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第87話 青銅のゴーレム
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~ ゴンドワルナ大陸 ~
とある学校内の食堂では三人が昼食を楽しんでいた。
ひとりは普通の少年だ。その隣には白狼族の亜人女性、少年の体面には毛先を赤と黄色に染めた銀髪の女性が座っていた。
スクッ!
突然、銀髪の女性が席を立つ。
「お二人ともごめんなさい! 先生は急用ができたのでひと月ほど出張に出なければなりません。ご相談の件につきましては、戻ってからということで! それでは!」
走り去って行く銀髪の女性を、残された二人はポカンとした表情で見送っていた。
「あの先生はときどき変だよね」
「そうですね」
~ グレイベア地下ダンジョンB12F ~
「おい! シュモネー様には使いを出したんだろうな!」
青銅のゴーレムが鷲頭のグリフォンに尋ねる。
「とっくの昔に出しとるわ! 奴らがダンジョンの扉を発見したときに使い魔飛ばしとるわ! お主のような木偶の坊の目には止まらんくらいの速さで行動しとるわ!」
古代の剣闘士を模して造られたゴーレムは、球体で作られた関節を器用に動かしてグリフォンに詰め寄る。グリフォンはライオンの身体を起こして青銅のゴーレムを威嚇した。
「ならどうして、ここにシュモネー様がいらっしゃらないんだろうな!」
青銅のゴーレムの表情が怒りに変わる。内部でギリギリと歯車が軋む音が辺りに響いた。
「お前の頭には脳が詰まっとらんのか! そういえば詰まってなかったわ! まだ1週間しか経っておらんだろうが! いくらワシの神速の使い魔とて、ようやくシュモネー様のところに辿り着けたかどうかというところじゃろうよ!」
「しかし、奴らはもうそこまで迫っているんだぞ!」
青銅のゴーレムの顔が焦った表情に変わる。
「まさか、こんなに早くこのダンジョンを攻略するとはな……」
グリフォンは眉根を寄せた。このダンジョンはSSクラスの冒険者でも容易に攻略することはできないように設定されているはずだった。
グリフォンの使い魔Bが飛び込んできた。
「主様! 奴らが地下11階を突破しました!」
「何ぃ! では奴らとうとうこの階に!?」
グリフォンが叫ぶ。青銅のゴーレムの顔が青銅色に染まる。
「シュモネー様は……シュモネー様はまだお着きにならないのか……」
~ 探索パーティー ~
「しかし、ダンジョン攻略ってこんなに簡単でいいのかなぁ」
俺は前を歩く三人に語りかける。
「まぁ、確かに坊ちゃんのスキルがあれば敵は一網打尽ですがね」
海賊で盗賊すなわち海盗賊のタクスが俺の方を振り向いて言う。
「でも、オレの罠解除がなきゃかなりキツイ行程になってたことは忘れねぇで欲しいですね」
「もちろん、わかっているともタクスくん!」
俺は鷹揚な態度でタクス同志に語り掛けた。
「このダンジョンを攻略した暁には、もんもんキャット先生の『ふわとろ』シリーズ全巻を下賜しようじゃないか!」
「さすが坊ちゃん! ありがたき!」
「ハハハ、いくらでも褒めるがよい!」
そう。
海盗賊のタクスは「同志」なのだ。
初対面の印象では、この栗毛の長身イケメン男を俺は敵認定していた。最初の挨拶以降、その存在を頭から綺麗さっぱり消していた。
しかし、その日の夜に事情は一転する。なんとタクスはコボルト村に到着したその日のうちに俺の秘密基地とお宝を発見してしまったのだ。
そしてそのお宝はタスクにとっても衝撃的なブツだった。彼は、すぐにもんもんキャット先生の『ふわとろ鬼っ娘』を俺のところに持ってきた。
最初は「こいつ何してくれてんの!?」と思った俺だったが、タクスの目を見た瞬間にピコーン! と分かった。
俺たちは同志なのだと。
タクスは日本のコンテンツ(主にエロ)に大変興味を持ったようで、現在では俺と一緒にエロ同人誌の翻訳作業に取り組んでいる。この翻訳作業については、コボルト村の女性陣《PTA》とひと悶着あったのだが、それはまた別の話だ。
などと回想しているうちに地下12階最奥部の部屋に到着してしまった。
「うーん、中の様子は……んっ!? マズイぞ!?」
俺はこのダンジョン攻略において初めて危機感を持った。
「シンイチ殿、何がマズイのですか?」
いつもと様子が違う俺の声を聞いたフワデラさんが俺を見る。
「中にゴーレムがいる……」
索敵レーダーにはゴーレムの名称の隣に×が付いている。これは【幼女化】が効かないことを意味している。
ココロチンによるとゴーレムは「物」扱いだそうで、今の俺のスキルレベルでは【幼女化】することができない。
「俺のスキルレベルじゃゴーレムは【幼女化】できないんだよ」
「ふむ。レベルはどれくらいでしょうか?」
フワデラさんが尋ねる。俺は扉に近づいて【探知】を使い、ゴーレムの情報を視界に表示して、それをフワデラさんに伝える。
▼ ゴーレム(青銅)(♂) Lv55 ×
▼ グリフォン(♂) Lv60 〇1
「ふむ。ではゴーレムはわたしが相手すると致しましょう。シンイチ殿はグリフォンをお願い致します」
「了解!」
「では3つ数えたら【幼女化】を! その後に突入します」
「らじゃ!」
「3、2、1……」
「ジョワッ!」
俺は扉に向けて【幼女化ビーム(1秒)】を放った。
とある学校内の食堂では三人が昼食を楽しんでいた。
ひとりは普通の少年だ。その隣には白狼族の亜人女性、少年の体面には毛先を赤と黄色に染めた銀髪の女性が座っていた。
スクッ!
