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#24:Die schmerzlose Bestie
The language of Forget-me-not 02
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渋撥が脳内で悪態を吐いたとき、禮がスッと立ち上がった。
「夜ちゃん離して」
「あ? コイツ立って――」
「離して」
禮は傍にいた男に声をかけられたが無視した。夜子の腕を掴まえている大塔の後頭部に目線を固定していた。
大塔は禮の声が聞こえているのかいないのか振り返りもしなかった。
ヒュオッ、と少女が素早く動いた。素早すぎて男にはそれくらいのことしか認識できなかった。次の瞬間、視界の外から黒いものが跳ね上がった。
バキィイイッ!
「ガカッ‼」
男は顎を蹴り上げられて初めて黒いものの正体がローファーのソールであったと認知した。体を大きく仰け反らせ、アスファルトに横転した。
「禮あかんッ!」
夜子の制止も聞かず禮は一足飛びに標的との距離を詰めた。標的が異変に気づいたときは、すでに少女の爪先が地から離れていた。これはもうこの俊敏で獰猛な生き物の射程範囲内。
大塔は反射的に掴まえていたものから手を離し、本能でもって防衛モードに移行した。
ガキンッ!
視界を斜めに切り裂く黒い一閃。
正確に顎先を捉えようとした禮のキックを、大塔は咄嗟ながら構えた腕でガードしていた。遠心力の乗った衝撃が弾け、腕から指先までビリリッと強烈な痺れが走った。
「グッ……! このジャリッ!」
禮は蹴りを繰り出した利き足を引き戻した。大塔のほうへ片肩を突き出した格好で腰をやや落とし、右爪先を前に出し、左足を後方に引いた。完全に臨戦態勢に入ったことは誰の目にも明らかだ。
「アホが! 温和しゅうしとけ!」
渋撥が吠えた瞬間、ピンと来た。大塔は目を見開いて禮の顔を凝視した。
貴石のように艶めく檳榔子黒の瞳。細い黒髪の隙間から鱗粉のようなものが漂う。これほどハッキリと感じたことは未だかつてない、これが所謂闘気というものなのだろう。無色透明の鱗粉が、まじろぎをする度に睫毛から離れ、空気中を漂って霧散した。
なんと現実味のない。目の前にいるのは、少女の姿を借りた化生か。
「コレかァ」
大塔は渋撥のほうを振り返ってニヤリと口角を引き上げた。
渋撥は決して「是」とは答えなかったが、大塔が確信を得るのにそのようなものは必要なかった。目の動きを見れば分かる。
「……目の色変わったな。アホほど分かりやすいヤツや」
大塔の手が離れ身動きができるようになった夜子が、禮に駆け寄った。
「夜ちゃんさがって」
「禮。アンタなんてこと……せっかく渋撥はんがッ……」
「さがってて。危ないから」
禮の視線は敵に固定されていた。敵を目前にして落ち着いた声だった。もう心を決めてしまっているからだ。
夜子は禮の言葉を聞いて、半ば諦めた。我を通すときだけそのような顔をするのは昔からの狡い癖だ。いつも無邪気に甘えてくる少女の面を捨て、武人の顔をする。
夜子が一歩離れた瞬間、禮は地を蹴った。大塔との距離を詰めるのは秒もかからない。両手を拘束されたまま大きく身を翻して蹴りを繰り出した。
ブオンッ、と禮の回し蹴りが空を切った。禮は攻撃の手を緩めなかったが、大塔は高速の連撃をすんでの所で躱し続けた。武闘派と称される暴走族を率いており、自身も喧嘩や暴力には慣れている。
バシィンッ、と大塔は顔面に跳ね上がってきた蹴りを腕のガードで受け止めた。
「っぶない女やな」
そう言う大塔には余裕があった。
同時に、禮は自身の不利を理解していた。両腕を拘束されており、いつもの絶妙なバランス感覚は有り得ない。最大の長所であるスピードは殺がれ、動きには格段にキレが無い。ずぶの素人や不意打ちならまだしも、場慣れしている者なら冷静に距離を取って視野を広くとられると対応されてしまう。
大塔の余裕には、両腕の拘束というハンディ以上の理由があった。暴君の寵姫が見た目どおりの可憐な少女ではないことは分かった。足が尋常でなく迅いことも分かった。しかし、現状を覆す脅威たり得ない。結局のところ、切り札を握っているのは大塔のほうだ。
キャァアアーッ!
