166 / 243
第166話 悪魔勇者で間違いない!
しおりを挟む
隠れ里と言うものの、リーコス村は王国からは、その存在を暗黙に認められている。納税と、村の近くを通る北街道と西街道の監視と安全を守る義務も課せられている。
そのため街道を行く商隊は、このリーコス村近くの街道を安心して通ることができる。魔物や盗賊から追われているようなときは、彼らは何とかして村近くの街道まで辿り着こうとする。白狼族の監視に発見してもらえれば、救援に駆けつけてくれるからだ。
街道を行く商人や旅人から情報を得られることもあって、リーコス村の大陸情勢の把握は、最新のものと考えて良い。
酒宴の翌日、グレイベア村への帰路につく前に、俺は村長からそうした情報について色々と教えてもらっていた。
「俺の見立てじゃ、セイジュウ神聖帝国の皇帝が悪魔勇者で間違いないな」
どうやらヴィルフォファング村長は確信を持っているようだった。
「今の神聖帝国になる前は、あそこにはファーレンっていう小国があったんだが、そこは星の智慧派という邪教集団が本拠地を置いていてな。奴らは、ずっと昔から悪魔勇者を召喚するために生贄の儀式を続けていたって話だ」
村長によると、今から約6年前、星の智慧派によるクーデターでファーレンが滅亡し、セイジュウ神聖帝国が誕生したということだった。
セイジュウ神聖帝国は、魔族を引き入れて大陸を制覇しようとしている。しかも、彼らの率いる魔物は、これまで神話や伝説でしか語られることがなかったような強力なものがいるという。これはおそらく妖異のことだろう。
「皇帝セイジュウは黒竜までも配下に加えたらしい。人類軍の足並みが揃ってない今、神聖帝国に寝返る国は増えていくことだろうな」
「黒竜? それってうちのドラゴンと同じ竜族ってことですか?」
「そうだ。ドラゴンの中でも、黒竜は最も強いと言われている。黒竜を配下に加えた神聖帝国は、今や大陸最強の国と言って間違いないだろう」
あとでルカに聞いてみよう。頭から煙出しながら怒りそうな気がする。
それにしても、俺の転生より早い時期に召喚されていることといい、妖異を率いていることといい、間違いなく悪魔勇者で確定だろうな。
最後に確認しておこう。
「村長、その悪魔勇者には強力な眷属とかいたりしませんか?」
「シンイチ殿はご存じだったか。確かに悪魔勇者は十二の眷属を従えている。彼ら眷属はこの世の理を越えた恐ろしい存在だとか」
俺がこの異世界に転生するハメになったのは、悪魔勇者の召喚の巻き添えを食ったからだとエンジェル・キモオタは言っていた。
その際、悪魔勇者には十二の眷属がいるとも。
もはや間違いない。
セイジュウ神聖帝国の皇帝セイジュウは悪魔勇者だ。
~ 生存者 ~
それにしても、エンジェル・キモオタには、いつか直接クレームを入れてやりたい。
異世界転生したらハーレムでウハウハだとか、
勇者転生と違い、俺のような一般転生者はハーレムでウハウハだとか、
チートスキルがあるからハーレムウハウハだとか、
広告に偽りしかなかったじゃないか!
というか、勇者死んでたし! 雪山の中で頭空っぽにして死んでたし!
(そういや、ココロチン。次の勇者はどうなってるの? 新しい勇者は召喚されたの?)
(ココロ:次の勇者をどうするかについては、まだ天上界で色々と揉めてまして……)
(ちょっ! それってヤバくない? このままじゃ大陸全土が悪魔勇者の手に墜ちちゃうよ?)
(シリル:ずっと検討を続けてはいるようなのですが……)
(もういっそのこと、軍隊とか丸ごともってきて、さっさと悪魔勇者にミサイルでもブチ込んでくれよ!)
(ココロ:そんな無茶言わないでください!)
(シリル:そんなことしたら次元監視者に目を付けられる。そうなったら世界そのものが消されてしまいかねません)
(ま、まぁ……軍隊とは言わないけど、とにかく勇者を呼んで悪魔勇者を退治してもらいたいんだよ。そうじゃないと、ハーレムどころか、のんびりスローライフさえ不可能じゃんか!)
