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第96話 ウィンの悪戯
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テントのおかげで旅の道中はとっても快適に過ごすことができた。
俺とライラ、フワデラさんとシュモネー、ルカとグレイちゃんで別れてテントで就寝。見張りは風精霊のウィンと火精霊のヴォルちゃんに任せることができたので、旅の夜はゆっくりと休むことができた。
いや……あんまり休めてはないんだけどね。ほら、ぐったりと眠りに落ちる前にライラとの激しいイチャイチャがあるから。
ただ、朝目覚めるといつもルカが俺の顔に足を載せ、グレイちゃんが俺の足に噛りついたままで眠っていた。朝方は冷えるから二人がいてくれた方が暖かくていいんだけどさ。
それでいよいよネフューの村に到着する前日の深夜。
俺は寝ているライラを起こさないように静かにテントを抜け出して、焚火の前でウィンとヴォルちゃんを相手に月見酒を楽しんでいた。
綺麗な二つの月だった。
できることなら、しみじみお酒を楽しみたい気分だったが、さっきからフワデラさんのテントが、フルフル、フルフル、フルフルと揺れ続けているのが気になって仕方がない。
耳を澄ますと走り抜ける風に揺られる枝葉の音――
――ではない艶めかしい声が聞こえてきそうだったので、俺は焚火の音に集中する。
そんな俺の悩みを察したのか、ヴォルちゃんが焚火の火力を増やして俺の注意を引いてくれた。
フォォォォ……。
耳元に心地よい感じの風が吹き始めた。ウィンも気を使ってくれたみたいだ。
「ありがとウィン、それにヴォルちゃんも……」
「どういたしまして」
ウィンのイケ親父ボイスが特に今は心地よい。サンショウウオっぽい姿のヴォルちゃんも焚火の中でコクコクとうなずいている。
「そういえば、俺とライラがその……シテるときもウィンに迷惑かけちゃってる?」
「迷惑とは?」
「えっと、気を使わせているというか……声とか聞こえちゃったりとか……えっと、その……」
「シンイチ殿が言いたいことは分かっているつもりです。ただ精霊と人間とでは物事の見え方も異なるので、シンイチ殿が気に掛けられるようなことはないと思いますね」
「そうなの……恥ずかしいとか、あるいは汚らわしいとか、都条例違反とか思ったりしない?」
「純粋に相手を想い合う風が交じる音というのは、私たち精霊にとって心地よいものです。ただそれだけのことですよ」
「そうなんだ……」
さすがイケ親父のウィンさん、なんか良いこと言ってるっぽい。俺も適当なことしゃべてても何か良いこと言ってる雰囲気が出せる大人になりたいものだ。
「てっきり俺は、声とか聞こえちゃってたら、ウィンに不快な思いさせてるんじゃないかと思ってたよ」
「そうでもないですよ」
「そうなの?」
「ええ。こんな感じです」
次の瞬間、ウィンが耳元の風を止め、ヴォルちゃんが焚火の勢いを落とす。
「ん?」
しばらくすると、フルフル、フルフル、フルフル震えているフワデラさんのテントから微かに音が聞こえてきた。
「ハニー! ハニー! ハニー! ハニー!」
「ダーリン! ダーリン! ダーリン! 好き! 好き! 大好き!」
「ブふぉぉぉぉッ!」
俺は口の中のお酒を全部吹き出してしまった。
テントはまだフルフル、フルフル、フルフル震えている。
「ハニィィィイ!」
「ダーリィィィン!」
ちょッ! これはおもろい!
そしてウィンが極悪すぐる!!
俺は笑い声が出ないように必死で両手で口を押えて地面をのたうち廻った。
ウィンと目が合う。
「ねっ? 心地よいものでしょう?」
違う! それ絶対違うから!
こいつイケ親父ボイスと油断してたら、ただの悪ガキだったのか!
「ちょっ、おま、おま、お前! 禁止! 禁止な! 俺とライラがHするときは絶対遠くに行けよ! 絶対だ! 絶対だかんな!」
「ハッ! ご命令とあらば……」
ウィンがビシッと敬礼する。
ウィンのニヤリとした表情! これ命令なんて守る気ないって顔してるわ。
風の音がさらに静まり、あたりに静寂が訪れた。
テントの方に目を向けると、テントの揺れも静まっていた。
「ダーリン……」
「ハニィ……」
「もっと……」
「あぁ、いくらでも……」
テントがまたフルフル、フルフル、フルフル震え始める。
ウィンの野郎! 声を聞かせるために、わざと風の音を消しやがったなぁぁ!
「フーッ! フーッ!」
俺はまた必死で両手で口を押え、地面をのたうち廻る。
「【幼女化ビィィム!】」
俺は地面を転がりながらウィンに【幼女化ビーム】を放つ。ビームは命中したもののウィンには効果が発動しなかった。
こんなにハッキリと目に見えているのに【幼女化】できないなんて! 畜生め!
ドヤァッ!
ウィンは全身を輝かせながらドヤ顔になっていた。
これが数回繰り返された頃には、俺の体力は限界点に到達していた。
「ゼェゼェ、う、ウィンさん……もう勘弁してつかぁさい……ハァハァ」
「申し訳ありません。シンイチ殿とこうして遊びに興じることができるのが嬉しくて、つい調子に乗ってしまいました」
「あっ、いや、俺も……まぁ、うん。楽しかっ……」と言い終える間もなく、また風の音が消えた。
「ハニィィィ!」
「ダァァリィィィン!」
フワデラさんのテントが大揺れする。
「ブフォォッ!」
ウィン……一刻も早くスキルレベルをあげて、コイツを【幼女化】してやる!