甲高い悲鳴が聞こえ、禮はハッとして足を停めた。
椛と和々葉は男たちに腕を掴まれ動きを封じられ、怯えきって泣きじゃくった。それを無視して振り切れるわけがなかった。禮が今の今までこのような輩に服従していた最大の理由はそれだ。渋撥を傷つけられても、渋撥が堪え忍ぶ様を見せつけられても、涙を溜めて黙っていたのは彼女たちを守る為だ。
大塔は、動きを停めた禮を見てニヤニヤと口の端を歪めた。見こんだとおりの性情であることが滑稽だった。
「その辺にしとけ、嬢ちゃん。まさかみんながみんな、オマエみたいな真似がでけるワケちゃうやろ。こっちは近江のオンナ……オマエさえ押さえりゃあ他には用あれへん。温和しゅうしといたほうが利口やで」
禮は肩から力を抜き、拘束されている両腕をぶらんと提げた。
大塔は禮から戦意が完全に消失したのを感じ取った。不思議なもので、そうなるとまるで別人のようだ。ただの年相応な可憐な少女が立っている。
「あの体勢から手ェ使わずに蹴り出せるなんかエエ特技持っとんな、嬢ちゃん。近江もなかなか趣味がええで」
大塔が禮の頬に触れようと手を伸ばした。
それを目にした途端、渋撥は自分でも信じられない力でギチリッと奥歯を噛み締めた。片膝を立てたかと思うと、一気に立ち上がった。
渋撥に暴行を加えていた男たちは、ギョッとして半歩後退った。
「コイツッこんだけ殴られてまだ立つのかよ……ッ」
「このッ、バケモンが!」
「俺のオンナに手ェ出したらブチ殺すぞコラァアアッ‼」
鉄鎖に繋がれた野獣の咆哮が谺して鐵の檻を震撼させた。野獣の咆哮がビリッビリッと空気を割って心臓を叩く。圧迫感から鼓動が速くなり、額から脂汗が滲み出る。此処が自分たちの縄張りでなければ、獣が拘束されていなければ、彼らは間違いなく逃げ出していただろう。
獣だ。人などではない。此処にいるのは人がましい魔のものだ。
人がましい――――そうだ、獣の本性を隠し、たったひとりの女を守る為、人間みたいな真似をする。ひたすら女を守る為に、ただそれだけの為に服従を選び取った。その為には己の片腕を切り落とすほどの忍耐が必要だ。暴君と称される厚顔無恥で尊大で不遜な王が、普段なら目もくれぬ賤しい身分の者どもに頭を垂れて黙って従うなど、いかほど屈辱的な行為であるか。
「黙っとけやウドがッ!」
大塔は渋撥を睨みつけて怒喝を浴びせた。
禮はその反応にやや違和感を持った。女に蹴りを出されても飄々とした男が渋撥の一挙手一投足には必要以上に過敏に反応しているようだ。渋撥のやることなすことすべてが癇に障り、その存在そのものが憎くて仕方がないかのように。
「オイオイオイ。誰も立っていいつってねーぞ!」
大塔の怒喝により威勢を取り戻した緋色の男のひとりが、渋撥の膝の裏をガスッと蹴り飛ばした。しこたま殴られたあとの巨躯は、グラリと前のめりに傾いて片膝を付いた。
渋撥は自分を蹴ったに違いない男を肩越しに睨みつけた。その目から光は失われていなかった。
「ワレェ、そのツラしっかりメモリーしたからな。後で覚えとれよコッパがァ」
「っ……く!」
「その様でどっからそんな自信湧いてくんだこのガキ」
その様――――現状の渋撥は、彼に怨恨を持つ者ならば指を差して腹を抱えて笑う惨めなナリだ。しかし、彼は一部も尊厳を失わない。損なおうとする輩が反対にたじろいでしまうほどに全い王者で在り続ける。そのような振る舞い方しか知らぬ彼は、如何なる状況に置かれても欠けたるところが無い故に、ただ其処に在るだけで小さく歪んだ下賤の者を貶める。
賤しい者は王の炯眼に耐えられず、再び拳を振り上げた。
禮の意識が渋撥のほうへ逸れた瞬間、ドンッと肩を突き飛ばされた。禮はアスファルトの上に尻餅を付く格好になった。機敏にサッと突き飛ばした犯人である大塔を睨んだ。
大塔は禮の眼前にしゃがみこんだ。禮が抵抗できないことを知っているから特に警戒は無かった。
「そんな恐いカオせんどけや。俺かて好きでこんなことやっとんとちゃうんやで」
「嘘吐き。ハッちゃんのことキライなクセに」
禮に言い返され、大塔は意外そうに首を傾げた。自分ではポーカーフェイスを気取っているつもりだったのだが初対面の少女にまで断言されるとは、渋撥への憎しみは思ったよりも在り在りと滲み出ているらしい。
