異世界転生ハーレムプラン～最強のスキルが【幼女化】ってマジですか？～

帝国妖異対策局

文字の大きさ

大中小

30 / 243

第30話　ハーレムパーティ３

しおりを挟む

　ライラに身勝手な欲望を叩きつけたステファンは、ベッドの端に腰かけ、また酒を煽っていた。

　ライラは静かに身を起こすと一礼をしてそのまま外に出て行った。しばらくすると宿の裏の井戸から水音が聞こえてきた。ライラが身体を洗っているのだろう。

　ステファンは知っていた。ライラが自分のことをずっと憎んでいることを知っていた。奴隷契約を解除すれば、彼女はすぐに去って行くだろう。

「どうせ、もう俺は一人なんだ。いや……今までだって一人だったんだろうな」

　ベッドに身を投げると生まれてから今までのことが走馬灯のように思い起こされる。そしてこれからのことを思う。

（楽園の門は閉ざされた。きっと死んだ仲間たちは門を越えて行っただろう。俺はもう会うことができない。スプリングス家の祖先たちもその門の向こうにいるのであれば、現実の実家と同じく、俺はもうその門をくぐることは許されまい）

（いっそのこと魔王軍の元へ行って、悪魔の手先として働いてやろうか）

　ステファンはそれが名案だと思ったが、失われた自分の左腕の先を見て自嘲する。

（こんな役立たずは悪魔からも断られるだろうな）

　だが悪魔への身売りという不信心な思い付きは、ステファンに意外な心の変化をもたらした。

　心の中のとばりが取り払われるかのように、ゴブリンから自分を助けてくれた亜人や獣人たちの姿が目に浮かぶ。

　それまでは彼の信仰心によって、ただの汚れた黒い影としか見えていなかった、ヴィルという白狼族の少年や、自分を洞窟から引き出してくれたシンイチという亜人とコボルトたち一人ひとりの顔が思い浮かんできたのだ。

　それと同時に彼らを凝り固まった偏見を通してのみ見ていた自分の醜い姿も思い起こされる。

（俺は……俺はバカだった。全部間違えてしまっていたんだ）

「うおぉぉぉぉぉぉぉ！」

　押し寄せてくる後悔と自分が犯してきた罪の重さに押しつぶされ、彼は激情に呑まれるのを止めることができなかった。涙がとめどなく溢れ、鼻水が垂れ、叫ぶ口からはヨダレが流れるままにした。するしかなかった。

「ご、ご主人さま！」
　
　ステファンの叫び声を聞いてライラは慌てて部屋に戻ってきた。しかし、泣き喚き続けるステファンに対し彼女はただオロオロと見守ることしかできなかった。

　ステファンがライラに気が付いたのは、宿の主人が叫び声に驚いて部屋に駆けつけてきたときだった。

「おいあんた大丈夫か！？」

「あ、ああぁ、大丈夫だ、騒ぎ立てて済まなかったな」

「本当に大丈夫なんだろうな」

「あぁ、もう出発するよ。迷惑かけたな」

　ステファンは宿屋の主人に金貨を１枚手渡した。

「こ、こんなに！？いや、こんなには貰えない」

「いいから、迷惑料だと思って受け取ってくれ」

　ステファンはすぐに身支度を始めた。今ではライラに手伝ってもらわないと自分の身支度も満足にできなかった。

「ライラ、奴隷商会へ行くぞ。俺はその後に街を出る」

「はい」

「お前の奴隷契約は解除する。その後は好きにすればいい」

「はい……えっ？」

　驚くライラをそのままにしてステファンは奴隷商会に向かった。ライラの奴隷契約を解除し、預り金を受け取るとそれをそのままライラに手渡す。

「長らく世話になった。これくらいの金じゃ足りんだろうが、今の俺がお前に渡せる全てだ。今まで俺の勝手に突き合わせて悪かったな」

「……ご主人様」

「もう俺はお前の主人ではないよ。今までのことを考えると、俺を殺したいと思ってるのかもしれんが、それは少しだけ待って欲しい。やるべきことを済ませたらちゃんと殺されてやるから」

　ライラは今目の前にいる人間が本当に自分のかつての主人なのか、その確信を持つことができず困惑していた。ついさっきまで酒浸りで暴れていたステファンとはまるで別人のようだった。

　自分が井戸で水を浴びていた短い時間に一体何があったのだろうとライラは思った。

「では達者でな」

　ライラの返事を聞くことなくステファンは歩き始めた。今や自由の身となったライラは、いろいろ頭を巡らせた結果、故郷に帰ろうかとも考えた。

　フラフラと頼りなげに街の外へと歩いて行くステファンの背中をライラはしばらく見つめていた。

　ステファンの姿が街の門を越えるのを見届けて、ライラは――

　彼の後を追った。

　～コボルト村～

（ちょっとちょっとココロチン、どういうことなのさ！？）

（ハァ……わたしに言われましても……）

　マーカスたちが奴隷たちを救出してから二週間が過ぎた。

「探知。詳細情報つけて頼む」

　と俺はつぶやく。

▼ カレン・エルダレン（神官、人間族♀、24歳、金髪碧眼、ぼんきゅっぼん）
▼ エルザ・バレンティーヌ（無職、人間族♀、16歳、栗毛黄金、将来有望）
▼ フィーネ・ガラリエル（レンジャー、エルフ族♀、84歳、銀髪緑目、スレンダー）
▼ ミモザ・スズウッド（無職、人間族♀、12歳、黒髪黒目）
▼ ミッシール（無職、大陸狼族♀、10歳、栗毛碧眼）

（ちなみに「無職」と表示されているのは、職業スキルレベルが一定値に達していないという意味であって、決して転生１年前の田中様が自宅で警備されていたような何も職に付いていないという意味ではありません）

（そんなちなみに・・・・はいらねーよ！」

（そうですか）

（そんなことより、どうしてだよ！）

（どうしてと言われましても……）

（どうしてどうしてどうして）

　どうして誰一人として俺になびいてくれないんだよぉぉぉ！

しおりを挟む