キモヲタ男爵奮戦記 ~ 天使にもらったチートなスキルで成り上がる……はずだったでござるよトホホ ~

帝国妖異対策局

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第237話 絶賛お尻グラインド中の三人

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 立ち眩みで崩れそうになったところを、キモヲタの腕にしがみついて堪えるアリエッタ姫。

「キ、キモヲタ男爵。これはいったい何が起こったというのでしょう。ど、どうか、今のわたくしが悪い夢を見ているのだとお答えになって……」

「アリエッタさま。実は我輩、このような状況を前にも見たことがあるのでござる。そう……あれは我が邸宅が完成する間際の頃、こちらのフォンベルト殿が我が家の前で同じような症状になっていたのでござる」

 震えるアリエッタ姫の手をそっと取って、キモヲタは演技力たっぷりに語り始めました。その白々しい演技を見たユリアスやエレナは、キモヲタに何か考えがあることを覚ってここは黙っておくことにしました。

「まぁ! それは本当ですの!?」

「はい。そのときもフォンベルト卿は、このようにお尻……おヒップを木に擦りつけてでござる。確かそのときは2時間ほどこうしていたという話を聞いているでござる」

「2時間!?」

 スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ!

 再び眩暈を起こして倒れそうになるアリエッタ姫。キモヲタの話が聞こえていたのか、絶賛お尻擦り付け中のモリトール姉弟も、目大きく見開いてキモヲタを見るのでした。

 スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ!

 キモヲタは彼らに聞こえるようにわざと大きな声を出して、アリエッタ姫に語り掛けます。

「アリエッタさま、ここは我輩に任せてくだされ」

「キモヲタ卿……」

 根拠はわからないものの、自信たっぷりに振る舞うキモヲタに、アリエッタ姫はすがるようなまなざしを向けるのでした。

 スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ!

 それどころか絶賛お尻スリスリ中の三人も、キモヲタに期待の目で見つめています。

 キモヲタは芝居がかった声と動作で、テキパキと指示を出し始めました。

「ユリアス殿! 急ぎ馬車の用意を! それと彼らがギリお尻を擦り付けられる丸太を用意してくだされ! 馬車の中でもお尻が掻けるようにするでござるよ!」

「30分……いえ、15分で用意します!」

 続いてキモヲタは絶賛お尻掻き放題中の三人に向き直ります。

「フォンベルト殿、確か前にこの症状が出た時は2時間程度で収まったと聞いていますが、それで間違いござらんか?」

 スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ!

 キモヲタの問いにフォンベルト議員は頭をガクガクと振りました。それを見たキモヲタはモリトール姉妹に顔を向けます。

「……ということでござる。とはいえ、大衆の面前で2時間も過ごすのはよろしくないでござろうから、馬車で皆様をお送りするでござるよ」

 頭をガクガクと振るモリトール姉弟。その瞳にはキモヲタに対する感謝の涙が溢れていました。

 スリスリッ! スリスリッ! スリスリッ!

「とはいえ馬車が用意できるまでの間、なんとかこのを誤魔化せねばなりませんな。なるべく大衆に皆様のがバレないようにするには、どうすればいいでござるかな~」

 仰々しい身振りで考え込むキモヲタ。アリエッタ姫と絶賛お尻グラインド中の三人の懇願するような瞳がキモヲタに向けられました。

「ハッ! そうでござる! ここにいるみんなで木を取り囲んで三人の姿を隠し、さらに歌を歌って声を掻き消すでござるよ!」

「「「!?」」」

 キモヲタの言っている意味がわからず呆気にとられているアリエッタ姫や周りの人々。

「さぁさぁ、早くするでござる! お貴族様たちにいつまでも恥を掻かせるのはよろしくないでござるよ!」

 キモヲタは急かすように声を上げて、木の周りを囲むように人の生垣を作らせるのでした。

「皆さま、隣の方と手をつないで、なるべくお三人の姿が隠れるように肩を寄せてくだされ!」

 あんまりキモヲタが急かすものですから、貴族や護衛騎士、ソープランドスタッフが身分を気にする余裕もなくお互いに手をつないで、木を取り囲んでいます。

 キモヲタもアリエッタ姫の手を握って、彼女と周りの人々に気持ちの余裕を与えることなく、立て続けに指示を出しました。
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