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第193話 コボルト村急襲1
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その日は、女神クエストがまた3件も重なっていた。
その全てが深淵の黒腕の狩猟クエストであり、妖異たちは相変わらずグレイベア村を目指して突き進んでいる。
どのルートを使えば、効率よく妖異討伐が行なえるか。俺はグレイベア村妖異対策局の一室で地図を広げて、ルカとグレイちゃんに相談していた。
「手近な奴から蹴散らかしていけば良いじゃろう」
「それじゃ、今回もルカちゃんの背中に乗って移動かぁ……」
「なんじゃその言い草は! わらわの背に乗るのに何か不満でもあるのか!?」
「いやぁ……乗り心地っていうか……ほら、上下に激しく揺れるじゃん? それで空中酔いするっていうか……」
「貴様! ドラゴンに乗れる人間など、この世に幾人おるかどうか! いや歴史でも神話に遡るくらいじゃないとおらんと言うに! そんなしょーもないことで文句を言うとか、どんだけバチあたりなことか少しは自覚せんか!」
「えぇ、そうだったの!? なんか急にありがたみを感じてきたよ! ありがとうルカちゃん!」
せっかく御礼を言ったにも関わらず、ルカは尻尾で俺の尻をビシバシと叩き続ける。
「まぁ、ありがたみはともかく、空中の移動は帝国ハイランドのジェットコースターに乗り続けてる感じで、疲労度が半端ないんだよねぇ」
「上下に揺れるなら、グレイとて同じじゃろうが!」
「いやいや、全然違うんだよ。グレイベアは地上を走るから、揺れが予測できるっていうか、乗馬みたいな感じなの。それに熊毛があるから、手にしっかりと巻きつければ身体も安定させられるし、ふかふかだし……」
「うっ、うっ、うー--!」
グレイちゃんが満面の笑顔になって喜んで、俺の腕をクィックィッと引っ張る。
「き、貴様ぁぁぁ!」
一方、ルカは顔を真っ赤にして、俺の尻に回転尻尾ビンタを決めて来た。
バシッ!
「いっ、痛えぇええ!」
「お前らが落ちんように、ちゃんとロープを掛けさせてやっておるじゃろが! それに、わらわがお前らを乗せて飛ぶとき、どれだけ気を使っているか! それを、それを……貴様という奴は!」
そう言いながら、ルカが再び回転尻尾ビンタの体勢に入る。
「ごめん! ごめんって! ルカちゃん! だから回転尻尾ビンタは止めて! それマジお尻割れるから!」
それから俺はルカちゃんに平謝りに謝って、さらにドラゴンの背中に乗れる誉について、自分がいかに無知蒙昧だったかを語り、色々と言葉を尽くすこと一時間。ようやくルカの怒りを鎮めることができた。
当然、今回のルート移動についてはルカの背中に乗ることに決定。
疲労が少なくて済むグレイベアに乗りたいというのが本心だったが、そんなことルカにバレたらまた噴火しかねなかったので、俺はポーカーフェースを貫いた。
疲労を癒してくれるであろうライラは、昨日からコボルト村で薬草採取に行っている。
まぁ、仕方ない。こういう日もあるさ。
「それじゃ、ルカちゃんの背中に乗せてもらうとしますか」
そうして俺たちが出発しようとしたとき、部屋に飛び込んで来た者があった。
「皇帝陛下! コボルト村の者たちが皇帝陛下へのお目通りを願っております!」
そう報告してきたのはラミア族のミケーネ(金髪碧眼青体。Dカップ)だった。
その表情から何か重大なことがあったというのが分かる。
「コボルト村の? いったい誰が……」
「沢山の者です陛下! 皆、コボルト村が魔族軍に襲われて逃れてきたと言っ……」
「分かった! すぐ行く!」
俺はミケーネの言葉を最後まで待たず、部屋を飛び出した。
「村長宅で保護しております!」
背中からミケーネの言葉が聞こえてきた。
コボルト村が!?
魔族軍に襲われた!?
なんで!?
どうして!?
村長宅へ向かって走りながら、俺の頭はそうした疑問で埋め尽くされていた。
コボルト村は、俺にとっては原点とも言える場所だ。
もはや故郷と言っても良い。
マーカスやネフュー、そしてヴィルやコボルトたちと一緒に、洞窟に潜むゴブリンたちを倒して手に入れた場所。
ライラやステファンを家族として迎え入れた場所。
俺とライラが初めて結ばれた場所。
今は別の大陸に行っているマーカスやヴィルが帰ってくる場所。
ネフューとフィーネがグレイベア村や地下帝国に所用で来る度に、必ず立ち寄る懐かしい部屋がある場所。
大事な、大事な、大事な場所なのだ。
それが、魔族軍に襲われた!?
どういうことなのか頭の理解が追い付かない。いや理解することを拒否しているだけなのかもしれない。
とにかく! コボルト村から逃れて来たという者たちから、一刻も早く話を聞こう。
とにかく! 状況をしっかりと把握するんだ。
状況を……
状況を!?
