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第173話 キモヲタ男爵 vs 連邦貴族議員
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ソープランド建設中の現場に無断で押し入り、作業中のドワーフたちの邪魔をして騒ぎ立てていた連邦貴族議員フォンベルト。
「なっ!? どうしてこんなところにオークがいる!?」
背後から現れたキモヲタを見て、馬上から大声で失礼なことを叫びます。
しかし、キモヲタはとくに腹を立てた様子も見せず、落ち着いてアーシェの生乳搾りラッシーを一口飲みました。
「我輩はオークではござらん。このソープランド建設の総責任者であるアシハブア王国のキモヲタ名誉男爵でござる。貴殿こそ何者でござるか。我輩の敷地で騒ぎを起こすのは勘弁ねがいたいでござる」
「名誉男爵だと? フンッ、どうせ成り上がり者であろう」
相手が貴族だと知って、長剣に掛けていた手を戻すフォンベルトでしたが、その傲慢な態度自体に変化はありませんでした。
「私は連邦貴族議員のフォンベルト。昨今、この首都に出没している仮面の者を捜している。北西区のこの辺りで目撃したという報告があり、こうして調査をしているのだ」
「ふむ。そうでござったか。それでこの建物を調査すると? 先に我輩に言っていただければ許可したでござるが……」
「私は連邦貴族議員だぞ! 連邦内のどこであろうと足を踏み入れることが許されているのだ! まさか貴殿はそんなことも知らんのか!?」
そんなことも知らないキモヲタでしたが、とりあえず答える前に一角牛の焼き串の残りを一口で頬張ります。
実はキモヲタ、この連邦貴族議員とシスター・エヴァが敷地入り口で押し問答をしているという報せを受けてやってきていました。
慌てて駆けつけたため、一角牛の焼き串を手にしたままだったキモヲタは、とりあえず先に焼き串を処することにしたのでした。
ムシャムシャ。
人と話をしているときに焼き串を頬張る人間を生まれて初めて見たフォンベルトは、呆気にとられていました。
キモヲタとしては、人と話す前にちゃんと食事はすませておかなければという、キモヲタ流の礼儀を尽くしたつもりだったのでした。
ゴックン。
「き、貴様……」
キモヲタ流のマナーなど通じるはずもないフォンベルトが、顔を真っ赤にして身体を震わせます。
それでも剣に手を掛けなかったのは、かりにもキモヲタが名誉男爵という爵位を有しているからでした。
それは、普段から権威と序列でしか物事を図ることのないフォンベルトだからこそ働いた抑制だったのでした。
ちなみにキーラやエルミアナであれば「失礼でしょ!」とキモヲタの頭を叩いていたことでしょう。
「許可するでござる!」
「!?」
フォンベルトが怒り出す機先を制して、キモヲタが大きな声で建物調査の許可を出しました。
「存分にこの建物の調査を行ってくだされ」
それを聞いて慌てたのはドワーフたちでした。
彼らとしては有能な働き手であるラミアの眠りを妨げたくないということだけでなく、この傲慢な連邦貴族議員に存在を知られたくなかったのです。
そもそもこの建物はシスター・エヴァが企画したキモヲタへの内緒のプレゼント。本来であればキモヲタにも隠しておきたかったものでした。
この騒動によってキモヲタの目に入ってしまったうえ、調査まで入るとなれば、さすがにこの建物のことをキモヲタに説明せざる得ません。
しかし、若くて美しいラミアたち存在は「絶対にキモヲタから隠しておくように!」と、シスター・エヴァとエルミアナとユリアスとエレナとキーラと、とりあえずキーラの言うことに追従するソフィアから固く念を押されているのでした。
「キ、キモヲタ様、この建物は内密に立てられているものでして、その……調査が入るのは……」
慌てるドワーフを手で制止して、キモヲタは首を左右に振りました。
「そうであっても、連邦の議員がこうして調査に入るというからには止めるわけにもいかんでござろう」
「し、しかし……」
キモヲタは困惑するドワーフの手に、一角牛の焼き串の串が入ったアーシェの生乳搾りラッシーの空カップ手渡すと、その肩をポンと叩きました。
「まぁまぁ、ここは我輩に任せるでござる」
そして馬上の連邦貴族議員に向って声をかけました。
「議員殿! どうぞ好きに調査してもらって構わんでござるよ!」
「フンッ! 言われるまでもないわ!」
キモヲタに苦々しい顔をむけていたフォンベルトは、馬を返して建物へと向かいました。兵士たちもそれに続きます。
「キ、キモヲタ様……実はあの中には……」
貴族に先に見つかるより先に、キモヲタに知らせておくべきだと考えたドワーフが、そこまで口にしたそのとき――
「ハッ!」
フォンベルトの背中をじっと見据えてきたキモヲタが、小さく気合を放ちました。
「!?」
次の瞬間、馬上のフォンベルトに異変が起こります。
「かかか、痒い! 痒い! 痒い!」
馬の鞍にお尻を擦り付けはじめたフォンベルト。
「痒い! 痒い! 痒い! 尻が痒ぃぃいいい!」
それでは十分に痒みが解消できず、馬から飛び降ります。
さっと周囲に目を走らせたフォンベルトは、近くに横たえられていた角材の山に目を付けました。
「あ、あれだ痒い痒い!」
角材に駆け寄ったフォンベルトが、その角にお尻を擦り付け始めます。角のおかげでフォンベルトはピンポイントに痒いところが掛けるようになりました。
「はぁぁああ! 気持ちぃいい! お尻の痒いところが掻けるの超気持ちいぃぃ!」
と言いながら、ひたすら角材にお尻を擦り付けるのでした。