突然、銀髪の女性が席を立つ。
「お二人ともごめんなさい! 先生は急用ができたのでひと月ほど出張に出なければなりません。ご相談の件につきましては、戻ってからということで! それでは!」
走り去って行く銀髪の女性を、残された二人はポカンとした表情で見送っていた。
「あの先生はときどき変だよね」
「そうですね」
~ グレイベア地下ダンジョンB12F ~
「おい! シュモネー様には使いを出したんだろうな!」
青銅のゴーレムが鷲頭のグリフォンに尋ねる。
「とっくの昔に出しとるわ! 奴らがダンジョンの扉を発見したときに使い魔飛ばしとるわ! お主のような木偶の坊の目には止まらんくらいの速さで行動しとるわ!」
古代の剣闘士を模して造られたゴーレムは、球体で作られた関節を器用に動かしてグリフォンに詰め寄る。グリフォンはライオンの身体を起こして青銅のゴーレムを威嚇した。
「ならどうして、ここにシュモネー様がいらっしゃらないんだろうな!」
青銅のゴーレムの表情が怒りに変わる。内部でギリギリと歯車が軋む音が辺りに響いた。
「お前の頭には脳が詰まっとらんのか! そういえば詰まってなかったわ! まだ1週間しか経っておらんだろうが! いくらワシの神速の使い魔とて、ようやくシュモネー様のところに辿り着けたかどうかというところじゃろうよ!」
「しかし、奴らはもうそこまで迫っているんだぞ!」
青銅のゴーレムの顔が焦った表情に変わる。
「まさか、こんなに早くこのダンジョンを攻略するとはな……」
グリフォンは眉根を寄せた。このダンジョンはSSクラスの冒険者でも容易に攻略することはできないように設定されているはずだった。
グリフォンの使い魔Bが飛び込んできた。
「主様! 奴らが地下11階を突破しました!」
「何ぃ! では奴らとうとうこの階に!?」
グリフォンが叫ぶ。青銅のゴーレムの顔が青銅色に染まる。
「シュモネー様は……シュモネー様はまだお着きにならないのか……」
~ 探索パーティー ~
「しかし、ダンジョン攻略ってこんなに簡単でいいのかなぁ」
俺は前を歩く三人に語りかける。
「まぁ、確かに坊ちゃんのスキルがあれば敵は一網打尽ですがね」
海賊で盗賊すなわち海盗賊のタクスが俺の方を振り向いて言う。
「でも、オレの罠解除がなきゃかなりキツイ行程になってたことは忘れねぇで欲しいですね」
「もちろん、わかっているともタクスくん!」
俺は鷹揚な態度でタクス同志に語り掛けた。
「このダンジョンを攻略した暁には、もんもんキャット先生の『ふわとろ』シリーズ全巻を下賜しようじゃないか!」
「さすが坊ちゃん! ありがたき!」
「ハハハ、いくらでも褒めるがよい!」
そう。
海盗賊のタクスは「同志」なのだ。
初対面の印象では、この栗毛の長身イケメン男を俺は敵認定していた。最初の挨拶以降、その存在を頭から綺麗さっぱり消していた。
しかし、その日の夜に事情は一転する。なんとタクスはコボルト村に到着したその日のうちに俺の秘密基地とお宝を発見してしまったのだ。
そしてそのお宝はタスクにとっても衝撃的なブツだった。彼は、すぐにもんもんキャット先生の『ふわとろ鬼っ娘』を俺のところに持ってきた。
最初は「こいつ何してくれてんの!?」と思った俺だったが、タクスの目を見た瞬間にピコーン! と分かった。
俺たちは同志なのだと。
タクスは日本のコンテンツ(主にエロ)に大変興味を持ったようで、現在では俺と一緒にエロ同人誌の翻訳作業に取り組んでいる。この翻訳作業については、コボルト村の女性陣《PTA》とひと悶着あったのだが、それはまた別の話だ。
などと回想しているうちに地下12階最奥部の部屋に到着してしまった。
「うーん、中の様子は……んっ!? マズイぞ!?」
俺はこのダンジョン攻略において初めて危機感を持った。
「シンイチ殿、何がマズイのですか?」
いつもと様子が違う俺の声を聞いたフワデラさんが俺を見る。
「中にゴーレムがいる……」
索敵レーダーにはゴーレムの名称の隣に×が付いている。これは【幼女化】が効かないことを意味している。
ココロチンによるとゴーレムは「物」扱いだそうで、今の俺のスキルレベルでは【幼女化】することができない。
「俺のスキルレベルじゃゴーレムは【幼女化】できないんだよ」
「ふむ。レベルはどれくらいでしょうか?」
フワデラさんが尋ねる。俺は扉に近づいて【探知】を使い、ゴーレムの情報を視界に表示して、それをフワデラさんに伝える。
▼ ゴーレム(青銅)(♂) Lv55 ×
▼ グリフォン(♂) Lv60 〇1
「ふむ。ではゴーレムはわたしが相手すると致しましょう。シンイチ殿はグリフォンをお願い致します」
「了解!」
「では3つ数えたら【幼女化】を! その後に突入します」
「らじゃ!」
「3、2、1……」
「ジョワッ!」
俺は扉に向けて【幼女化ビーム(1秒)】を放った。
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