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第169話 追跡者の夜 Side:妖異
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~ クリプティクス・シャドウ ~
モリオン村で虐殺を終えたクリプティクス・シャドウは、ただ一人馬に乗って逃亡した男の後を追うことにした。
その足取りはゆっくりとしたものだった。だが、逃亡した男と違って、クリプティクス・シャドウは昼夜休むことなく後を追い続けることができる。
このまま南に向って進み続けていれば、やがては疲れて倒れこんだ男の元へ辿り着くことになるはずだ。妖異はそう確信していた。
陽が落ちた後でも、クリプティクス・シャドウは足を止めることなく、夜の闇に溶け込みながら男の後を追い続けた。
そうして進むうち、遠い道の先に小さな灯りが見えて来た。
近づくに連れ、それが焚火であることがわかってきた。焚火の周囲に数人の人間がいることも、すぐわかった。冒険者か旅行者か商人か、それはわからなかった。そもそも、彼らが誰であろうとどうでもよかった。
とにかく新たな犠牲者を認めた妖異は、音を殺して静かに人間たちの傍に近づいて行く。
クリプティクス・シャドウが、他の妖異より人々から恐れられている理由が、この慎重さであった。
獲物を認めるなり、その血を求めてすぐに襲い掛かる妖異と異なり、この妖異は隠れた場所から獲物をじっくりと観察し、獲物の弱点や他に敵がいないかをじっくりと見極めてから襲い掛かる。
恐るべき狩人であった。
クリプティクス・シャドウはこの慎重さで、何十人もいる村や兵士の野営を襲い、これらを壊滅させてきた。
今、焚火の周囲にいる人間は全員で6人。慎重な妖異にとっても、これは全く簡単な狩猟であった。
どの人間からどのように残虐に、恐怖を与えながら殺していくかを、クリプティクス・シャドウはじっくりと考えた。
焚火の前に一人の人間が立ち上がった。あの中では一番若い人間のようだ。子供のようにも見える。
まずはあの子供から狩り始めるとしよう。
クリプティクス・シャドウは、子供をいかに残虐に殺すかを想像して、思わず舌なめずりをした。
そして、子供に近づこうと足を一歩進めたとき、
目に強い光が入った。
それはとても眩しく、クリプティクス・シャドウは思わず目を閉じた。
そして、
クリプティクス・シャドウは二度と目を開くことはできなかった。
薄れゆく意識の中で、妖異は自分が耳にした人間の言葉について考えていた。
全ての言葉を理解しているわけではないものの、これまで残虐に殺してきた人間が今わの際に発した言葉の意味を想像するのは、クリプティクス・シャドウにとって大きな楽しみのひとつだった。
「【幼女化ビーム!】(1秒)」
あれは一体、どういう悲鳴だったのだろうか。
クリプティクス・シャドウは、その意味をあれこれと想像しながら、意識を失っていった。
~ 妖異将軍イゴローナックル ~
アシハブア王国の攪乱のために送り込んだ妖異が、行方不明になる事態が多発している現状に、イゴローナックル将軍は頭を抱えていた。
有象無象の妖異と違い、ショゴタンや森の仔山羊などの大型妖異を何体も失うのは、王国攻略上の戦略にまで影響を与えかねない事態である。
ショゴタンがいる部隊は、全員が消失するため、どのような戦場だったのかを知ることもできない。
大型妖異の消失は、アシハブア王国の北東部で起こっている。ここに何かあることは間違いない。
大型妖異の様子を遠くから観察するものを付ける必要があるだろう。
北東部には、確かクリプティクス・シャドウがいたはずだ。
奴に命じで、ショゴタン部隊を観察させることにしよう。
奴であれば、敵に見つかることもなく、必要な情報を持ち返ることができるだろう。
イゴローナックル将軍は、クリプティクス・シャドウに新たなる命令を届けさせることにした。
だが――
その命令が届くことはなかった。
モリオン村で虐殺を終えたクリプティクス・シャドウは、ただ一人馬に乗って逃亡した男の後を追うことにした。
その足取りはゆっくりとしたものだった。だが、逃亡した男と違って、クリプティクス・シャドウは昼夜休むことなく後を追い続けることができる。
このまま南に向って進み続けていれば、やがては疲れて倒れこんだ男の元へ辿り着くことになるはずだ。妖異はそう確信していた。
陽が落ちた後でも、クリプティクス・シャドウは足を止めることなく、夜の闇に溶け込みながら男の後を追い続けた。
そうして進むうち、遠い道の先に小さな灯りが見えて来た。
近づくに連れ、それが焚火であることがわかってきた。焚火の周囲に数人の人間がいることも、すぐわかった。冒険者か旅行者か商人か、それはわからなかった。そもそも、彼らが誰であろうとどうでもよかった。
とにかく新たな犠牲者を認めた妖異は、音を殺して静かに人間たちの傍に近づいて行く。
クリプティクス・シャドウが、他の妖異より人々から恐れられている理由が、この慎重さであった。
獲物を認めるなり、その血を求めてすぐに襲い掛かる妖異と異なり、この妖異は隠れた場所から獲物をじっくりと観察し、獲物の弱点や他に敵がいないかをじっくりと見極めてから襲い掛かる。
恐るべき狩人であった。
クリプティクス・シャドウはこの慎重さで、何十人もいる村や兵士の野営を襲い、これらを壊滅させてきた。
今、焚火の周囲にいる人間は全員で6人。慎重な妖異にとっても、これは全く簡単な狩猟であった。
どの人間からどのように残虐に、恐怖を与えながら殺していくかを、クリプティクス・シャドウはじっくりと考えた。
焚火の前に一人の人間が立ち上がった。あの中では一番若い人間のようだ。子供のようにも見える。
まずはあの子供から狩り始めるとしよう。
クリプティクス・シャドウは、子供をいかに残虐に殺すかを想像して、思わず舌なめずりをした。
そして、子供に近づこうと足を一歩進めたとき、
目に強い光が入った。
それはとても眩しく、クリプティクス・シャドウは思わず目を閉じた。
そして、
クリプティクス・シャドウは二度と目を開くことはできなかった。
薄れゆく意識の中で、妖異は自分が耳にした人間の言葉について考えていた。
全ての言葉を理解しているわけではないものの、これまで残虐に殺してきた人間が今わの際に発した言葉の意味を想像するのは、クリプティクス・シャドウにとって大きな楽しみのひとつだった。
「【幼女化ビーム!】(1秒)」
あれは一体、どういう悲鳴だったのだろうか。
クリプティクス・シャドウは、その意味をあれこれと想像しながら、意識を失っていった。
~ 妖異将軍イゴローナックル ~
アシハブア王国の攪乱のために送り込んだ妖異が、行方不明になる事態が多発している現状に、イゴローナックル将軍は頭を抱えていた。
有象無象の妖異と違い、ショゴタンや森の仔山羊などの大型妖異を何体も失うのは、王国攻略上の戦略にまで影響を与えかねない事態である。
ショゴタンがいる部隊は、全員が消失するため、どのような戦場だったのかを知ることもできない。
大型妖異の消失は、アシハブア王国の北東部で起こっている。ここに何かあることは間違いない。
大型妖異の様子を遠くから観察するものを付ける必要があるだろう。
北東部には、確かクリプティクス・シャドウがいたはずだ。
奴に命じで、ショゴタン部隊を観察させることにしよう。
奴であれば、敵に見つかることもなく、必要な情報を持ち返ることができるだろう。
イゴローナックル将軍は、クリプティクス・シャドウに新たなる命令を届けさせることにした。
だが――
その命令が届くことはなかった。
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