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第71話 山賊の女頭領は、そっちだったでござるかぁ……
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カザン王国へ向けて旅を続けるキモヲタ一行。
深い峡谷の前で足を止めました。
目の前の峡谷は、左右をとても高い崖に挟まれていて、その向かう先には薄暗い暗雲が立ち込めていました。見ただけで、その先にもう間違いなく絶対に魔物がいると確信するキモヲタ。
「賢者の石を持っているのが竜ということがわかったのでござるし、一度フェイルーン子爵領に戻ったりはせんのでござるか。この先を進むより引き返すのが大吉だと思うのでござるが……」
怯えた目で、暗い街道の先を見つめるキモヲタに、ユリアスは明るく笑いながら答えました。
「ここからであれば、フェイルーン子爵領に戻るよりもカザン王国の方がずっと近いですよ。それに、ドラン公国に派遣されている探索チームとは、そこで合流して情報交換をする手筈になっているのです。このまま進みましょう」
「そ、そうでござるか……ちょっと不安になったでござるが、そういう理由であれば仕方ござらんな」
「でも、キモヲタが怯えるのボクわかるよ。この峡谷って絶対に魔物がいると思う。それに山賊だってホラ……」
そう言ってキーラが崖の方を指差すと、岩陰に隠れていた山賊たちが姿を現しました。
「ねっ?」
キーラの声に反応して、ユリアスとセリア、エルミアナが一斉に剣を抜いて構えます。
「うひぃいい!」
「ンメェエエエエ!」
怯えるキモヲタをよそに、キンタはのんびりとあくびをしていました。
山賊の頭領らしき女性が、キモヲタたちに向かって一歩進みでます。
「おいおい、そこの旅人御一行の皆さん方! この峡谷を通るなら、俺たちマルドーク一家に税を納めてもらおうか!!」
頭領はユリアスより背が高く、体つきもガッシリとしていました。
しかし、頭領の赤く長い髪と、赤いシャツにパツンパツンに膨らむ巨乳を見たキモヲタは、頭領が自分のストライクゾーンに入っている女性であることを確信したのでした。
「合格!」
無意識のうちにキモヲタは、頭領に向けて親指を立てていました。これまでの旅で、キモヲタの性質を知り尽くしている仲間たちは、呆れた顔をキモヲタに向けます。
「キモヲタ……バカなの?」※キーラ
「いつもこの男はバカではないかと思ってましたが」※エルミアナ
「殺す、マジ殺す」※セリア
「ハハハ……キモヲタ様らしいです」※ユリアス
キモヲタから合格を貰った頭領はと言えば、キモヲタを無視して続けます。
「ほほう! こうしてみると美女が三人もいるじゃないか! そこのエルフ! お前は、税金を免除してやるから、弟Aの嫁になれ!」
頭領の言葉に、モヒカン頭の弟Aがの顔がデレデレになりました。
「ねーちゃん、おら、こんなめんこい嫁をもらってええだか?」
「もちろんだよ!」
「何を言ってるんですか!?」
エルミアナがレイピアの切っ先を弟Aに突き付けます。
「そこの黒い髪の女! お前は兄Bの嫁になれ!」
「はぁ!? マジ殺す!」
セリアの刀の正眼の構えを取り、その切っ先を兄Bに向けます。
「そこのデカイの! お前は弟Bの嫁だ!」
「私はキモヲタ殿に操を捧げると誓った身。絶対にお断りします」
ユリアスのクレイモアが弟Bに向けられました。
兄Aを残して一通りのマッチングを済ませた頭領が、エルミアナとセリアとユリアをギロリと睨みつけます。
そんな頭領に向ってキーラが手を振りました。
「えっと……ボクは? ボクは?」
キーラに目を向けた頭領ですが、すぐに目を逸らしてしまいました。
「えっ!? えっ!?」
頭領に無視されて困惑するキーラを放置して、キモヲタが頭領に向って声をあげます。
「ちょっ、山賊のお姉さん! 兄Aはどうするでござる! お姉さんが嫁を割り当てないから、後ろでちょっと悲しそうな顔をしてござるが!?」
頭領の後ろでは、山賊の中で一番身体が大きい兄Aが、キーラと同じような困惑した顔をしていました。
「なんなら、このキーラ殿を、あの兄Aの嫁にするというカタチで収めるのはどうでござるか?」
「キモヲタ……」
キーラの顔が輝いて、キモヲタに感謝の眼差しを向けました。
山賊の兄Aも、キモヲタの言葉を聞いてホっとしたような表情を見せました。そんな兄Aの表情を見て、頭領は激しく不機嫌な声で叫びました。
「ガキはいらん! それに兄Aは俺のだ!」
真っ赤になった頭領の顔を見て、キモヲタたちが口をあんぐりと開いて驚きました。
「おうふ! この山賊のお姉さん、ブラコンでござったか」
キモヲタが額に手を当てて唸ります。これはブラコンであることに呆れているのではなく、「そっちかぁ」という唸り声なのでした。
「えっ!? 兄妹なんでしょ?」
キーラは状況がよく飲み込めない様子。エルミアナとセリアも似たような反応でした。