「そやなあ、アイツには恨んでも恨みきれん恨みがあるわ。こんなモンじゃあ俺の気は済めへん。そもそも、俺が用があるのはアイツだけで、嬢ちゃんたちはただの巻き添えや。運が悪かったなー、あんなバケモンと一緒におって」
「ほなウチの友だち今すぐ帰してよ!」
禮に間髪入れずに物申され、大塔は目をやや大きくした。
「自分も帰せとは言わへんのか。おっそろしく肝の据わったオナゴや」
「ウチはハッちゃんと一緒やないと帰らへん」
「…………。ほな早いとこ用済ますか」
大塔は禮の顎を指に乗せ、クイッと上向きにさせた。
暴君の寵姫は一瞬たりとも目を逸らそうとしなかった。後ろめたさも恐れもなく、逃げようともせず、蔑んだり侮ったりもしない、忌々しいくらい清々した瞳。その清廉さは、暴君に対する憎しみとはまた異なる意味で疎ましく感じた。
「なァ嬢ちゃん、オマエが近江のオンナっちゅうなら、アイツがこの世で一番大事にしとるモン、どこに隠しとるか知っとるか?」
大塔の問いかけは意外なものだった。
禮はその答を知らないし、これまで考えてみたこともなかった。渋撥のことが憎くて仕方がないこの男が、禮でも知らない渋撥の大事なものを知っているというのも妙な話だ。
第一、何故そのようなものを求めるのか。手に入れて何とするつもりなのか。壊す為か、奪う為か、捨てる為か、隠す為か、否、いずれにしても回りくどい。憎い渋撥への恨みを晴らすなら、弱味を握って自由を奪った現状で充分であるはずだ。
然らば、渋撥を痛めつけることは目的ではなく手段なのだ。渋撥に対して尋常ならざる憎しみを抱いているこの男にとって、それを晴らすことよりも重要なこととは一体何だ。
「ハッちゃんの大事なもん? それを……どうすんの?」
「そんなことオマエに言うても解れへん。俺はこう見えてロマンティストでな」
解らない。何を考えているのかまったく解らない。禮にはこの男の本心を理解することはできない。彼の目は暗く曇っており、雨降りの川の水面のように澱んでいる。禮はこのように光の差しこまない瞳をいまだかつて見たことがなかった。
禮が戸惑って黙りこんでいると、大塔はガッカリという風に嘆息を漏らした。禮の顎から手を離して立ち上がった。
「知らんならオマエとこれ以上喋る意味はあれへん」
大塔は禮に背を向け、用無しとでも言わんばかりに手を振った。
「女の泣き声は喧しいさかい嫌いや。オトモダチと無事に家に帰りたかったら精々静かにしとけ」
「ハッちゃんにこれ以上何する気なん!」
「オマエが知らんなら、答知っとるヤツに直接聞くに決まっとるやろ」
禮が立ち上がろうとすると、大塔の手下に肩を掴まれて元の位置に押し戻された。
大塔は禮を横目で見てその男に顎で指図した。
「オウ。この女よう見とけよ。さっきの見たやろ、ビックリするくらい足癖の悪い女や」
それだけ言い残し、渋撥のほうへと爪先を向けた。
渋撥は顔面と肩から地に突っ伏していた。
緋色の男たちは、渋撥を見下ろして自分の手首を握ってプラプラと左右に振った。硬い物を殴りすぎて赤く腫れた拳が、渾身の力で渋撥の顔面を叩きつけていたことを物語っている。
「くあぁっ。何つー頑丈なヤローだ。俺もう手が痛ェー」
「はあっ、はあっ、はあっ……。さっきからウンともスンとも言わねーけど、生きてんのかコレ」
渋撥に暴行を加えていた男たちは、その一言で我に返ってピタリと手を止めて沈黙した。急にしんと静まり、隣に立っている仲間の荒い息遣いや自分の鼓動がやけに大きく聞こえる。彼らは撓んだ輪を描き、巌石のような渋撥の背中を見下ろし、無意識に、しかしながら必死に呼吸を整えようとした。
呼吸を乱すほど夢中になって我武者羅になって殴り続けた理由は、実のところ彼ら自身もよく分からない。圧倒的優位な情況であるはずなのに冷静さを失っていた。総長からの命令とはいえ、あまりにも必死だった。攻撃しているのは自身のほうなのに、何かに駆り立てられるように随分と余裕がなかった。
物言わぬ巌石のような男が、草叢で息を殺す野獣のような男が、恐ろしい。理屈ではなく恐ろしい。絶対強者に対して本能が恐れてしまう。兇悪なまでの獣性で以てして君臨する暴威の王は、その眼孔のみで人心を縛る。
大塔が近づいてきて、輪を作って渋撥を取り囲んでいた男たちは左右に割れて道を作った。