あっ、なんだか腹が立ってきた。
二人に、エンジェル・キモオタへの直接クレームを申請しようとしたところで、突然、大きな声が耳に入ってきた。
「村長! モリオン村の男が北門で行き倒れていました!」
白狼族の若者二人が、ぐったりとした男を両脇で支えながら、村長の家に入ってきた。
男を長椅子に寝かせると、若者の一人が発見時の状況について村長に報告する。
「この男は、北門まで辿りついたところで力尽きたようです」
白狼族の若者は、以前、モリオン村を訪れたときにこの男を見たことがあって、顔を覚えていたらしい。名前までは憶えていなかったものの、この男がモリオン村の住人であることは確かなようだ。
移動中に魔物か盗賊にでも襲われたのか、長椅子に横たわる男の姿はボロボロで、小さな傷がいくつも見受けられた。
村長は、男の顔を覗き込んでから言った。
「アーシェを呼んで手当してやれ。この男が回復するのを待って詳しい話を聞くことにしよう」
とりあえず今日のところは、グレイベア村へ帰還は見送りになりそうだ。
そのため街道を行く商隊は、このリーコス村近くの街道を安心して通ることができる。魔物や盗賊から追われているようなときは、彼らは何とかして村近くの街道まで辿り着こうとする。白狼族の監視に発見してもらえれば、救援に駆けつけてくれるからだ。
街道を行く商人や旅人から情報を得られることもあって、リーコス村の大陸情勢の把握は、最新のものと考えて良い。
酒宴の翌日、グレイベア村への帰路につく前に、俺は村長からそうした情報について色々と教えてもらっていた。
「俺の見立てじゃ、セイジュウ神聖帝国の皇帝が悪魔勇者で間違いないな」
どうやらヴィルフォファング村長は確信を持っているようだった。
「今の神聖帝国になる前は、あそこにはファーレンっていう小国があったんだが、そこは星の智慧派という邪教集団が本拠地を置いていてな。奴らは、ずっと昔から悪魔勇者を召喚するために生贄の儀式を続けていたって話だ」
村長によると、今から約6年前、星の智慧派によるクーデターでファーレンが滅亡し、セイジュウ神聖帝国が誕生したということだった。
セイジュウ神聖帝国は、魔族を引き入れて大陸を制覇しようとしている。しかも、彼らの率いる魔物は、これまで神話や伝説でしか語られることがなかったような強力なものがいるという。これはおそらく妖異のことだろう。
「皇帝セイジュウは黒竜までも配下に加えたらしい。人類軍の足並みが揃ってない今、神聖帝国に寝返る国は増えていくことだろうな」
「黒竜? それってうちのドラゴンと同じ竜族ってことですか?」
「そうだ。ドラゴンの中でも、黒竜は最も強いと言われている。黒竜を配下に加えた神聖帝国は、今や大陸最強の国と言って間違いないだろう」
あとでルカに聞いてみよう。頭から煙出しながら怒りそうな気がする。
それにしても、俺の転生より早い時期に召喚されていることといい、妖異を率いていることといい、間違いなく悪魔勇者で確定だろうな。
最後に確認しておこう。
「村長、その悪魔勇者には強力な眷属とかいたりしませんか?」
「シンイチ殿はご存じだったか。確かに悪魔勇者は十二の眷属を従えている。彼ら眷属はこの世の理を越えた恐ろしい存在だとか」
俺がこの異世界に転生するハメになったのは、悪魔勇者の召喚の巻き添えを食ったからだとエンジェル・キモオタは言っていた。
その際、悪魔勇者には十二の眷属がいるとも。
もはや間違いない。
セイジュウ神聖帝国の皇帝セイジュウは悪魔勇者だ。
~ 生存者 ~
それにしても、エンジェル・キモオタには、いつか直接クレームを入れてやりたい。
異世界転生したらハーレムでウハウハだとか、
勇者転生と違い、俺のような一般転生者はハーレムでウハウハだとか、
チートスキルがあるからハーレムウハウハだとか、
広告に偽りしかなかったじゃないか!
というか、勇者死んでたし! 雪山の中で頭空っぽにして死んでたし!
(そういや、ココロチン。次の勇者はどうなってるの? 新しい勇者は召喚されたの?)
(ココロ:次の勇者をどうするかについては、まだ天上界で色々と揉めてまして……)
(ちょっ! それってヤバくない? このままじゃ大陸全土が悪魔勇者の手に墜ちちゃうよ?)
(シリル:ずっと検討を続けてはいるようなのですが……)
(もういっそのこと、軍隊とか丸ごともってきて、さっさと悪魔勇者にミサイルでもブチ込んでくれよ!)
(ココロ:そんな無茶言わないでください!)
(シリル:そんなことしたら次元監視者に目を付けられる。そうなったら世界そのものが消されてしまいかねません)
(ま、まぁ……軍隊とは言わないけど、とにかく勇者を呼んで悪魔勇者を退治してもらいたいんだよ。そうじゃないと、ハーレムどころか、のんびりスローライフさえ不可能じゃんか!)
あっ、なんだか腹が立ってきた。
二人に、エンジェル・キモオタへの直接クレームを申請しようとしたところで、突然、大きな声が耳に入ってきた。
「村長! モリオン村の男が北門で行き倒れていました!」
白狼族の若者二人が、ぐったりとした男を両脇で支えながら、村長の家に入ってきた。
男を長椅子に寝かせると、若者の一人が発見時の状況について村長に報告する。
「この男は、北門まで辿りついたところで力尽きたようです」
白狼族の若者は、以前、モリオン村を訪れたときにこの男を見たことがあって、顔を覚えていたらしい。名前までは憶えていなかったものの、この男がモリオン村の住人であることは確かなようだ。
移動中に魔物か盗賊にでも襲われたのか、長椅子に横たわる男の姿はボロボロで、小さな傷がいくつも見受けられた。
村長は、男の顔を覗き込んでから言った。
「アーシェを呼んで手当してやれ。この男が回復するのを待って詳しい話を聞くことにしよう」
とりあえず今日のところは、グレイベア村へ帰還は見送りになりそうだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!
こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」
主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。
しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。
「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」
さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。
そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)
かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる