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第107話 廃城アベルハーストの罠
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廃城アベルハーストに忍び込んだ調査団とユリアスたち。
警戒のためにクレイモアを構えるユリアス。レイピアを抜き放ったエルミアナ。セリアは刀の柄に手をかけ、キーラは二本のナイフを逆手に持って警戒していました。
ところがボルギナンドと調査団の男たちは、武器を構えることなく散歩でもするかのような気楽さで、城の入り口から歩いていきます。
「警戒しないの?」
怪しんだセリアがそう声を掛けると、ボルギナンドは笑顔で答えました。
「えっ? あぁ、ボクたちの役割は、魔物を引きつけるておくことだからね。吸血鬼が出たら逃げ回るから、その間に調査の方よろしく頼むよ」
「なるほど。了解しました」
ユリアスが返事をしました。
セリアといえばボルギナンドの声に軽薄さを感じ、柳眉を逆立てて抗議しようとしたものの、途中で思いとどまりました。
(吸血鬼なのかはわからないけれど、ここに何かいるのは間違いなさそうね)
セリアは城内に微かな妖気を感じていました。それはほとんど直感の類に過ぎませんでした。しかしセリアはこれまでの経験から、こうした直感に従う方が生き残れる確率がより高くなることを知っていたのです。
やがてユリアスたちは城の扉に到着しました。
「それじゃ、俺たちはここで魔物の注意を引いておくから、お嬢様方は城内に!」
「わかりました。中の安全が確認できたら声を掛けます」
そしてユリアスたちは城内へ足を踏み入れました。
暗い広間に入ったユリウスたちは、手にしていたカンテラを掲げて周囲の様子を確認します。
正面にある大きな扉とその脇にある小さな扉。部屋の左右にある扉。そのいずれもが、厚い木の板で打ち付けられて開くことができないようになっていました。
「なんだこれは……」
ユリアスがつぶやきます。エルミアナが近くの扉に近づいて、扉が頑丈に封じられていることを確認しました。
「まるで、この広間に何かを閉じ込めようとしていたかのようですね」
エルミアナの言葉を聞いて、ハッとしたセリアが入り口を振り返ります。
バタンッ!
それは城内に入ってきたときの扉が閉じられた音でした。
パタンッ!
突然、キーラが床に崩れ落ちました。
「キーラ殿! えっ……」
パタンッ!
キーラに駆け寄ろうとしたエルミアナが途中で足をもつれさせ、床に転げ落ちました。
キーラもエルミアナも、ユリアスやセリアに口を動かして何かを訴えかけようとしています。しかし、声は出てきませんでした。
「隊長! これは罠です! 私たちは毒を……」
セリアが床に崩れ落ちました。
「セリア! エルミアナ! キーラ!」
ユリアスはセリアの下に駆け寄ると、彼女を引き起こそうとしました。
「なっ……身体が痺れて……」
しかし、そのユリアスも途中でその場に崩れ落ちてしまうのでした。
それからしばらくして、入り口の扉を外から叩く音が聞こえてきました。
ドンドン! ドンドン!
「もしもーし! どなたかいらっしゃいますかー! 俺様がいらっしゃいましたがー?」
ボルギナンドの声に続いて、ギャハハと下品と笑う男たちの声が響いてきました。
ガタガタッ! ドンッ!
入り口の扉が音を立てて開かれ、広間にボルギナンドと彼の仲間たちが入ってきます。彼らは、地面に倒れているユリアスたちを広間の中央に集めると、縄を使って拘束しました。
「その黒髪とエルフは魔法を使うらしいから、口もふさいでおけ」
ボルギナンドが命じると、仲間たちはユリアスとエルミアナに猿ぐつわをしました。
「「!!」」
ユリアスとキーラが怒りの声をあげようとしましたが、口が小さく動くだけで声はまったく出ませんでした。
ボルギナンドがニヤニヤ笑いを浮かべながら、セリアの前に立って彼女を見下ろします。
「色々と聞きたいことはあるだろうが……。そうだな、まずお前たちが痺れて動けなくなったのは、果実ジュースに痺れ薬を混ぜていたからだ。ゆっくりと効いてくるやつだな」
ユリアスたちの目が大きく見開かれました。ボルギナンドはその場にしゃがみ込むと、セリアの顔を覗き込みました。
「あぁ、お前に最初に渡した杯には薬は入ってなかったよ。薬が入ったのは後から注いだ方だ、ほら見てみろよ」
ボルギナンドは果実ジュースが入った水筒を取り出し、セリアに見せました。それを見たセリアの目が一瞬大きく開かれ、その後、憎々し気にボルギナンドを睨みつけるのでした。
水筒の口を見ると真ん中に仕切りがありました。
「この水筒には普通のジュースと薬入りの両方が入っているんだよ。どちらを上にするかで、注ぐものを変えられるってことさ」
ボルギナンドは水筒を投げ捨てると、片手でセリアの胸を乱暴に揉みしだきながら、醜く歪んだ笑みを浮かべます。
「これから俺たちがお前らをどうするのかについては、説明なんていらないよなぁ? まぁ細かく説明してやってもいいけどぉ?」
「「ギャハハハハ!」」
廃城の広間に、男たちがゴブリンのような哄笑が響き渡るのでした。
警戒のためにクレイモアを構えるユリアス。レイピアを抜き放ったエルミアナ。セリアは刀の柄に手をかけ、キーラは二本のナイフを逆手に持って警戒していました。
ところがボルギナンドと調査団の男たちは、武器を構えることなく散歩でもするかのような気楽さで、城の入り口から歩いていきます。
「警戒しないの?」
怪しんだセリアがそう声を掛けると、ボルギナンドは笑顔で答えました。
「えっ? あぁ、ボクたちの役割は、魔物を引きつけるておくことだからね。吸血鬼が出たら逃げ回るから、その間に調査の方よろしく頼むよ」
「なるほど。了解しました」
ユリアスが返事をしました。
セリアといえばボルギナンドの声に軽薄さを感じ、柳眉を逆立てて抗議しようとしたものの、途中で思いとどまりました。
(吸血鬼なのかはわからないけれど、ここに何かいるのは間違いなさそうね)
セリアは城内に微かな妖気を感じていました。それはほとんど直感の類に過ぎませんでした。しかしセリアはこれまでの経験から、こうした直感に従う方が生き残れる確率がより高くなることを知っていたのです。
やがてユリアスたちは城の扉に到着しました。
「それじゃ、俺たちはここで魔物の注意を引いておくから、お嬢様方は城内に!」
「わかりました。中の安全が確認できたら声を掛けます」
そしてユリアスたちは城内へ足を踏み入れました。
暗い広間に入ったユリウスたちは、手にしていたカンテラを掲げて周囲の様子を確認します。
正面にある大きな扉とその脇にある小さな扉。部屋の左右にある扉。そのいずれもが、厚い木の板で打ち付けられて開くことができないようになっていました。
「なんだこれは……」
ユリアスがつぶやきます。エルミアナが近くの扉に近づいて、扉が頑丈に封じられていることを確認しました。
「まるで、この広間に何かを閉じ込めようとしていたかのようですね」
エルミアナの言葉を聞いて、ハッとしたセリアが入り口を振り返ります。
バタンッ!
それは城内に入ってきたときの扉が閉じられた音でした。
パタンッ!
突然、キーラが床に崩れ落ちました。
「キーラ殿! えっ……」
パタンッ!
キーラに駆け寄ろうとしたエルミアナが途中で足をもつれさせ、床に転げ落ちました。
キーラもエルミアナも、ユリアスやセリアに口を動かして何かを訴えかけようとしています。しかし、声は出てきませんでした。
「隊長! これは罠です! 私たちは毒を……」
セリアが床に崩れ落ちました。
「セリア! エルミアナ! キーラ!」
ユリアスはセリアの下に駆け寄ると、彼女を引き起こそうとしました。
「なっ……身体が痺れて……」
しかし、そのユリアスも途中でその場に崩れ落ちてしまうのでした。
それからしばらくして、入り口の扉を外から叩く音が聞こえてきました。
ドンドン! ドンドン!
「もしもーし! どなたかいらっしゃいますかー! 俺様がいらっしゃいましたがー?」
ボルギナンドの声に続いて、ギャハハと下品と笑う男たちの声が響いてきました。
ガタガタッ! ドンッ!
入り口の扉が音を立てて開かれ、広間にボルギナンドと彼の仲間たちが入ってきます。彼らは、地面に倒れているユリアスたちを広間の中央に集めると、縄を使って拘束しました。
「その黒髪とエルフは魔法を使うらしいから、口もふさいでおけ」
ボルギナンドが命じると、仲間たちはユリアスとエルミアナに猿ぐつわをしました。
「「!!」」
ユリアスとキーラが怒りの声をあげようとしましたが、口が小さく動くだけで声はまったく出ませんでした。
ボルギナンドがニヤニヤ笑いを浮かべながら、セリアの前に立って彼女を見下ろします。
「色々と聞きたいことはあるだろうが……。そうだな、まずお前たちが痺れて動けなくなったのは、果実ジュースに痺れ薬を混ぜていたからだ。ゆっくりと効いてくるやつだな」
ユリアスたちの目が大きく見開かれました。ボルギナンドはその場にしゃがみ込むと、セリアの顔を覗き込みました。
「あぁ、お前に最初に渡した杯には薬は入ってなかったよ。薬が入ったのは後から注いだ方だ、ほら見てみろよ」
ボルギナンドは果実ジュースが入った水筒を取り出し、セリアに見せました。それを見たセリアの目が一瞬大きく開かれ、その後、憎々し気にボルギナンドを睨みつけるのでした。
水筒の口を見ると真ん中に仕切りがありました。
「この水筒には普通のジュースと薬入りの両方が入っているんだよ。どちらを上にするかで、注ぐものを変えられるってことさ」
ボルギナンドは水筒を投げ捨てると、片手でセリアの胸を乱暴に揉みしだきながら、醜く歪んだ笑みを浮かべます。
「これから俺たちがお前らをどうするのかについては、説明なんていらないよなぁ? まぁ細かく説明してやってもいいけどぉ?」
「「ギャハハハハ!」」
廃城の広間に、男たちがゴブリンのような哄笑が響き渡るのでした。
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