「大塔さん。コイツさっきから全然動かねーんスけど……。どうします?」
大塔はあと数センチで爪先が渋撥の頭に当たろうかという間近で足を止めた。アスファルトに突っ伏した巨躯を眼下に俯瞰した。
「オイ、生きとるかウド。生きとる内に聞いとかなあかんことがあんねん。答えてから死ね」
ずりっ、ずりっ、ずりっ、と死体が這いずり回るように、渋撥は肩を地面に引き摺るようにして上半身を起こした。額が切れて出血によって片目が開けられず、視界は半分。その狭い視界の中でも、口の端を吊り上げた大塔の嫌な笑みはしっかりと見えた。
好き放題に痛めつけやがって。さぞかし面白可笑しいことだろう。
「〝あの人〟が遺したモン、そろそろ返して貰おうか」
大塔の言葉を聞き、渋撥の口からは嘲笑が漏れそうになった。殴打されて腫れ上がっていなければきっと頬は笑っていたに違いない。
この街きっての過激派である赤菟馬の総長・大塔轍弥が、随分とセンチメンタルなことじゃないか。過分なくらい誇大なくらい己の存在を誇示しても、そうか、そのような想い出を後生大事にしているのか。唸りを上げて風を切る鉄馬に跨がり、結局は同じところをグルグルと回っているだけじゃないか。
「アレはあの人のモンや。あの人のモンは全部俺がもらう。受け取る根性もあれへんクセに未練がましく傍に置きくさって」
渋撥は口内に溜まった鉄の味がする気持ちの悪い液体をベッと吐き捨てた。
「未練がましいのはどっちや。いつまんでもモノなんぞにこだわりよって」
「なに偉そうな口きいとんねん。オマエのモンちゃうぞボケコラッ!」
「オドレのモンでもあれへんやろがァッ!」
渋撥は大塔よりも一回り大きな声で即座に怒鳴り返した。しこたま殴り続けられるのも、喧しい男の怒声を聞かせられるのも、妄執に付き合わされるのも、心底うんざりする。
「アレァ確かに俺のモンちゃう。俺には必要ないモンや……。せやけどオドレに偉そな口叩かれる義理なんざあれへんねん、ボケが」
渋撥は辟易する気持ちを乗せて唾棄した。
大塔の眉尻はピクッピクッと痙攣した。いくら叩きのめしても屈しない、その気配すらも見せない渋撥の態度は、彼を無性に腹立たせた。
「散々はつり回された割には随分しっかりしとるのォ。オドレ相手にこんなモンじゃあ生温かったなァ?」
緋色の特攻服のなかには、渋撥への暴行には加わらず見物に回っている者もいた。或る男はバットを支えにして突っ立っていた。大塔はその男からバットを乱暴に毟り取った。渋撥の肩の上にバットの先端を置いた。
ぽつん――、バットを置かれた拍子に、渋撥の顎から血液が滴って太腿の上に落ちた。
「あの人が死んで…………何でオドレみたいなクサレがのうのうと生きとんねん」
大塔は、渋撥の肩の高さからバットを水平に滑らせ、或る程度離した位置でピタリと止めた。つまり、バットを振りかぶった体勢で停止した。
「ワレェ自分で考えたことあれへんのか。オドレみたいなクサレが何の役に立つのか。生きとって意味なんかあれへんやろ」
ぽつん――、渋撥がフッと嘲弄した拍子にまた一雫、血液が落ちた。
「生きとる意味……? クサイことぬかすな。青春ドラマ観すぎなんじゃタコ」
頭の高さに据えられた金属バット。白刃を向けられているようなものなのに、渋撥はそれを意に介さず大塔を真っ直ぐに見据えていた。
それ故に大塔は確信を得た。此は俺とは違う化け物なのだと。化け物だから人が当然知っている罪悪や恐怖を知らぬのだと。
「やっぱ生きとる意味あれへんわ。ワレェ人間ちゃうからな」
ぽつん、ぽつん。ぽつぽつぽつ――。小雨のように振り落ちる赤い赤い血液。次から次へと流れ出て、譬え日夜かけて川になろうとも、それでもこの魔物はまだ息をしているような気がする。
「三途の川で詫びてこいやドグサレがぁあッ‼」
大塔は怒号を上げた。掲げたバットを渋撥の頭目がけて振り出した。
「ハッちゃんッ……!」
「夜ちゃん離して」
「あ? コイツ立って――」
「離して」
禮は傍にいた男に声をかけられたが無視した。夜子の腕を掴まえている大塔の後頭部に目線を固定していた。
大塔は禮の声が聞こえているのかいないのか振り返りもしなかった。
ヒュオッ、と少女が素早く動いた。素早すぎて男にはそれくらいのことしか認識できなかった。次の瞬間、視界の外から黒いものが跳ね上がった。
バキィイイッ!
