キモヲタ男爵奮戦記 ~ 天使にもらったチートなスキルで成り上がる……はずだったでござるよトホホ ~

帝国妖異対策局

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第213話 こいつキモ過ぎて草生えるwww

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~ 地下水道1F ~

 キモヲタたちがラミア女子たちと共に、地下水道の深い階層で巨大仮面男と戦っている頃、カガリビも地下水道のなかにいました。

 日中に移動する場合は、人の目に触れないように地下水道を使っていたのです。

 噂に聞く巨大地下貯水槽を一目見ようと、観光気分のカガリビは通路をのんびりと歩いていました。

 やたらと目につく黒スライムの核石めがけて、口から伸ばした触手による刺突を繰り返しながら、のんびりと歩いておりました。

 通路の大きさは場所によって様々なのですが、カガリビが歩いている地下貯水槽へ続く道は、人が馬に乗って通れるほどの大きさでした。

 ところどころに埋め込まれた魔鉱灯のうっすらとした明かりが、カガリビの銀の髪と紅玉の瞳を照らします。

「この通路の広さと天井が高さがあれば、馬に乗っても十分に通ることができそうです」

 そんな独り言を口にしたカガリビの耳……の穴から少し突き出ている触手が、音の波を感知しました。

 パカラッ! パカラッ! パカラッ! パカラッ! 

「何かしら、まるで馬の駆ける足音みたいな……って、馬!?」

 いくら通路が馬が通れるくらいの大きさとはいえ、まさか本当に馬が駆けてくるとは思わなかったカガリビ。あまりもの驚きに思わず眼球が飛び出てしまいました。

 慌てて目から伸ばした触手で眼球を掴み、元の位置に戻したカガリビ。 

「ヒヒィインン!」

「うわぁぁああああ!」

 その目の前で馬が転倒し、乗り手が投げ出されてしまいました。

 馬に乗っていた男は倒れた馬をそのまま放置して、カガリビの脇をすり抜けて逃げて行きます。

 逃げ去った男から注意を馬に戻そうと、カガリビが振り返った瞬間、

 ガブッ!

 仮面の男の巨大な頭が、馬の胴腹に喰らいついておりました。

「またですか……」

 巨大頭の仮面男とその後ろから現れた二体の仮面の男が、同時にカガリビに飛び掛かってきました。
 
「カガリビロケットパンチ&ヘッド!!」
 
 シュッ! シュッ! ドシュッ!

 カガリビの両腕から、貫手になった手首が飛び出して、二体の仮面男の顔面を貫きました。

 さらに正面の巨大頭を、カガリビの首から飛び出した頭が直撃します。さすがに貫手とは違って、カガリビヘッドは巨大頭にメリ込むまでにとどまりました。
 
 しかし次の瞬間、カガリビヘッドの目と口が大きく開かれ――

 ガリガリガリガリガリガリ!

 巨大頭を齧ってその中へともぐりこんでいきます。

 ガリガリガリガリガリガリ!
 
 三体の仮面の男は、

 ブルンッ!

 と身体を震わせると、たちまち萎んで、スルスルスルと通路の奥へと引き下がっていきました。

 カガリビの首と両手首も同じように、つながっていた触手を胴体に引き込んで、元の正しい位置に戻っていきました。

「まったく……どこもかしこも妖異だらけで、本当に迷惑です」

 仮面の男たちを撃退したカガリビは、地下貯水槽に対する興味を失ってしましました。

「はぁ……どうせこの先には、ああいうのが沢山いるのでしょう。観光はお姉ちゃんと合流してからにします。そうです。まずはお姉ちゃんを捜さなくては! まったくお姉ちゃんはもう! まったくもう!」

 ブツブツ言いながら、元来た道を引き返していくカガリビ。

 こうして――

 ここでカガリビが仮面の男を撃退していなければ、すぐに追いつかれて命を失っていたであろうアイザック・フォンベルト連邦騎士爵は、その命を長らえることができたのでした。
 


~ カザン王国の王城 控えの間 ~ 

「ハッ!? 我輩はどうしてこんなところに立っているでござる!? 今まで何をしてたでござるか!? 授与式はどうなったでござる!?」

 キモヲタが意識を取り戻したときには、無事に褒章授与式は終了していました。

 謁見の間に入るまでの記憶しかないキモヲタは、どうして自分が控えの間にいるのか理解できず混乱していました。

 キモヲタの意識が戻って来たことに気づいたユリアスが、キモヲタの肩を優しく撫でながら声をかけます。

「大丈夫ですよ、キモヲタ様。事前に何度も練習したとおり、名前を呼ばれたキモヲタ様は、ちゃんとカザン王からメープル褒章を受け取って……まぁ、少しヒヤッとした場面もありましたけど、作法通りの所作を行なっておられました。とてもご立派でしたよ!」

 ふと気づくとキモヲタの服の胸には、金で作られた大きな記章が付けられていました。

「い、いつの間に!?」

「そのメープル褒章は、アリエッタ姫殿下が付けてくださったのですよ。覚えていらっしゃらないのですか?」

「まったく覚えてござらん! お、お、お姫様がこれを我輩に……」

「そうですよ。何かお話されていたように見えましたが、アリエッタ様も楽しそうに笑っておられましたし……」

「それ絶対に『こいつキモ過ぎて草生えるwww』って笑いに決まってるござるよぉ……」

 前世から今までで含めて初めて目にする『お姫様』に超期待していたキモヲタ。

 しかし、その記憶も完全に飛んでしまっているうえ、何かしでかしてしまったかもしれないという状況に、キモヲタは「今すぐおうちに帰りたい気持ちMAX」に陥ってしまったのでした。

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