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第193話 無職になった? キモヲタみたいに?
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巨大仮面男との戦いから三日後。
女神報酬がたんまり入って、今は懐に余裕があるキモヲタは、一日のほとんどを天幕にこもってネットショップの画面とにらめっこしていました。
ラミア女子たちを交えたカレーパーティーで、手持ちのカレーがすべてなくなってしまったキモヲタ。ナイトタイムラバーの誤発注カテゴリからカレーを再注文しているのでした。
「ラミア女子の細い身体のどこにカレーが消えていくのでござろうか。やはりあのものごっついパイオツとか。もしやあの蛇体の中身はほとんど胃袋なのではござらんか」
ぶつぶつと独り言をつぶやくキモヲタの耳元で、誰かがそっと囁きかけてきました。
「まぁ、キモヲタ様ったら……。確かにわたくし達は大食いですが、そんな奇妙な身体の構造はしておりませんわよ。……たぶん」
「はわっ!?」
驚いて振り返ったキモヲタの視界が、巨大なパイオツで埋め尽くされます。
「この見事にハリのあるFカップ……エレノーラ殿。……とラモーネ殿!?」
「はい、エレノーラです。こんにちはキモヲタ様!」
「ごきげんよう、キモヲタ殿」
ラミア女子二大Fカップのエレノーラとラモーネが、キモヲタを訪ねてやってきていたのでした。
ぶつぶつと独り言をつぶやいているのを聞かれたキモヲタは、当然のように激しくキョドってしまいました。
そんなキモヲタを見て、クールビューティー・ラミア女子、ラモーネの切れ長の瞳に鋭い光が走ります。
「ところで、キモヲタ殿は何をなされていたのですか?」
ラミア特有の高い位置から見下ろしてくる視線を受けたキモヲタ。顔を真っ赤にしてアワアワしつつも、心のなかでは喜びを感じている始末。
「踏んでくだされ、女王様……」
「女王様?」
「って、ハッ!? 我輩いま何を!?」
一瞬で土下座していたキモヲタに困惑するエレノーラとラモーネ。そんな彼女たちの視線に、さらにキョドってしまうキモヲタなのでした。
「あっ、えっ……と、その……カレーの注文をですな……」
ネットショップ画面を指で示すキモヲタでしたが、その画面が自分以外の者には見えないことを思い出して、さらに慌ててしまいます。
ジィィィィィ。
ジィィィィィ。
ジト目の美女二人による見下し目線など、いつもならご褒美でしかないのですが、今ばかりは針のむしろにでも入っているかのような心持ちのキモヲタでした。
下手な説明しようものなら、二人から「頭のおかしいオーク」と思われかねません。どうしたものかとキモヲタが思案していると。
「あっ!」
ジッとキモヲタを見ていたエレノーラが、何かを思い出したようにポンッと手を叩きました。
「キモヲタ様は精霊さんとお話してたのですね! ほらラモーネ、皇帝陛下もよくこういう感じになることがあったじゃないですか」
「そういえば確かに。キモヲタ殿も異世界人ということでしたし、奇妙な行動に走ることがあるのはタヌァカ様と同じなのかもしれませんね」
そう言って二人は何かに納得したように頷きあっていました。
「そ、それでお二方、我輩に何かご用でも?」
「そうでしたわ! キモヲタ様に面会したいという方をお連れしましたの」
「面会?」
キモヲタが誰の事かと首をひねるのを見たラモーネが、天幕入り口に掛けられた布を引き上げながら言いました。
「そう。地下水道でキーラとキモヲタ殿が命を救った兵士よ」
入り口には、キモヲタの【足ツボ治癒】によって失った足を取り戻した兵士、シモン(27歳)が立っていました。
「よぉ、キモヲタの旦那!」
~ シモンの報告 ~
シモンがお礼に来たというので、キモヲタはキーラも呼んで話を聞くことにしました。
キーラがやってくるとシモンは、頭を深く下げて二人にお礼を述べました。
「キモヲタ男爵、キーラ嬢ちゃん。自分たちの危険を顧みずに、あの化け物から俺を助けてくれたこと、心から感謝する! 本当にありがとうな!」
そう言ってシモンはそのまま土下座すると、頭を地面に擦り付け始めました。
「ちょ、ちょっと兵士さん! もういいから! ボクたち、兵士さんの気持ちは十分に受け取ったよ。ねっ? キモヲタ?」
キーラに視線を向けられたキモヲタは、ブンブンと頭を縦に振り続けます。しかし、シモンは頭を伏せたまま言いました。
「本当なら、沢山の金貨で礼をしたいところだが、あいにく俺にはいま金がねぇんだ。しかも、さっき無職になっちまった。だから……別の形で恩返しさせて欲しい」
「無職になった? キモヲタみたいに?」
「ちょ、キーラたん! 我輩は……その、いろいろやってるでござろう! えっと……なんでござったか……その……ほ、ほら冒険者とか!」
そんな二人の漫才を無視して、ラモーネがシモンに問いかけました。
「あなたは兵士を辞めたということですか? それも今日?」
シモンは顔をあげるとキモヲタたちに向って言いました。
「ええ、きっちり辞めてやりましたよ! 一秒たりともあんなバカの下で働いてられませんからね! 大見栄切って出てきてやりましたよ!」
ニッカリと笑顔になったシモン(27歳)は、栗毛の頭を掻きながら、