「ガカッ‼」
男は顎を蹴り上げられて初めて黒いものの正体がローファーのソールであったと認知した。体を大きく仰け反らせ、アスファルトに横転した。
「禮あかんッ!」
夜子の制止も聞かず禮は一足飛びに標的との距離を詰めた。標的が異変に気づいたときは、すでに少女の爪先が地から離れていた。これはもうこの俊敏で獰猛な生き物の射程範囲内。
大塔は反射的に掴まえていたものから手を離し、本能でもって防衛モードに移行した。
ガキンッ!
視界を斜めに切り裂く黒い一閃。
正確に顎先を捉えようとした禮のキックを、大塔は咄嗟ながら構えた腕でガードしていた。遠心力の乗った衝撃が弾け、腕から指先までビリリッと強烈な痺れが走った。
「グッ……! このジャリッ!」
禮は蹴りを繰り出した利き足を引き戻した。大塔のほうへ片肩を突き出した格好で腰をやや落とし、右爪先を前に出し、左足を後方に引いた。完全に臨戦態勢に入ったことは誰の目にも明らかだ。
「アホが! 温和しゅうしとけ!」
渋撥が吠えた瞬間、ピンと来た。大塔は目を見開いて禮の顔を凝視した。
貴石のように艶めく檳榔子黒の瞳。細い黒髪の隙間から鱗粉のようなものが漂う。これほどハッキリと感じたことは未だかつてない、これが所謂闘気というものなのだろう。無色透明の鱗粉が、まじろぎをする度に睫毛から離れ、空気中を漂って霧散した。
なんと現実味のない。目の前にいるのは、少女の姿を借りた化生か。
「コレかァ」
大塔は渋撥のほうを振り返ってニヤリと口角を引き上げた。
渋撥は決して「是」とは答えなかったが、大塔が確信を得るのにそのようなものは必要なかった。目の動きを見れば分かる。
「……目の色変わったな。アホほど分かりやすいヤツや」
大塔の手が離れ身動きができるようになった夜子が、禮に駆け寄った。
「夜ちゃんさがって」
「禮。アンタなんてこと……せっかく渋撥はんがッ……」
「さがってて。危ないから」
禮の視線は敵に固定されていた。敵を目前にして落ち着いた声だった。もう心を決めてしまっているからだ。
夜子は禮の言葉を聞いて、半ば諦めた。我を通すときだけそのような顔をするのは昔からの狡い癖だ。いつも無邪気に甘えてくる少女の面を捨て、武人の顔をする。
夜子が一歩離れた瞬間、禮は地を蹴った。大塔との距離を詰めるのは秒もかからない。両手を拘束されたまま大きく身を翻して蹴りを繰り出した。
ブオンッ、と禮の回し蹴りが空を切った。禮は攻撃の手を緩めなかったが、大塔は高速の連撃をすんでの所で躱し続けた。武闘派と称される暴走族を率いており、自身も喧嘩や暴力には慣れている。
バシィンッ、と大塔は顔面に跳ね上がってきた蹴りを腕のガードで受け止めた。
「っぶない女やな」
そう言う大塔には余裕があった。
同時に、禮は自身の不利を理解していた。両腕を拘束されており、いつもの絶妙なバランス感覚は有り得ない。最大の長所であるスピードは殺がれ、動きには格段にキレが無い。ずぶの素人や不意打ちならまだしも、場慣れしている者なら冷静に距離を取って視野を広くとられると対応されてしまう。
大塔の余裕には、両腕の拘束というハンディ以上の理由があった。暴君の寵姫が見た目どおりの可憐な少女ではないことは分かった。足が尋常でなく迅いことも分かった。しかし、現状を覆す脅威たり得ない。結局のところ、切り札を握っているのは大塔のほうだ。
キャァアアーッ!