「道ならぬ愛……」
ユリアスだけが、頭領に向けて優しい眼差しを向けるのでした。
深い峡谷の前で足を止めました。
目の前の峡谷は、左右をとても高い崖に挟まれていて、その向かう先には薄暗い暗雲が立ち込めていました。見ただけで、その先にもう間違いなく絶対に魔物がいると確信するキモヲタ。
「賢者の石を持っているのが竜ということがわかったのでござるし、一度フェイルーン子爵領に戻ったりはせんのでござるか。この先を進むより引き返すのが大吉だと思うのでござるが……」
怯えた目で、暗い街道の先を見つめるキモヲタに、ユリアスは明るく笑いながら答えました。
「ここからであれば、フェイルーン子爵領に戻るよりもカザン王国の方がずっと近いですよ。それに、ドラン公国に派遣されている探索チームとは、そこで合流して情報交換をする手筈になっているのです。このまま進みましょう」
「そ、そうでござるか……ちょっと不安になったでござるが、そういう理由であれば仕方ござらんな」
「でも、キモヲタが怯えるのボクわかるよ。この峡谷って絶対に魔物がいると思う。それに山賊だってホラ……」
そう言ってキーラが崖の方を指差すと、岩陰に隠れていた山賊たちが姿を現しました。
「ねっ?」
キーラの声に反応して、ユリアスとセリア、エルミアナが一斉に剣を抜いて構えます。
「うひぃいい!」
「ンメェエエエエ!」
怯えるキモヲタをよそに、キンタはのんびりとあくびをしていました。
山賊の頭領らしき女性が、キモヲタたちに向かって一歩進みでます。
「おいおい、そこの旅人御一行の皆さん方! この峡谷を通るなら、俺たちマルドーク一家に税を納めてもらおうか!!」
頭領はユリアスより背が高く、体つきもガッシリとしていました。
しかし、頭領の赤く長い髪と、赤いシャツにパツンパツンに膨らむ巨乳を見たキモヲタは、頭領が自分のストライクゾーンに入っている女性であることを確信したのでした。
「合格!」
無意識のうちにキモヲタは、頭領に向けて親指を立てていました。これまでの旅で、キモヲタの性質を知り尽くしている仲間たちは、呆れた顔をキモヲタに向けます。
「キモヲタ……バカなの?」※キーラ
「いつもこの男はバカではないかと思ってましたが」※エルミアナ
「殺す、マジ殺す」※セリア
「ハハハ……キモヲタ様らしいです」※ユリアス
キモヲタから合格を貰った頭領はと言えば、キモヲタを無視して続けます。
「ほほう! こうしてみると美女が三人もいるじゃないか! そこのエルフ! お前は、税金を免除してやるから、弟Aの嫁になれ!」
頭領の言葉に、モヒカン頭の弟Aがの顔がデレデレになりました。
「ねーちゃん、おら、こんなめんこい嫁をもらってええだか?」
「もちろんだよ!」
「何を言ってるんですか!?」
エルミアナがレイピアの切っ先を弟Aに突き付けます。
「そこの黒い髪の女! お前は兄Bの嫁になれ!」
「はぁ!? マジ殺す!」
セリアの刀の正眼の構えを取り、その切っ先を兄Bに向けます。
「そこのデカイの! お前は弟Bの嫁だ!」
「私はキモヲタ殿に操を捧げると誓った身。絶対にお断りします」
ユリアスのクレイモアが弟Bに向けられました。
兄Aを残して一通りのマッチングを済ませた頭領が、エルミアナとセリアとユリアをギロリと睨みつけます。
そんな頭領に向ってキーラが手を振りました。
「えっと……ボクは? ボクは?」
キーラに目を向けた頭領ですが、すぐに目を逸らしてしまいました。
「えっ!? えっ!?」
頭領に無視されて困惑するキーラを放置して、キモヲタが頭領に向って声をあげます。
「ちょっ、山賊のお姉さん! 兄Aはどうするでござる! お姉さんが嫁を割り当てないから、後ろでちょっと悲しそうな顔をしてござるが!?」
頭領の後ろでは、山賊の中で一番身体が大きい兄Aが、キーラと同じような困惑した顔をしていました。
「なんなら、このキーラ殿を、あの兄Aの嫁にするというカタチで収めるのはどうでござるか?」
「キモヲタ……」
キーラの顔が輝いて、キモヲタに感謝の眼差しを向けました。
山賊の兄Aも、キモヲタの言葉を聞いてホっとしたような表情を見せました。そんな兄Aの表情を見て、頭領は激しく不機嫌な声で叫びました。
「ガキはいらん! それに兄Aは俺のだ!」
真っ赤になった頭領の顔を見て、キモヲタたちが口をあんぐりと開いて驚きました。
「おうふ! この山賊のお姉さん、ブラコンでござったか」
キモヲタが額に手を当てて唸ります。これはブラコンであることに呆れているのではなく、「そっちかぁ」という唸り声なのでした。
「えっ!? 兄妹なんでしょ?」
キーラは状況がよく飲み込めない様子。エルミアナとセリアも似たような反応でした。
「道ならぬ愛……」
ユリアスだけが、頭領に向けて優しい眼差しを向けるのでした。
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