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第71話 ドラゴンの婿
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幼女となったルカの下に向かっている眷属はコカトリアンだけではない。ルカに忠義を尽くしている眷属もまた同じくグレイベアの巣穴を目指していた。
「というわけでじゃ、シンイチよ。わらわの婿になれ!」
「どういうこと!?」
俺の隣にいるライラも目を点にして俺とルカを見比べている。
「シ、シンイチ様とルカさまが……い、いいいつの間にそんな関係に!?」
「落ち着けライラ、俺はロリコンじゃない……わけではないかもしれないが、幼女をどうこうするような男ではない」
「そ、そうですよね」
俺の言葉を受けたライラがほっと胸を撫でおろす。
「何を言う、シンイチはわらわの股座をまさぐろうとしたではないか?」
「シンイチ様!?」
「いやいや、そんなことするわけないだろ……って、あっ!?」
「シンイチさま~!?」
ライラの声が裏返る。
「あっ、あれはルカが封筒を変なところに隠したとか言うから……ええいもう! ライラもいちいち動揺するな! 俺が幼女に手を出すわけないだろ!」
「でも、二次元は別腹とおっしゃってました……二次元というのがよくわかりませんが、それってルカ様は特別という意味だったのですね」
「ちがーーーう!」
俺は話を戻すことにした。何しても別の地雷が誤爆してしまいそうだからだ。
「それでルカちゃん! どうしてそんなことを突然言い出したの? 変なこと言うからライラが錯乱しちゃったじゃないか」
「おっ、シンイチだけを揶揄うつもりがライラにまで被害が及んでしまったか。ライラよ、心配するに及ばんぞ。わらわとシンイチはあくまで神とミジンコの関係じゃ。わらわがミジンコに手を出すわけがなかろう」
「ひ、酷くない!?」
「それで話を戻すが、あくまでも名目としてわらわの婿として迎えてやるという話じゃ。人間の世界の結婚ではないから、ライラの地位を脅かすようなことはないぞ」
「ならどうして、わざわざそんなことを?」
「うむ。今後、グレイベアの巣穴に我が眷属が集って、その多くがその周辺に住むことになる。眷属たちの中には乱暴な奴もおるでの。コボルト村の連中にちょっかいを出すのもおるかもしれん」
「それは困るな」
「じゃろう? だがもしコボルト村の酋長がわらわの夫であるとなれば、彼らとてそうそう手は出せなくなるというわけじゃな、それに……」
「それに?」
「わらわの夫であれば、眷属たちはシンイチを守るし、その命にも従うじゃろう。どうじゃ、いいことばかりであろうが!」
「デメリットもあるんだよね」
「うむ。まぁ、逆にシンイチも眷属たちに保護を与える必要がある。しかしそれは、わらわとシンイチが支配するグレイベア巣穴周辺に住むことを許すということだけで十分なのじゃ」
「ふーむ」
「あとは、ライラの気持ちじゃな。ライラ、もう一度言うがわらわとシンイチの関係は名目だけのもので、お前の嫁としての立場を一切脅かすものではないぞ。そこはわらわを信じてもらうしかないのじゃが」
「わたしは構いませんよ。わたしはシンイチ様のお傍に居られるだけで満たされますから」
「ライラ……」
「……シンイチさま」
「……」
「……チュッ」
ガッ!
ルカが俺たちの間に割って入る。
「……って、止めんか! 今はわらわの話じゃろが!」
「いいよ」
「ほへ?」
「ルカ様、シンイチ様はルカ様の婿になられるとおっしゃったのですよ」
「さすがライラ、俺のことを全部わかってるね。まぁ、俺もライラの身体のホクロの位置なら全部知ってるけどね!」
「シンイチ様ったら!」
「ライラ……」
「……シンイチさま」
「……」
「……チュッ」
ガバッ!