甲高い悲鳴が聞こえ、禮はハッとして足を停めた。
椛と和々葉は男たちに腕を掴まれ動きを封じられ、怯えきって泣きじゃくった。それを無視して振り切れるわけがなかった。禮が今の今までこのような輩に服従していた最大の理由はそれだ。渋撥を傷つけられても、渋撥が堪え忍ぶ様を見せつけられても、涙を溜めて黙っていたのは彼女たちを守る為だ。
大塔は、動きを停めた禮を見てニヤニヤと口の端を歪めた。見こんだとおりの性情であることが滑稽だった。
「その辺にしとけ、嬢ちゃん。まさかみんながみんな、オマエみたいな真似がでけるワケちゃうやろ。こっちは近江のオンナ……オマエさえ押さえりゃあ他には用あれへん。温和しゅうしといたほうが利口やで」
禮は肩から力を抜き、拘束されている両腕をぶらんと提げた。
大塔は禮から戦意が完全に消失したのを感じ取った。不思議なもので、そうなるとまるで別人のようだ。ただの年相応な可憐な少女が立っている。
「あの体勢から手ェ使わずに蹴り出せるなんかエエ特技持っとんな、嬢ちゃん。近江もなかなか趣味がええで」
大塔が禮の頬に触れようと手を伸ばした。
それを目にした途端、渋撥は自分でも信じられない力でギチリッと奥歯を噛み締めた。片膝を立てたかと思うと、一気に立ち上がった。
渋撥に暴行を加えていた男たちは、ギョッとして半歩後退った。
「コイツッこんだけ殴られてまだ立つのかよ……ッ」
「このッ、バケモンが!」
「俺のオンナに手ェ出したらブチ殺すぞコラァアアッ‼」
鉄鎖に繋がれた野獣の咆哮が谺して鐵の檻を震撼させた。野獣の咆哮がビリッビリッと空気を割って心臓を叩く。圧迫感から鼓動が速くなり、額から脂汗が滲み出る。此処が自分たちの縄張りでなければ、獣が拘束されていなければ、彼らは間違いなく逃げ出していただろう。
獣だ。人などではない。此処にいるのは人がましい魔のものだ。
人がましい――――そうだ、獣の本性を隠し、たったひとりの女を守る為、人間みたいな真似をする。ひたすら女を守る為に、ただそれだけの為に服従を選び取った。その為には己の片腕を切り落とすほどの忍耐が必要だ。暴君と称される厚顔無恥で尊大で不遜な王が、普段なら目もくれぬ賤しい身分の者どもに頭を垂れて黙って従うなど、いかほど屈辱的な行為であるか。
「黙っとけやウドがッ!」
大塔は渋撥を睨みつけて怒喝を浴びせた。
禮はその反応にやや違和感を持った。女に蹴りを出されても飄々とした男が渋撥の一挙手一投足には必要以上に過敏に反応しているようだ。渋撥のやることなすことすべてが癇に障り、その存在そのものが憎くて仕方がないかのように。
「オイオイオイ。誰も立っていいつってねーぞ!」
大塔の怒喝により威勢を取り戻した緋色の男のひとりが、渋撥の膝の裏をガスッと蹴り飛ばした。しこたま殴られたあとの巨躯は、グラリと前のめりに傾いて片膝を付いた。
渋撥は自分を蹴ったに違いない男を肩越しに睨みつけた。その目から光は失われていなかった。
「ワレェ、そのツラしっかりメモリーしたからな。後で覚えとれよコッパがァ」
「っ……く!」
「その様でどっからそんな自信湧いてくんだこのガキ」
その様――――現状の渋撥は、彼に怨恨を持つ者ならば指を差して腹を抱えて笑う惨めなナリだ。しかし、彼は一部も尊厳を失わない。損なおうとする輩が反対にたじろいでしまうほどに全い王者で在り続ける。そのような振る舞い方しか知らぬ彼は、如何なる状況に置かれても欠けたるところが無い故に、ただ其処に在るだけで小さく歪んだ下賤の者を貶める。
賤しい者は王の炯眼に耐えられず、再び拳を振り上げた。
禮の意識が渋撥のほうへ逸れた瞬間、ドンッと肩を突き飛ばされた。禮はアスファルトの上に尻餅を付く格好になった。機敏にサッと突き飛ばした犯人である大塔を睨んだ。
大塔は禮の眼前にしゃがみこんだ。禮が抵抗できないことを知っているから特に警戒は無かった。
「そんな恐いカオせんどけや。俺かて好きでこんなことやっとんとちゃうんやで」
「嘘吐き。ハッちゃんのことキライなクセに」
禮に言い返され、大塔は意外そうに首を傾げた。自分ではポーカーフェイスを気取っているつもりだったのだが初対面の少女にまで断言されるとは、渋撥への憎しみは思ったよりも在り在りと滲み出ているらしい。