そこまで考えたとき、俺の足がピタリと止まった。
そして次に、足がガタガタと震え出す。
その震えが大きくなって、ついに立っていられなくなって、腰から崩れ落ちそうになったのを、背後から追いついて来たミケーネが支えてくれた。
ミケーネの後から、ルカとグレイちゃんが駆け寄って来る。
「どうしたのじゃシンイチ!? 大丈夫か!?」
「うーっ!? うーっ!? うーっ!? 」
三人が心配そうに俺の顔を覗き込む。
俺は頷きながら、何とか声を振り絞る。
俺の声は震えていた。
「ラ、ラ、ライラが薬草採取で、コ、ココボルト村に……」
その全てが深淵の黒腕の狩猟クエストであり、妖異たちは相変わらずグレイベア村を目指して突き進んでいる。
どのルートを使えば、効率よく妖異討伐が行なえるか。俺はグレイベア村妖異対策局の一室で地図を広げて、ルカとグレイちゃんに相談していた。
「手近な奴から蹴散らかしていけば良いじゃろう」
「それじゃ、今回もルカちゃんの背中に乗って移動かぁ……」
「なんじゃその言い草は! わらわの背に乗るのに何か不満でもあるのか!?」
「いやぁ……乗り心地っていうか……ほら、上下に激しく揺れるじゃん? それで空中酔いするっていうか……」
「貴様! ドラゴンに乗れる人間など、この世に幾人おるかどうか! いや歴史でも神話に遡るくらいじゃないとおらんと言うに! そんなしょーもないことで文句を言うとか、どんだけバチあたりなことか少しは自覚せんか!」
「えぇ、そうだったの!? なんか急にありがたみを感じてきたよ! ありがとうルカちゃん!」
せっかく御礼を言ったにも関わらず、ルカは尻尾で俺の尻をビシバシと叩き続ける。
「まぁ、ありがたみはともかく、空中の移動は帝国ハイランドのジェットコースターに乗り続けてる感じで、疲労度が半端ないんだよねぇ」
「上下に揺れるなら、グレイとて同じじゃろうが!」
「いやいや、全然違うんだよ。グレイベアは地上を走るから、揺れが予測できるっていうか、乗馬みたいな感じなの。それに熊毛があるから、手にしっかりと巻きつければ身体も安定させられるし、ふかふかだし……」
「うっ、うっ、うー--!」
グレイちゃんが満面の笑顔になって喜んで、俺の腕をクィックィッと引っ張る。
「き、貴様ぁぁぁ!」
一方、ルカは顔を真っ赤にして、俺の尻に回転尻尾ビンタを決めて来た。
バシッ!
「いっ、痛えぇええ!」
「お前らが落ちんように、ちゃんとロープを掛けさせてやっておるじゃろが! それに、わらわがお前らを乗せて飛ぶとき、どれだけ気を使っているか! それを、それを……貴様という奴は!」
そう言いながら、ルカが再び回転尻尾ビンタの体勢に入る。
「ごめん! ごめんって! ルカちゃん! だから回転尻尾ビンタは止めて! それマジお尻割れるから!」
それから俺はルカちゃんに平謝りに謝って、さらにドラゴンの背中に乗れる誉について、自分がいかに無知蒙昧だったかを語り、色々と言葉を尽くすこと一時間。ようやくルカの怒りを鎮めることができた。
当然、今回のルート移動についてはルカの背中に乗ることに決定。
疲労が少なくて済むグレイベアに乗りたいというのが本心だったが、そんなことルカにバレたらまた噴火しかねなかったので、俺はポーカーフェースを貫いた。
疲労を癒してくれるであろうライラは、昨日からコボルト村で薬草採取に行っている。
まぁ、仕方ない。こういう日もあるさ。
「それじゃ、ルカちゃんの背中に乗せてもらうとしますか」
そうして俺たちが出発しようとしたとき、部屋に飛び込んで来た者があった。
「皇帝陛下! コボルト村の者たちが皇帝陛下へのお目通りを願っております!」
そう報告してきたのはラミア族のミケーネ(金髪碧眼青体。Dカップ)だった。
その表情から何か重大なことがあったというのが分かる。
「コボルト村の? いったい誰が……」
「沢山の者です陛下! 皆、コボルト村が魔族軍に襲われて逃れてきたと言っ……」
「分かった! すぐ行く!」
俺はミケーネの言葉を最後まで待たず、部屋を飛び出した。
「村長宅で保護しております!」
背中からミケーネの言葉が聞こえてきた。
コボルト村が!?
魔族軍に襲われた!?
なんで!?
どうして!?
村長宅へ向かって走りながら、俺の頭はそうした疑問で埋め尽くされていた。
コボルト村は、俺にとっては原点とも言える場所だ。
もはや故郷と言っても良い。
マーカスやネフュー、そしてヴィルやコボルトたちと一緒に、洞窟に潜むゴブリンたちを倒して手に入れた場所。
ライラやステファンを家族として迎え入れた場所。
俺とライラが初めて結ばれた場所。
今は別の大陸に行っているマーカスやヴィルが帰ってくる場所。
ネフューとフィーネがグレイベア村や地下帝国に所用で来る度に、必ず立ち寄る懐かしい部屋がある場所。
大事な、大事な、大事な場所なのだ。
それが、魔族軍に襲われた!?
どういうことなのか頭の理解が追い付かない。いや理解することを拒否しているだけなのかもしれない。
とにかく! コボルト村から逃れて来たという者たちから、一刻も早く話を聞こう。
とにかく! 状況をしっかりと把握するんだ。
状況を……
状況を!?
そこまで考えたとき、俺の足がピタリと止まった。
そして次に、足がガタガタと震え出す。
その震えが大きくなって、ついに立っていられなくなって、腰から崩れ落ちそうになったのを、背後から追いついて来たミケーネが支えてくれた。
ミケーネの後から、ルカとグレイちゃんが駆け寄って来る。
「どうしたのじゃシンイチ!? 大丈夫か!?」
「うーっ!? うーっ!? うーっ!? 」
三人が心配そうに俺の顔を覗き込む。
俺は頷きながら、何とか声を振り絞る。
俺の声は震えていた。
「ラ、ラ、ライラが薬草採取で、コ、ココボルト村に……」
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