「もう勝手にせい! では今日からシンイチはわらわの婿じゃからな! 全ての眷属に通達せねば!」
ルカはずかずかと足音を立てながら奥部屋から出て行った。ルカは扉を閉めた後、扉に掛けられている木札を裏返した。木札には次のような文字が書かれていた。
「ただいま交尾中、開けるべからず」
3時間後。いろいろスッキリした俺は洞窟前広場にいるルカのところへ行った。
「婿になるって、何か契約魔法みたいなことは必要ないの?」
「まぁ、わらわがドラゴンのままだったらシンイチの身体に魔法紋を刻むところじゃったが、何せ今は幼女じゃからな。特に何もせん。ただ口頭で眷属たちに伝えるだけじゃ。『コボルト村の酋長シンイチ・タヌァカがドラゴンの婿である』とな」
「ドラゴンの婿か……カッコ良さと情けない感じが入り混じって、俺に妙なフィット感があるな」
「その通りじゃな。だがメリットが大きいのは間違いないぞ。魔物に取り囲まれたら『ドラゴンの婿』と名乗れば手を引いてくれることも多かろう」
「それは凄いな!」
「まぁ、逆にブチ切れて敵が容赦なくなることもあるがな」
「使えないな!」
「ははは、まぁどちらに転ぶかは運次第ということじゃ。だがこれは間違いなくメリットになるはずじゃ、風の精霊ウィンドルフィン顕現せよ!」
俺の頭上に半透明のイルカのような形をした精霊が出現した。
「はじめまして、シンイチ様、わたくし御身をお守りする風の精霊、名をウィンドルフィンと申します。どうかウィンとお呼びください」
「あっ、どうも始めまして。わたくしコボルト村の酋長をさせていただいている、あっ、この度、こちらのドラゴンの婿を拝命したシンイチ・タヌァカと申します。よろしくお願いします」
俺は思わず頭を45度傾けてウィンに挨拶する。可愛げな見た目と違ってウィンの声はイケメン中年声優のバリトンボイスだったので、思わず前世の取引先の社長さんを思い出してしまった。
「こやつは今までもお前を守っておったのじゃが姿は隠しておった。シンイチがわらわの婿となったからには、これからはシンイチにも姿を見せるし、話も出来るじゃろうて」
俺はコカトリアンに襲われた際に、毒霧を散らした風のことを思い出した。
「あっ、もしかしてあのとき毒霧を払ってくれたのは……」
ウィンが片目を閉じた。
「というわけでじゃ、シンイチよ。わらわの婿になれ!」
「どういうこと!?」
俺の隣にいるライラも目を点にして俺とルカを見比べている。
「シ、シンイチ様とルカさまが……い、いいいつの間にそんな関係に!?」
「落ち着けライラ、俺はロリコンじゃない……わけではないかもしれないが、幼女をどうこうするような男ではない」
「そ、そうですよね」
俺の言葉を受けたライラがほっと胸を撫でおろす。
「何を言う、シンイチはわらわの股座をまさぐろうとしたではないか?」
「シンイチ様!?」
「いやいや、そんなことするわけないだろ……って、あっ!?」
「シンイチさま~!?」
ライラの声が裏返る。
「あっ、あれはルカが封筒を変なところに隠したとか言うから……ええいもう! ライラもいちいち動揺するな! 俺が幼女に手を出すわけないだろ!」
「でも、二次元は別腹とおっしゃってました……二次元というのがよくわかりませんが、それってルカ様は特別という意味だったのですね」
「ちがーーーう!」
俺は話を戻すことにした。何しても別の地雷が誤爆してしまいそうだからだ。
「それでルカちゃん! どうしてそんなことを突然言い出したの? 変なこと言うからライラが錯乱しちゃったじゃないか」
「おっ、シンイチだけを揶揄うつもりがライラにまで被害が及んでしまったか。ライラよ、心配するに及ばんぞ。わらわとシンイチはあくまで神とミジンコの関係じゃ。わらわがミジンコに手を出すわけがなかろう」
「ひ、酷くない!?」
「それで話を戻すが、あくまでも名目としてわらわの婿として迎えてやるという話じゃ。人間の世界の結婚ではないから、ライラの地位を脅かすようなことはないぞ」
「ならどうして、わざわざそんなことを?」
「うむ。今後、グレイベアの巣穴に我が眷属が集って、その多くがその周辺に住むことになる。眷属たちの中には乱暴な奴もおるでの。コボルト村の連中にちょっかいを出すのもおるかもしれん」
「それは困るな」
「じゃろう? だがもしコボルト村の酋長がわらわの夫であるとなれば、彼らとてそうそう手は出せなくなるというわけじゃな、それに……」
「それに?」
「わらわの夫であれば、眷属たちはシンイチを守るし、その命にも従うじゃろう。どうじゃ、いいことばかりであろうが!」
「デメリットもあるんだよね」
「うむ。まぁ、逆にシンイチも眷属たちに保護を与える必要がある。しかしそれは、わらわとシンイチが支配するグレイベア巣穴周辺に住むことを許すということだけで十分なのじゃ」
「ふーむ」
「あとは、ライラの気持ちじゃな。ライラ、もう一度言うがわらわとシンイチの関係は名目だけのもので、お前の嫁としての立場を一切脅かすものではないぞ。そこはわらわを信じてもらうしかないのじゃが」
「わたしは構いませんよ。わたしはシンイチ様のお傍に居られるだけで満たされますから」
「ライラ……」
「……シンイチさま」
「……」
「……チュッ」
ガッ!
ルカが俺たちの間に割って入る。
「……って、止めんか! 今はわらわの話じゃろが!」
「いいよ」
「ほへ?」
「ルカ様、シンイチ様はルカ様の婿になられるとおっしゃったのですよ」
「さすがライラ、俺のことを全部わかってるね。まぁ、俺もライラの身体のホクロの位置なら全部知ってるけどね!」
「シンイチ様ったら!」
「ライラ……」
「……シンイチさま」
「……」
「……チュッ」
ガバッ!
「もう勝手にせい! では今日からシンイチはわらわの婿じゃからな! 全ての眷属に通達せねば!」
ルカはずかずかと足音を立てながら奥部屋から出て行った。ルカは扉を閉めた後、扉に掛けられている木札を裏返した。木札には次のような文字が書かれていた。
「ただいま交尾中、開けるべからず」
3時間後。いろいろスッキリした俺は洞窟前広場にいるルカのところへ行った。
「婿になるって、何か契約魔法みたいなことは必要ないの?」
「まぁ、わらわがドラゴンのままだったらシンイチの身体に魔法紋を刻むところじゃったが、何せ今は幼女じゃからな。特に何もせん。ただ口頭で眷属たちに伝えるだけじゃ。『コボルト村の酋長シンイチ・タヌァカがドラゴンの婿である』とな」
「ドラゴンの婿か……カッコ良さと情けない感じが入り混じって、俺に妙なフィット感があるな」
「その通りじゃな。だがメリットが大きいのは間違いないぞ。魔物に取り囲まれたら『ドラゴンの婿』と名乗れば手を引いてくれることも多かろう」
「それは凄いな!」
「まぁ、逆にブチ切れて敵が容赦なくなることもあるがな」
「使えないな!」
「ははは、まぁどちらに転ぶかは運次第ということじゃ。だがこれは間違いなくメリットになるはずじゃ、風の精霊ウィンドルフィン顕現せよ!」
俺の頭上に半透明のイルカのような形をした精霊が出現した。
「はじめまして、シンイチ様、わたくし御身をお守りする風の精霊、名をウィンドルフィンと申します。どうかウィンとお呼びください」
「あっ、どうも始めまして。わたくしコボルト村の酋長をさせていただいている、あっ、この度、こちらのドラゴンの婿を拝命したシンイチ・タヌァカと申します。よろしくお願いします」
俺は思わず頭を45度傾けてウィンに挨拶する。可愛げな見た目と違ってウィンの声はイケメン中年声優のバリトンボイスだったので、思わず前世の取引先の社長さんを思い出してしまった。
「こやつは今までもお前を守っておったのじゃが姿は隠しておった。シンイチがわらわの婿となったからには、これからはシンイチにも姿を見せるし、話も出来るじゃろうて」
俺はコカトリアンに襲われた際に、毒霧を散らした風のことを思い出した。
「あっ、もしかしてあのとき毒霧を払ってくれたのは……」
ウィンが片目を閉じた。
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