心に固く誓いながら、俺はほうほうのていで自分のテントへ逃げ帰った。
俺とライラ、フワデラさんとシュモネー、ルカとグレイちゃんで別れてテントで就寝。見張りは風精霊のウィンと火精霊のヴォルちゃんに任せることができたので、旅の夜はゆっくりと休むことができた。
いや……あんまり休めてはないんだけどね。ほら、ぐったりと眠りに落ちる前にライラとの激しいイチャイチャがあるから。
ただ、朝目覚めるといつもルカが俺の顔に足を載せ、グレイちゃんが俺の足に噛りついたままで眠っていた。朝方は冷えるから二人がいてくれた方が暖かくていいんだけどさ。
それでいよいよネフューの村に到着する前日の深夜。
俺は寝ているライラを起こさないように静かにテントを抜け出して、焚火の前でウィンとヴォルちゃんを相手に月見酒を楽しんでいた。
綺麗な二つの月だった。
できることなら、しみじみお酒を楽しみたい気分だったが、さっきからフワデラさんのテントが、フルフル、フルフル、フルフルと揺れ続けているのが気になって仕方がない。
耳を澄ますと走り抜ける風に揺られる枝葉の音――
――ではない艶めかしい声が聞こえてきそうだったので、俺は焚火の音に集中する。
そんな俺の悩みを察したのか、ヴォルちゃんが焚火の火力を増やして俺の注意を引いてくれた。
フォォォォ……。
耳元に心地よい感じの風が吹き始めた。ウィンも気を使ってくれたみたいだ。
「ありがとウィン、それにヴォルちゃんも……」
「どういたしまして」
ウィンのイケ親父ボイスが特に今は心地よい。サンショウウオっぽい姿のヴォルちゃんも焚火の中でコクコクとうなずいている。
「そういえば、俺とライラがその……シテるときもウィンに迷惑かけちゃってる?」
「迷惑とは?」
「えっと、気を使わせているというか……声とか聞こえちゃったりとか……えっと、その……」
「シンイチ殿が言いたいことは分かっているつもりです。ただ精霊と人間とでは物事の見え方も異なるので、シンイチ殿が気に掛けられるようなことはないと思いますね」
「そうなの……恥ずかしいとか、あるいは汚らわしいとか、都条例違反とか思ったりしない?」
「純粋に相手を想い合う風が交じる音というのは、私たち精霊にとって心地よいものです。ただそれだけのことですよ」
「そうなんだ……」
さすがイケ親父のウィンさん、なんか良いこと言ってるっぽい。俺も適当なことしゃべてても何か良いこと言ってる雰囲気が出せる大人になりたいものだ。
「てっきり俺は、声とか聞こえちゃってたら、ウィンに不快な思いさせてるんじゃないかと思ってたよ」
「そうでもないですよ」
「そうなの?」
「ええ。こんな感じです」
次の瞬間、ウィンが耳元の風を止め、ヴォルちゃんが焚火の勢いを落とす。
「ん?」
しばらくすると、フルフル、フルフル、フルフル震えているフワデラさんのテントから微かに音が聞こえてきた。
「ハニー! ハニー! ハニー! ハニー!」
「ダーリン! ダーリン! ダーリン! 好き! 好き! 大好き!」
「ブふぉぉぉぉッ!」
俺は口の中のお酒を全部吹き出してしまった。
テントはまだフルフル、フルフル、フルフル震えている。
「ハニィィィイ!」
「ダーリィィィン!」
ちょッ! これはおもろい!
そしてウィンが極悪すぐる!!
俺は笑い声が出ないように必死で両手で口を押えて地面をのたうち廻った。
ウィンと目が合う。
「ねっ? 心地よいものでしょう?」
違う! それ絶対違うから!
こいつイケ親父ボイスと油断してたら、ただの悪ガキだったのか!
「ちょっ、おま、おま、お前! 禁止! 禁止な! 俺とライラがHするときは絶対遠くに行けよ! 絶対だ! 絶対だかんな!」
「ハッ! ご命令とあらば……」
ウィンがビシッと敬礼する。
ウィンのニヤリとした表情! これ命令なんて守る気ないって顔してるわ。
風の音がさらに静まり、あたりに静寂が訪れた。
テントの方に目を向けると、テントの揺れも静まっていた。
「ダーリン……」
「ハニィ……」
「もっと……」
「あぁ、いくらでも……」
テントがまたフルフル、フルフル、フルフル震え始める。
ウィンの野郎! 声を聞かせるために、わざと風の音を消しやがったなぁぁ!
「フーッ! フーッ!」
俺はまた必死で両手で口を押え、地面をのたうち廻る。
「【幼女化ビィィム!】」
俺は地面を転がりながらウィンに【幼女化ビーム】を放つ。ビームは命中したもののウィンには効果が発動しなかった。
こんなにハッキリと目に見えているのに【幼女化】できないなんて! 畜生め!
ドヤァッ!
ウィンは全身を輝かせながらドヤ顔になっていた。
これが数回繰り返された頃には、俺の体力は限界点に到達していた。
「ゼェゼェ、う、ウィンさん……もう勘弁してつかぁさい……ハァハァ」
「申し訳ありません。シンイチ殿とこうして遊びに興じることができるのが嬉しくて、つい調子に乗ってしまいました」
「あっ、いや、俺も……まぁ、うん。楽しかっ……」と言い終える間もなく、また風の音が消えた。
「ハニィィィ!」
「ダァァリィィィン!」
フワデラさんのテントが大揺れする。
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