それから約2時間。
随行していた兵士たちが慌てて作った布の仕切りの中で、フォンベルトはお尻を掻き続けたのでした。
「なっ!? どうしてこんなところにオークがいる!?」
背後から現れたキモヲタを見て、馬上から大声で失礼なことを叫びます。
しかし、キモヲタはとくに腹を立てた様子も見せず、落ち着いてアーシェの生乳搾りラッシーを一口飲みました。
「我輩はオークではござらん。このソープランド建設の総責任者であるアシハブア王国のキモヲタ名誉男爵でござる。貴殿こそ何者でござるか。我輩の敷地で騒ぎを起こすのは勘弁ねがいたいでござる」
「名誉男爵だと? フンッ、どうせ成り上がり者であろう」
相手が貴族だと知って、長剣に掛けていた手を戻すフォンベルトでしたが、その傲慢な態度自体に変化はありませんでした。
「私は連邦貴族議員のフォンベルト。昨今、この首都に出没している仮面の者を捜している。北西区のこの辺りで目撃したという報告があり、こうして調査をしているのだ」
「ふむ。そうでござったか。それでこの建物を調査すると? 先に我輩に言っていただければ許可したでござるが……」
「私は連邦貴族議員だぞ! 連邦内のどこであろうと足を踏み入れることが許されているのだ! まさか貴殿はそんなことも知らんのか!?」
そんなことも知らないキモヲタでしたが、とりあえず答える前に一角牛の焼き串の残りを一口で頬張ります。
実はキモヲタ、この連邦貴族議員とシスター・エヴァが敷地入り口で押し問答をしているという報せを受けてやってきていました。
慌てて駆けつけたため、一角牛の焼き串を手にしたままだったキモヲタは、とりあえず先に焼き串を処することにしたのでした。
ムシャムシャ。
人と話をしているときに焼き串を頬張る人間を生まれて初めて見たフォンベルトは、呆気にとられていました。
キモヲタとしては、人と話す前にちゃんと食事はすませておかなければという、キモヲタ流の礼儀を尽くしたつもりだったのでした。
ゴックン。
「き、貴様……」
キモヲタ流のマナーなど通じるはずもないフォンベルトが、顔を真っ赤にして身体を震わせます。
それでも剣に手を掛けなかったのは、かりにもキモヲタが名誉男爵という爵位を有しているからでした。
それは、普段から権威と序列でしか物事を図ることのないフォンベルトだからこそ働いた抑制だったのでした。
ちなみにキーラやエルミアナであれば「失礼でしょ!」とキモヲタの頭を叩いていたことでしょう。
「許可するでござる!」
「!?」
フォンベルトが怒り出す機先を制して、キモヲタが大きな声で建物調査の許可を出しました。
「存分にこの建物の調査を行ってくだされ」
それを聞いて慌てたのはドワーフたちでした。
彼らとしては有能な働き手であるラミアの眠りを妨げたくないということだけでなく、この傲慢な連邦貴族議員に存在を知られたくなかったのです。
そもそもこの建物はシスター・エヴァが企画したキモヲタへの内緒のプレゼント。本来であればキモヲタにも隠しておきたかったものでした。
この騒動によってキモヲタの目に入ってしまったうえ、調査まで入るとなれば、さすがにこの建物のことをキモヲタに説明せざる得ません。
しかし、若くて美しいラミアたち存在は「絶対にキモヲタから隠しておくように!」と、シスター・エヴァとエルミアナとユリアスとエレナとキーラと、とりあえずキーラの言うことに追従するソフィアから固く念を押されているのでした。
「キ、キモヲタ様、この建物は内密に立てられているものでして、その……調査が入るのは……」
慌てるドワーフを手で制止して、キモヲタは首を左右に振りました。
「そうであっても、連邦の議員がこうして調査に入るというからには止めるわけにもいかんでござろう」
「し、しかし……」
キモヲタは困惑するドワーフの手に、一角牛の焼き串の串が入ったアーシェの生乳搾りラッシーの空カップ手渡すと、その肩をポンと叩きました。
「まぁまぁ、ここは我輩に任せるでござる」
そして馬上の連邦貴族議員に向って声をかけました。
「議員殿! どうぞ好きに調査してもらって構わんでござるよ!」
「フンッ! 言われるまでもないわ!」
キモヲタに苦々しい顔をむけていたフォンベルトは、馬を返して建物へと向かいました。兵士たちもそれに続きます。
「キ、キモヲタ様……実はあの中には……」
貴族に先に見つかるより先に、キモヲタに知らせておくべきだと考えたドワーフが、そこまで口にしたそのとき――
「ハッ!」
フォンベルトの背中をじっと見据えてきたキモヲタが、小さく気合を放ちました。
「!?」
次の瞬間、馬上のフォンベルトに異変が起こります。
「かかか、痒い! 痒い! 痒い!」
馬の鞍にお尻を擦り付けはじめたフォンベルト。
「痒い! 痒い! 痒い! 尻が痒ぃぃいいい!」
それでは十分に痒みが解消できず、馬から飛び降ります。
さっと周囲に目を走らせたフォンベルトは、近くに横たえられていた角材の山に目を付けました。
「あ、あれだ痒い痒い!」
角材に駆け寄ったフォンベルトが、その角にお尻を擦り付け始めます。角のおかげでフォンベルトはピンポイントに痒いところが掛けるようになりました。
「はぁぁああ! 気持ちぃいい! お尻の痒いところが掻けるの超気持ちいぃぃ!」
と言いながら、ひたすら角材にお尻を擦り付けるのでした。
それから約2時間。
随行していた兵士たちが慌てて作った布の仕切りの中で、フォンベルトはお尻を掻き続けたのでした。
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