「そやなあ、アイツには恨んでも恨みきれん恨みがあるわ。こんなモンじゃあ俺の気は済めへん。そもそも、俺が用があるのはアイツだけで、嬢ちゃんたちはただの巻き添えや。運が悪かったなー、あんなバケモンと一緒におって」
「ほなウチの友だち今すぐ帰してよ!」
禮に間髪入れずに物申され、大塔は目をやや大きくした。
「自分も帰せとは言わへんのか。おっそろしく肝の据わったオナゴや」
「ウチはハッちゃんと一緒やないと帰らへん」
「…………。ほな早いとこ用済ますか」
大塔は禮の顎を指に乗せ、クイッと上向きにさせた。
暴君の寵姫は一瞬たりとも目を逸らそうとしなかった。後ろめたさも恐れもなく、逃げようともせず、蔑んだり侮ったりもしない、忌々しいくらい清々した瞳。その清廉さは、暴君に対する憎しみとはまた異なる意味で疎ましく感じた。
「なァ嬢ちゃん、オマエが近江のオンナっちゅうなら、アイツがこの世で一番大事にしとるモン、どこに隠しとるか知っとるか?」
大塔の問いかけは意外なものだった。
禮はその答を知らないし、これまで考えてみたこともなかった。渋撥のことが憎くて仕方がないこの男が、禮でも知らない渋撥の大事なものを知っているというのも妙な話だ。
第一、何故そのようなものを求めるのか。手に入れて何とするつもりなのか。壊す為か、奪う為か、捨てる為か、隠す為か、否、いずれにしても回りくどい。憎い渋撥への恨みを晴らすなら、弱味を握って自由を奪った現状で充分であるはずだ。
然らば、渋撥を痛めつけることは目的ではなく手段なのだ。渋撥に対して尋常ならざる憎しみを抱いているこの男にとって、それを晴らすことよりも重要なこととは一体何だ。
「ハッちゃんの大事なもん? それを……どうすんの?」
「そんなことオマエに言うても解れへん。俺はこう見えてロマンティストでな」
解らない。何を考えているのかまったく解らない。禮にはこの男の本心を理解することはできない。彼の目は暗く曇っており、雨降りの川の水面のように澱んでいる。禮はこのように光の差しこまない瞳をいまだかつて見たことがなかった。
禮が戸惑って黙りこんでいると、大塔はガッカリという風に嘆息を漏らした。禮の顎から手を離して立ち上がった。
「知らんならオマエとこれ以上喋る意味はあれへん」
大塔は禮に背を向け、用無しとでも言わんばかりに手を振った。
「女の泣き声は喧しいさかい嫌いや。オトモダチと無事に家に帰りたかったら精々静かにしとけ」
「ハッちゃんにこれ以上何する気なん!」
「オマエが知らんなら、答知っとるヤツに直接聞くに決まっとるやろ」
禮が立ち上がろうとすると、大塔の手下に肩を掴まれて元の位置に押し戻された。
大塔は禮を横目で見てその男に顎で指図した。
「オウ。この女よう見とけよ。さっきの見たやろ、ビックリするくらい足癖の悪い女や」
それだけ言い残し、渋撥のほうへと爪先を向けた。
渋撥は顔面と肩から地に突っ伏していた。
緋色の男たちは、渋撥を見下ろして自分の手首を握ってプラプラと左右に振った。硬い物を殴りすぎて赤く腫れた拳が、渾身の力で渋撥の顔面を叩きつけていたことを物語っている。
「くあぁっ。何つー頑丈なヤローだ。俺もう手が痛ェー」
「はあっ、はあっ、はあっ……。さっきからウンともスンとも言わねーけど、生きてんのかコレ」
渋撥に暴行を加えていた男たちは、その一言で我に返ってピタリと手を止めて沈黙した。急にしんと静まり、隣に立っている仲間の荒い息遣いや自分の鼓動がやけに大きく聞こえる。彼らは撓んだ輪を描き、巌石のような渋撥の背中を見下ろし、無意識に、しかしながら必死に呼吸を整えようとした。
呼吸を乱すほど夢中になって我武者羅になって殴り続けた理由は、実のところ彼ら自身もよく分からない。圧倒的優位な情況であるはずなのに冷静さを失っていた。総長からの命令とはいえ、あまりにも必死だった。攻撃しているのは自身のほうなのに、何かに駆り立てられるように随分と余裕がなかった。
物言わぬ巌石のような男が、草叢で息を殺す野獣のような男が、恐ろしい。理屈ではなく恐ろしい。絶対強者に対して本能が恐れてしまう。兇悪なまでの獣性で以てして君臨する暴威の王は、その眼孔のみで人心を縛る。
