、わたくしのことを師匠とは呼ばず、アンナと呼ぶように!」
「はい! 師……アンナ!」
なんだか色々とどさくさ紛れにコトが進んでしまったようにも思える。でもぼくはアンナとこうなることが、修行四日目の朝にはもう分かっていた。
ぼくの腕の中で眠るアンナと、その後にアンナの血が染みついたシーツを見たときから分かっていた。というか決めていた。
ぼくは最高の一歩手前まで幸せだった。そしてその一歩はどうしても譲れない。
「アンナ……」
ぼくの瞳をのぞき込んだアンナは、ぼくの想いをたちまち理解してくれた。
「ミラクシャさんとサマンサさんですね」
「ああ、それと……」
ぼくは自分の決意をその場にいる全員に伝えた。
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