143 / 243
第143話 エルフのお茶処
しおりを挟む俺とライラとは、ミチノエキ村への出入りを自粛することになったので、村の様子については統括責任者であるステファンからの報告を受けて知ることが多い。
ミリアが暗殺者ギルドの招致に成功した以降、ミチノエキ村にどのような変化が生じたのか気になるところだ。だがステファンが見る限りにおいては、表立って変ったところはないとのことだった。
「唯一変わったと言えば『エルフのお茶処』というエルフのメイド喫茶が出来たことでしょうか」
「何それ行きたい! でも行けない!」
「ミリア殿が店長を務めている、表側はどうみても普通のお茶処です」
な、なるほど……ドラゴンシスターズのフロント企業ならぬフロント茶処だったか。
となると従業員のエルフメイドも、ドラゴンシスターズの構成員ということか。
ちょっと怖いかも……いや、俺たちにとっては頼もしい存在ではあるんだけど。
「タクス殿のアイデアでメイドの衣装にゼッタイリョーイキ?というのを取り入れたことで人気が出たらしく、現在ではバークの街から数日かけて訪れる人までいるようです」
「何それ! 超行ってみたい! ……ぐぬぬ、だけど行けないぃぃぃ! ぐぬぬ! ぐぬぬ! ぐぬぬぅ!」
無意識のうちに、俺はめっちゃ歯ぎしりしていた。
「ステファン! お願いがある!」
俺の勢いに呑まれたステファンが思わず気を付けの姿勢を取る。
「は、はい! なんでしょうか!?」
緊張からかステファンの額に汗が滲み始めていた。
「エルフのお茶処の制服を一着用意してもらいたい!」
「えっ!? はっ!? あっ? あ~~!」
俺の凄まじい勢いで放たれた要求を受けて、ステファンはパニックに……はなることもなく、逆にホッとした顔つきになった。
「あっ、そのことですか! それでしたら恐らくシンイチ殿から要望が出るはずだからとミリア殿から一式持たされております。あと一応、ルカ殿とグレイ殿の分もございます」
さすがミリア! 超有能な出来るダークエルフ!
「あっ、それなら、今度ミリアさんが帰ってくるとき……」
「駄目です」
「はわ!?」
「ミリア殿によると、おそらくシンイチ殿は、ミリア殿のメイド服姿を要望されるだろうからお断りしておいてくれと言われております」
ミリア……超先読みが出来るダークエルフだった。
~ ミチノエキ村 ~
ステファンから改めてミチノエキ村の状況について話を聞いた。
ミチノエキ村は住人のほとんどが人間で、亜人は少数派だ。獣人や魔族に到っては、奴隷商が宿泊したときに見かける、鎖で繋がれている奴隷しか見ることはない。
村の北には、街道へ抜ける街道がある。しかしここを通と、街道まで遠回りになる上、道の状態も悪く、魔物が出る森も近い。しかも民家の裏庭を通らなければならず、普通の人なら誰もが通ろうと思わない。
これがコボルト村へと続く道であることを知るのは、村の中でも極一部の者に限られている。
「ミリア殿の言われた通り、ここに民家を立てたのは正解でした。現在はエルフのお茶処のスタッフ寮として使っています。これで裏道を通ろうとする人を自然に監視することもできるようになりました」
ミチノエキ村に出入りする人のほとんどは、王国の街道を通ってくる人たちだ。ここから最も近いバーグの街から来る人が最も多いけど、最近は王都ハルバラルトから来る人や、北方のドラン公国から王都を目指す商隊が宿泊・補給地として利用するようになってきている。
ちょっとした交易の要所になりつつあるミチノエキ村だった。
~ コボルト村 ~
ステファンの次ぎは、ロコにコボルト村の状況について話を聞いた。
大陸共通語が苦手なロコの希望で、秘書としてイリアくんが一緒に来ている。
なぜだろう。なんだかうらやましい。
そしてなぜだろう。イリアくんは、綺麗な銀髪をポニーテイルにまとめ上げて、真っ白なうなじを晒している。銀縁眼鏡を掛けているのは、きっと秘書のコスプレだな。いやコスプレじゃなく秘書だけど。
だがなぜだろう。なぜメイド服なんだ? いや、それはいつものことか。だがどうして眩しいくらいに白い絶対領域を完成させているんだ? どうしていつもそんなに可愛いんだ?
ジィィィっとイリアくんの絶対領域に意識をダイブインしていると、白いふとももがもじもじと内側へ動き始めた。
「こ、これ……ミリアさんのお店の制服なんだよ」
そういって俺を上目遣いに身ながら頬を染めるイリアくんは、めちゃくちゃ美少女だった。
「ど、どうかな……」
そう言ってイリアくんはスカートの裾をつまんで、少し引き上げた。
絶対領域の幅が広がり、さらにその上の夢のY字空間が見えそうになる。
ゴクリ。
「シ、シンイチ、イリアにハツジョウ? ロコ、少し出て行く? ホウがヨイ?」
ハッ!?
「あっ、いや、どうして? 発情なんてしなてないよ? まさか俺が? そんなわけないじゃん! アハハー」
そう言って、俺が乾いた笑い声を上げると、イリアくんの表情がシュンと哀し気なものに変わった。
「あっ! いや、そのイリアくんは魅力的だよ! メイド服凄く似合ってるし、イリアーズ絶対領域サイコー! ハスハスしてみたいなー! だけどほら、今はお仕事、お仕事中だから発情なんてしてない、しちゃだめじゃない? 駄目だよね! だから発情するのは我慢! そう我慢してるの!」
「そ、そうなんだ……」
イリアくんの顔に笑顔が戻ったので、俺はホッと一安心する。
「あの、シンイチくん……その、ライラさんがお疲れの時とか、妊娠されている間は、ぼ、ぼくが代わりに……その……いいからね? 前みたいに」
「えっ!? いやいや、あははは、ま、まぁ、うん、その……あはは」
何と答えるべきか分からず、結局、曖昧にして誤魔化してしまったが、少し引っ掛かる言葉がイリアくんの口から出ていたような。
前みたいに?
前ってなんだろう? えっ!? 何かあったっけ!? 何もないよね?
何もない! うん、何もないはず! 何もないんだってば!
俺が知らないところで、俺とイリアくんに一体何があったのか考えていると、頭がフットーしそうになってきたので、俺はそれ以上考えることを止めた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!
こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」
主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。
しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。
「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」
さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。
そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)
かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる