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第206話 巨乳の前に男が二人、何も起きないはずもなく……
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「シ、シモン殿でござったか……。いきなり声をかけるものではござらん。心臓か口から出るところだったでござるよ」
「そいつは申し訳ねぇ。キーラお嬢とエルミアナの姉御から、旦那が屋敷で寂しがってるだろうから、これを持って戻るよう仰せつかりました」
そう言ってシモンは、ワインとサンドイッチ等の軽食が入ったカゴを、テーブルの上に置きました。
「それにしてもすげぇですね、この人形。まるで生きてるみたいだ」
ピー子を色々な角度で眺めながら、そのリアルさにいちいち嘆息するシモン。ふとキモヲタに真剣な眼差しを向けます。
「旦那……その……これって、旦那が扱ってる商品の一つなんですよね? って、ことはつまり……あっちの目的で使うものだったり……」
言い難そうに濁すシモンに、間髪入れず言葉をつぎ足します。
「だったりするでござる!」
「で、ですよね! ですよねー!」
その瞬間、二人の心は通じ合ったのでした。
「だ、旦那……って、ことはですよ。……えっと、あそこの方はどうなってるんです?」
「我輩もまだじっくりと見てはござらぬが、商品説明を見る限りでは『リアル』ということでござったな」
「つ、つまり、マジもん?」
「マジもんでござる」
「……ゴクリ」※シモン
「……ゴクリ」※キモヲタ
「……」※シモン
「……ちょっと、見てみるでござるか?」
「ええ、覚悟を決めましょうや」
二人はピー子の前に腰をかがめると、そのスカートに指を掛けました。
「下着はつけてるんですかね?」
「つけてないはずでござる。最初に服を着せたのは我輩でござるが、正直よく覚えていないのでござるよ。なにぶん我輩チェリーボーイゆえ、彼女にメイド服を着せるので気持ちが一杯一杯。ほとんどの記憶が飛んでるでござる。それにもしかすると、後からエルミアナ殿あたりがシェンティを履かせているかもしれぬでござる」
「それじゃぁ、もしシェンティを履いていたら、それも……ということで」
「うむ。容赦なくひっぺ返すでござる。では参るでござるよ。3、2、1、ゼ……」
「キモヲタ様!? 何をしてるんですか!?」
「「うひぃいい」」
二人が振り返ると、そこにはユリアスが目を見開いて立っていたのでした。
「キモヲタさま! いくら人形とはいえ、本人の同意もなくそのような行為に及ぶのはどうかと思います」
珍しく怒っているユリアスを見て動揺するキモヲタ。どうやって人形から同意を得るのか、柳眉を寄せるユリアスに訊ねる勇気はなかったのでした。
~ キモヲタ転移の70年前 ~
女神ラーナリアが司るフィルモサーナ大陸。
その北東の端に伸びる半島の先には、二つの海流が南北に循環しています。
半島の先端にある港湾都市ローエンでは、この海流を使って古大陸との交易が行われていました。
キモヲタが転移してきた頃には、造船・航海技術の発達や、魔物を遠ざけるための大船団方式の採用などによって、航路の安全性が高まっておりました。
しかしそれでも一回一回の航海は、まさにイチかバチかの命懸けのものであることに変わりありません。
そのため難破した船の荷物が、流れ流れてフィルモサーナ大陸の東岸に流れ着くというのは、そう珍しいことではありませんでした。
ドラン公国の東海岸。
後にセイジュウ神聖帝国と人類軍が激突するドラン大平原があるこの場所に、赤く塗られた棺桶が流れ着いていました。
双月が輝く深夜の海岸には人の気配はありません。それどころか見渡す限り村も街も、漁火さえも見えませんでした。
ガタッ!
突然、棺桶が揺れたかと思うと、蓋が音を立てて開きました。
中から出て来たのは2つの人影。それは貴族のドレスに身を包んだ二人の少女の姿をしていました。
「ずいぶん揺れていたけど、もう新大陸についたのかしら? 船員さんたちの姿が見えないけど……」
青いドレスに身を包んだ少女が砂浜に立って、夜空を見上げました。月明りに照らされた長い緑髪と青い瞳が輝きます。
続いて砂浜へと降り立ったのは、長い銀髪を後ろで一つにまとめた赤いドレスの少女。
「やはり棺桶は二つにすべきだったのです。お姉ちゃんがお金をケチったりするから、私の身体はボロボロです」
「まぁまぁ。とりあえず、あの丘を登ってみましょう。私たちは確かローエンという街に到着しているはずよ」
静かに浜辺を歩き始める二人。
双月が彼女たちの肌をハッキリと照らすようになると、二人の白い肌にうっすらと木目が浮かんで見えるようになりました。
肌だけではなく、その首や腕、手や指の関節も人間のそれではありません。
そして赤いドレスの少女の肌のあちこちには、火に焼かれたのか、酷い焦げ目がついていました。
その少女に青いドレスの少女が語り掛けます。
「んーっ、どうも首の調子が良くないわ。棺桶の中であちこちぶつけちゃったからかな?」
スポンッ!
青いドレスの少女の頭が音を立てて首から抜けて、その両手に収まりました。首のない身体が、手に抱えた頭を振ったり叩いたりします。
二人の少女の身体は、球体関節人形そのものでした。
「そいつは申し訳ねぇ。キーラお嬢とエルミアナの姉御から、旦那が屋敷で寂しがってるだろうから、これを持って戻るよう仰せつかりました」
そう言ってシモンは、ワインとサンドイッチ等の軽食が入ったカゴを、テーブルの上に置きました。
「それにしてもすげぇですね、この人形。まるで生きてるみたいだ」
ピー子を色々な角度で眺めながら、そのリアルさにいちいち嘆息するシモン。ふとキモヲタに真剣な眼差しを向けます。
「旦那……その……これって、旦那が扱ってる商品の一つなんですよね? って、ことはつまり……あっちの目的で使うものだったり……」
言い難そうに濁すシモンに、間髪入れず言葉をつぎ足します。
「だったりするでござる!」
「で、ですよね! ですよねー!」
その瞬間、二人の心は通じ合ったのでした。
「だ、旦那……って、ことはですよ。……えっと、あそこの方はどうなってるんです?」
「我輩もまだじっくりと見てはござらぬが、商品説明を見る限りでは『リアル』ということでござったな」
「つ、つまり、マジもん?」
「マジもんでござる」
「……ゴクリ」※シモン
「……ゴクリ」※キモヲタ
「……」※シモン
「……ちょっと、見てみるでござるか?」
「ええ、覚悟を決めましょうや」
二人はピー子の前に腰をかがめると、そのスカートに指を掛けました。
「下着はつけてるんですかね?」
「つけてないはずでござる。最初に服を着せたのは我輩でござるが、正直よく覚えていないのでござるよ。なにぶん我輩チェリーボーイゆえ、彼女にメイド服を着せるので気持ちが一杯一杯。ほとんどの記憶が飛んでるでござる。それにもしかすると、後からエルミアナ殿あたりがシェンティを履かせているかもしれぬでござる」
「それじゃぁ、もしシェンティを履いていたら、それも……ということで」
「うむ。容赦なくひっぺ返すでござる。では参るでござるよ。3、2、1、ゼ……」
「キモヲタ様!? 何をしてるんですか!?」
「「うひぃいい」」
二人が振り返ると、そこにはユリアスが目を見開いて立っていたのでした。
「キモヲタさま! いくら人形とはいえ、本人の同意もなくそのような行為に及ぶのはどうかと思います」
珍しく怒っているユリアスを見て動揺するキモヲタ。どうやって人形から同意を得るのか、柳眉を寄せるユリアスに訊ねる勇気はなかったのでした。
~ キモヲタ転移の70年前 ~
女神ラーナリアが司るフィルモサーナ大陸。
その北東の端に伸びる半島の先には、二つの海流が南北に循環しています。
半島の先端にある港湾都市ローエンでは、この海流を使って古大陸との交易が行われていました。
キモヲタが転移してきた頃には、造船・航海技術の発達や、魔物を遠ざけるための大船団方式の採用などによって、航路の安全性が高まっておりました。
しかしそれでも一回一回の航海は、まさにイチかバチかの命懸けのものであることに変わりありません。
そのため難破した船の荷物が、流れ流れてフィルモサーナ大陸の東岸に流れ着くというのは、そう珍しいことではありませんでした。
ドラン公国の東海岸。
後にセイジュウ神聖帝国と人類軍が激突するドラン大平原があるこの場所に、赤く塗られた棺桶が流れ着いていました。
双月が輝く深夜の海岸には人の気配はありません。それどころか見渡す限り村も街も、漁火さえも見えませんでした。
ガタッ!
突然、棺桶が揺れたかと思うと、蓋が音を立てて開きました。
中から出て来たのは2つの人影。それは貴族のドレスに身を包んだ二人の少女の姿をしていました。
「ずいぶん揺れていたけど、もう新大陸についたのかしら? 船員さんたちの姿が見えないけど……」
青いドレスに身を包んだ少女が砂浜に立って、夜空を見上げました。月明りに照らされた長い緑髪と青い瞳が輝きます。
続いて砂浜へと降り立ったのは、長い銀髪を後ろで一つにまとめた赤いドレスの少女。
「やはり棺桶は二つにすべきだったのです。お姉ちゃんがお金をケチったりするから、私の身体はボロボロです」
「まぁまぁ。とりあえず、あの丘を登ってみましょう。私たちは確かローエンという街に到着しているはずよ」
静かに浜辺を歩き始める二人。
双月が彼女たちの肌をハッキリと照らすようになると、二人の白い肌にうっすらと木目が浮かんで見えるようになりました。
肌だけではなく、その首や腕、手や指の関節も人間のそれではありません。
そして赤いドレスの少女の肌のあちこちには、火に焼かれたのか、酷い焦げ目がついていました。
その少女に青いドレスの少女が語り掛けます。
「んーっ、どうも首の調子が良くないわ。棺桶の中であちこちぶつけちゃったからかな?」
スポンッ!
青いドレスの少女の頭が音を立てて首から抜けて、その両手に収まりました。首のない身体が、手に抱えた頭を振ったり叩いたりします。
二人の少女の身体は、球体関節人形そのものでした。
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