キモヲタ男爵奮戦記 ~ 天使にもらったチートなスキルで成り上がる……はずだったでござるよトホホ ~

帝国妖異対策局

文字の大きさ
41 / 239

第41話 それなら私に良い策があります!

しおりを挟む
 エルミアナに従って歩き続けたキモヲタたちは、巨大な岩が街道を塞いでいるのを見つけます。5メートルはあろうかという巨大なその岩は、まるで巨人が膝を抱えて座っているかのような形をしていました。

「これが岩トロルでござるか。でかいでござるなぁ」

 見た感じは、随所に苔が生えていることもあって、かなり古びた石造にしか見えません。それが動くなどとは想像が及ばないキモヲタは、観光名物でも見ているかのような呑気さでした。

 コンコンとあちこちを叩いて見たり、ゲシゲシと足で蹴ってみたり、正面の顔らしき部分の前で変顔をしてみたり、まるで悪い観光客の見本みたいな行動を繰り返しています。

「キモヲタ殿、あまり挑発するのはお勧めしません。石化しているとは言え、こいつは意識を持っています。夜中に動き始めたときに狙われかねません。」

 そうユリアスから警告を受けて、ようやくキモヲタはこの石造に対して恐怖を感じるのでした。そう言われてみれば、今は石のように見える目が視線をキモヲタに向けているような気がしてきます。

「ひっ!?」

 慌てて後ずさりするキモヲタ。そのとき思わず反射的に、石造に【お尻かゆくな~る】を放ってしまいます。しかし当然ながら、石造はピクリとも動きませんでした。

「キモヲタ! 遊んでないでちゃんと話を聞いて!」

 キーラがキモヲタを叱りながら、ユリアスたちのところへと引っ立てていきました。

「分かったでござる! 分かったからお腹の肉を引っ張るのをやめてくだされ!」

 キーラに腹を掴まれながらも、キモヲタは石造に目を向けていました。

 ユリアスとセリア、そしてエルミアナは、岩トロルの周囲を調べて得た情報をお互いに交換しているところでした。

「エルミアナ殿の言う通り、この沢山の足跡は魔族軍のもので間違いないだろうな。セリアはどう思う」

 汗で顔に張り付いた金髪をかき上げながら、ユリアスが青い瞳をセリアに向けて言いました。

「この岩トロルは魔族軍が率いていたもので間違いないでしょう。暗くなったら先行している部隊の後を追いかけ行くと思われます。一般的な岩トロルの運用であれば、恐らくこの近くに岩トロルを誘導する者が潜んでいるはずが……」

 エルミアナがユリアスの言葉を引き取りました。

「恐らくこの先で死んでいるゴブリンと思う。そいつは鞭を持ってた。近くに人類軍の兵士があったので、おそらく相討ちになったのかも」

 ユリアスが美しい顎にそっと手を添えて考え込みました。

「魔族軍の足跡は、私たちの向う方向と一致している。つまり、この街道の先にある村に向っているということ。彼らの目的が何であれ、補給のために村を略奪する可能性は高い」

「ユリアス様、今の私たちでは軍隊を相手にすることはできません」

 セリアの言葉に、ユリアスは頷きます。

「分かってる。だが村の様子は確認しておきたいし、我らの力が必要というのであれば……できれば手助けもしたい」

「ですがユリアス様、それをエルミアナ殿や他の二人に命じることはできませんよ。彼らは人類軍でも白バラ騎士団でもありません」

 セリアの言葉を聞いたエルミアナが二人に己の考えを述べました。エメラルドのような瞳には、これから話す自分の提案に確固たる自信を持っていることが伺えます。

 セリアが話を続けました。

「ならここで岩トロルを倒してしまいましょう! 足跡の数からそれほどの大きな部隊ではないことは間違いありません。岩トロルの支援がなくなるのは、彼らにとって相当の痛手になるはずです」

 ユリアスは一度は大きく頷いたものの、その後また考え込んでしまいました。

「とはいえ、我々の所持している武器ではこの状態の岩トロルには傷さえつけられない。夜になって動き出すようになれば、少しは刃も通るだろうが、それでもこいつの固さは相当なものだ」

 セリアが黒い髪をファサッとかき上げながら、青い焔が揺らめく瞳をユリアスに向けて言いました。

「それなら私に良い策があります」

(それはフラグですぞ! セリア殿ぉおお!)

 と、心の中でツッコミを入れるキモヲタでしたが、実のところ三人の話を真面目に聞いてはいませんでした。

 キモヲタは、少し陽が傾き茜色に滲みつつある中、三人の美女が目の前に立っていることに感動し、その美しさにひたすら見惚れていたのでした。

 見惚れていただけでなく、三人のバストトップの位置の違いや、胸の形、腰のくびれ、お尻の形、太ももを舐めたらどんな味がしそうか、今日はどんなシャンティを履いていそうか、あるいは似合いそうか、そういったことを考えつつ、ひたすら脳内REC録画を続けていたのでした。

「キモヲタ! ずっとエッチなこと考えてたでしょ! そういうのボク分かるんだからね!」

 ゲシッ! ゲシッ! ゲシッ! 

 これから「岩戸トロル対策」について話し合おうとしていた三人の女性から、氷よりも冷たい目線がキモヲタへと向けられます。

 ユリアスが咳払いをして言いました。

「キモヲタ殿、申し訳ないがこれから重要な作戦会議を行うので、少しだけ離れていてもらえないだろうか。キーラ殿、悪いが……」

「分かった! ほらアッチ行くよキモヲタ!」

 ゲシッ! ゲシッ! ゲシッ! 

「酷い! キーラ殿が我輩をここに連れて来たというのに。酷いでござる!」

 といいつつも、それほど痛くはないキーラの蹴りを、内心で「ご褒美」と喜んでいたキモヲタなのでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...