「それで旦那、実は相談してぇことがありまして……」
そう言って地面に正座したままシモンは、青い瞳をキモヲタに向けるのでした。
女神報酬がたんまり入って、今は懐に余裕があるキモヲタは、一日のほとんどを天幕にこもってネットショップの画面とにらめっこしていました。
ラミア女子たちを交えたカレーパーティーで、手持ちのカレーがすべてなくなってしまったキモヲタ。ナイトタイムラバーの誤発注カテゴリからカレーを再注文しているのでした。
「ラミア女子の細い身体のどこにカレーが消えていくのでござろうか。やはりあのものごっついパイオツとか。もしやあの蛇体の中身はほとんど胃袋なのではござらんか」
ぶつぶつと独り言をつぶやくキモヲタの耳元で、誰かがそっと囁きかけてきました。
「まぁ、キモヲタ様ったら……。確かにわたくし達は大食いですが、そんな奇妙な身体の構造はしておりませんわよ。……たぶん」
「はわっ!?」
驚いて振り返ったキモヲタの視界が、巨大なパイオツで埋め尽くされます。
「この見事にハリのあるFカップ……エレノーラ殿。……とラモーネ殿!?」
「はい、エレノーラです。こんにちはキモヲタ様!」
「ごきげんよう、キモヲタ殿」
ラミア女子二大Fカップのエレノーラとラモーネが、キモヲタを訪ねてやってきていたのでした。
ぶつぶつと独り言をつぶやいているのを聞かれたキモヲタは、当然のように激しくキョドってしまいました。
そんなキモヲタを見て、クールビューティー・ラミア女子、ラモーネの切れ長の瞳に鋭い光が走ります。
「ところで、キモヲタ殿は何をなされていたのですか?」
ラミア特有の高い位置から見下ろしてくる視線を受けたキモヲタ。顔を真っ赤にしてアワアワしつつも、心のなかでは喜びを感じている始末。
「踏んでくだされ、女王様……」
「女王様?」
「って、ハッ!? 我輩いま何を!?」
一瞬で土下座していたキモヲタに困惑するエレノーラとラモーネ。そんな彼女たちの視線に、さらにキョドってしまうキモヲタなのでした。
「あっ、えっ……と、その……カレーの注文をですな……」
ネットショップ画面を指で示すキモヲタでしたが、その画面が自分以外の者には見えないことを思い出して、さらに慌ててしまいます。
ジィィィィィ。
ジィィィィィ。
ジト目の美女二人による見下し目線など、いつもならご褒美でしかないのですが、今ばかりは針のむしろにでも入っているかのような心持ちのキモヲタでした。
下手な説明しようものなら、二人から「頭のおかしいオーク」と思われかねません。どうしたものかとキモヲタが思案していると。
「あっ!」
ジッとキモヲタを見ていたエレノーラが、何かを思い出したようにポンッと手を叩きました。
「キモヲタ様は精霊さんとお話してたのですね! ほらラモーネ、皇帝陛下もよくこういう感じになることがあったじゃないですか」
「そういえば確かに。キモヲタ殿も異世界人ということでしたし、奇妙な行動に走ることがあるのはタヌァカ様と同じなのかもしれませんね」
そう言って二人は何かに納得したように頷きあっていました。
「そ、それでお二方、我輩に何かご用でも?」
「そうでしたわ! キモヲタ様に面会したいという方をお連れしましたの」
「面会?」
キモヲタが誰の事かと首をひねるのを見たラモーネが、天幕入り口に掛けられた布を引き上げながら言いました。
「そう。地下水道でキーラとキモヲタ殿が命を救った兵士よ」
入り口には、キモヲタの【足ツボ治癒】によって失った足を取り戻した兵士、シモン(27歳)が立っていました。
「よぉ、キモヲタの旦那!」
~ シモンの報告 ~
シモンがお礼に来たというので、キモヲタはキーラも呼んで話を聞くことにしました。
キーラがやってくるとシモンは、頭を深く下げて二人にお礼を述べました。
「キモヲタ男爵、キーラ嬢ちゃん。自分たちの危険を顧みずに、あの化け物から俺を助けてくれたこと、心から感謝する! 本当にありがとうな!」
そう言ってシモンはそのまま土下座すると、頭を地面に擦り付け始めました。
「ちょ、ちょっと兵士さん! もういいから! ボクたち、兵士さんの気持ちは十分に受け取ったよ。ねっ? キモヲタ?」
キーラに視線を向けられたキモヲタは、ブンブンと頭を縦に振り続けます。しかし、シモンは頭を伏せたまま言いました。
「本当なら、沢山の金貨で礼をしたいところだが、あいにく俺にはいま金がねぇんだ。しかも、さっき無職になっちまった。だから……別の形で恩返しさせて欲しい」
「無職になった? キモヲタみたいに?」
「ちょ、キーラたん! 我輩は……その、いろいろやってるでござろう! えっと……なんでござったか……その……ほ、ほら冒険者とか!」
そんな二人の漫才を無視して、ラモーネがシモンに問いかけました。
「あなたは兵士を辞めたということですか? それも今日?」
シモンは顔をあげるとキモヲタたちに向って言いました。
「ええ、きっちり辞めてやりましたよ! 一秒たりともあんなバカの下で働いてられませんからね! 大見栄切って出てきてやりましたよ!」
ニッカリと笑顔になったシモン(27歳)は、栗毛の頭を掻きながら、
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