大塔が近づいてきて、輪を作って渋撥を取り囲んでいた男たちは左右に割れて道を作った。
「大塔さん。コイツさっきから全然動かねーんスけど……。どうします?」
大塔はあと数センチで爪先が渋撥の頭に当たろうかという間近で足を止めた。アスファルトに突っ伏した巨躯を眼下に俯瞰した。
「オイ、生きとるかウド。生きとる内に聞いとかなあかんことがあんねん。答えてから死ね」
ずりっ、ずりっ、ずりっ、と死体が這いずり回るように、渋撥は肩を地面に引き摺るようにして上半身を起こした。額が切れて出血によって片目が開けられず、視界は半分。その狭い視界の中でも、口の端を吊り上げた大塔の嫌な笑みはしっかりと見えた。
好き放題に痛めつけやがって。さぞかし面白可笑しいことだろう。
「〝あの人〟が遺したモン、そろそろ返して貰おうか」
大塔の言葉を聞き、渋撥の口からは嘲笑が漏れそうになった。殴打されて腫れ上がっていなければきっと頬は笑っていたに違いない。
この街きっての過激派である赤菟馬の総長・大塔轍弥が、随分とセンチメンタルなことじゃないか。過分なくらい誇大なくらい己の存在を誇示しても、そうか、そのような想い出を後生大事にしているのか。唸りを上げて風を切る鉄馬に跨がり、結局は同じところをグルグルと回っているだけじゃないか。
「アレはあの人のモンや。あの人のモンは全部俺がもらう。受け取る根性もあれへんクセに未練がましく傍に置きくさって」
渋撥は口内に溜まった鉄の味がする気持ちの悪い液体をベッと吐き捨てた。
「未練がましいのはどっちや。いつまんでもモノなんぞにこだわりよって」
「なに偉そうな口きいとんねん。オマエのモンちゃうぞボケコラッ!」
「オドレのモンでもあれへんやろがァッ!」
渋撥は大塔よりも一回り大きな声で即座に怒鳴り返した。しこたま殴り続けられるのも、喧しい男の怒声を聞かせられるのも、妄執に付き合わされるのも、心底うんざりする。
「アレァ確かに俺のモンちゃう。俺には必要ないモンや……。せやけどオドレに偉そな口叩かれる義理なんざあれへんねん、ボケが」
渋撥は辟易する気持ちを乗せて唾棄した。
大塔の眉尻はピクッピクッと痙攣した。いくら叩きのめしても屈しない、その気配すらも見せない渋撥の態度は、彼を無性に腹立たせた。
「散々はつり回された割には随分しっかりしとるのォ。オドレ相手にこんなモンじゃあ生温かったなァ?」
緋色の特攻服のなかには、渋撥への暴行には加わらず見物に回っている者もいた。或る男はバットを支えにして突っ立っていた。大塔はその男からバットを乱暴に毟り取った。渋撥の肩の上にバットの先端を置いた。
ぽつん――、バットを置かれた拍子に、渋撥の顎から血液が滴って太腿の上に落ちた。
「あの人が死んで…………何でオドレみたいなクサレがのうのうと生きとんねん」
大塔は、渋撥の肩の高さからバットを水平に滑らせ、或る程度離した位置でピタリと止めた。つまり、バットを振りかぶった体勢で停止した。
「ワレェ自分で考えたことあれへんのか。オドレみたいなクサレが何の役に立つのか。生きとって意味なんかあれへんやろ」
ぽつん――、渋撥がフッと嘲弄した拍子にまた一雫、血液が落ちた。
「生きとる意味……? クサイことぬかすな。青春ドラマ観すぎなんじゃタコ」
頭の高さに据えられた金属バット。白刃を向けられているようなものなのに、渋撥はそれを意に介さず大塔を真っ直ぐに見据えていた。
それ故に大塔は確信を得た。此は俺とは違う化け物なのだと。化け物だから人が当然知っている罪悪や恐怖を知らぬのだと。
「やっぱ生きとる意味あれへんわ。ワレェ人間ちゃうからな」
ぽつん、ぽつん。ぽつぽつぽつ――。小雨のように振り落ちる赤い赤い血液。次から次へと流れ出て、譬え日夜かけて川になろうとも、それでもこの魔物はまだ息をしているような気がする。
「三途の川で詫びてこいやドグサレがぁあッ‼」
大塔は怒号を上げた。掲げたバットを渋撥の頭目がけて振り出した。
「ハッちゃんッ……!」
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