103 / 239
第103話 おいしいクエスト、但し女性限定……怪し過ぎるでござろうが!
しおりを挟むギルドのクエストで道中の路銀を稼ごうと考えたキモヲタ一行。
クエスト掲示板の前に立って何かめぼしいものがないかと、貼り付けられているクエスト依頼書に目を通していました。
受注できるのは中級以下のクエスト、文字のインクが青か緑のものに限られています。青インクは初級クエストで、その内容は薬草採集や近隣の街へのお使いクエストがほとんど。そして報酬も少ないものばかり。
中級の緑クエストはもっとも数が多く、その内容も報酬もさまざまです。
・アース村周辺に出現する影狼の群れを討伐。報酬:金貨3枚
・森の奥深くにあるポイズンスパイダーの巣の壊滅。報酬:金貨4枚
・商隊の護衛。報酬:金貨3枚
などなど……。
キモヲタとキーラが掲示板に張り付くように近づいて、あれこれクエストを見ていました。
「うーん、いっぱいあるねー。どれがいいかなー。ボク、できれば肉が食べられるクエストがいいなー」
「我輩は、美少女救出クエストがいいでござるかなー。ピンチの美少女を助けて『キモヲタさま、ス・テ・キ』と抱きついてもらうでござるよ」
「アハハー、キモヲタは相変わらずキモイこと考えるね!」
「そういうキーラたんこそ、みごとな食いしん坊ぶりでござる!」
「むー! キモヲタのお腹の肉を食べてあげれたらいいんだけどね!」
キーラがキモヲタのお腹をツンツンしていると、エルミアナがあるクエストを指差しました。
「このクエスト、内容の割に報酬が良いですね」
探索クエスト:廃城の調査(調査隊への参加)
内容:アベルハースト城跡に潜む魔物調査にご協力ください。
報酬:一人金貨2枚
備考:女性冒険者限定
ユリアスがクエスト依頼書を取り上げると、他の全員が取り囲んで検討を始めました。
「女性冒険者限定ということは、キモヲタ様が参加できないですね」
ため息をつくユリアスに「お前もな」などとツッコム野暮な仲間はいませんでした。白バラ騎士団でもユリアスは完全に女性扱いであり、セリア曰く、
「着替えも入浴も、姫隊長は私たちと一緒よ。確かに身体は男なんだけど、そのことを忘れさせるほど動きが女性そのものなのよ。それで一番大事なことは、姫隊長は受け専よ」
ということのようでした。それはこのパーティー内でも同じことで、ユリアスはセリアやエルミアナと一緒に着替えたり入浴したりしています。
いまではキモヲタも、そのことに慣れてしまっていました。なので自然な流れで、このクエストの条件で除外されるのは自分だけだと思っていたのでした。
「なんと我輩だけ仲間外れ!? なんてダダをこねたりはしないでござるよ。どうぞみんなで行ってきてくだされ。我輩は宿でのんびり休ませてもらうでござる。デュフコポー」
「あー、キモヲタだけ楽しようとしてる! ズルイー!」
「ぐふふ。条件がそうなってるので仕方ないのでござる。別にサボろうとしてるわけではござらんよ。フォカヌポー」
キーラとキモヲタがじゃれ合っている横で、エレナがユリアスに言いました。
「この条件だとアタシも参加できないよ。冒険者じゃないし」
「そうでしたか。旅慣れているご様子でしたので、てっきり冒険者なのかと。あっ、先ほどの冒険者パーティー登録でエレナも一緒に申請してしまいました。申し訳ありません」
ユリアスがエレナに向って頭を深く下げました。
エレナは手をひらひらとさせながら、
「別にかまわないけど、アタシに冒険者の経験も知識もないから戦力にはなれないと思うわ」
「キモヲタ様とエレナ殿には残っていただいて、私を含めて四人でクエストを受けるとなると金貨8枚ですか」
「十分ね。詳しい話を聞いてみましょう」
セリアがユリアスを促すと、ユリアスはクエスト依頼書を持ってギルドの受付に向かいました。
受付の説明によるとこのクエストは、廃城に吸血鬼ストリゴイカが住み着いているという噂の真偽を調査するというもの。
その噂は、廃城を訪れた者や旅人が行方不明になるというものでした。最近になって近くにある村の住人が惨殺死体が発見され、その遺体に吸血の痕が残されていたことから、ギルドに調査依頼が出されたのでした。
「ストリゴイカは男性に怨みを持って亡くなった女性が呪いによって復活した吸血鬼。主に男性を襲うとされていることから、女性冒険者に限定しての調査となっているようです」
受付から戻ってきたユリアスがクエストの詳細を話すのを聞いていたキモヲタ。
(女性の吸血鬼……ちょっと見てみたい気がするでござるな。美少女吸血鬼などは、ぜひ我輩のハーレムに一人加えたいところでござる)
キモヲタの表情を見たエルミアナが、キモヲタが不埒なことを考えていることを見抜いて言いました。
「大抵の吸血鬼は、悍ましい化け物の姿をしているものです。私も何度か遭遇したことがありますが、その全部が人間サイズの蝙蝠でした。美しい女性が迫ってくるなどとは妄想しない方がいいですよ。キモヲタ殿」
一同がキモヲタにジト目を向ける中、セリアだけは何か物思いにふけっているようでした。
「怨みを持って亡くなった女の吸血鬼ね……」
吸血鬼ストリゴイカの話が出たとき、セリアの瞳に燃える青い焔が強く揺らめいたことには、誰一人として気づくことはありませんでした。
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる