異世界転逝

しもはら大人

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第三逝

其の十四「料理人!ブローマネスタ!」

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そこで彼女は魔術師会よりも先に、俺を介して王に謁見し、「魔法料理で結果を出した際は新魔法の習得を許可して欲しい」と要請した。
ブローマネスタ程の才女から「魔法や魔力を帯びた食材を使って人々に貢献出来る料理が出来ないか研究したい。」と言われたら、王としても断れなかったであろう。
そして息子の幼なじみで親しかったのもあり、許可は難なく下りた。
しかしそこには条件があった。
それが、試食を俺にさせる事。
父上はブローマネスタを気に入っている。
息子の妻に是非にと言っているほどに。
そしてブローマネスタも俺を好いてくれている。
俺もブローマネスタの事は嫌いじゃない。
いや、どちらかと言わなくとも好きな方だ。
だが彼女には些か問題がある。

その1つは勿論、今目の前にあるコレだ。
彼女は魔法と料理の融合に夢中で事ある毎に試食を求めてくる。
そして殆どの料理は驚く程刺激的だ。
不味いのではない。
どの料理も多分、味は美味しいのだと思う。
だが、それを掻き消すほどの、何らかの要素が入っている。
今回ならば、「辛み」。
恐らく。
それだけであって欲しい。

「ヴィートゥシュ、ぼーっとしてないで熱いうちに食べて。」

「あ、あぁ。悪い。・・・世界樹の恵みに感謝します。」

俺は覚悟を決めてスプーンで汁を少しだけすくい、口に含んだ。
その瞬間、舌の上で爆発が起き頭が吹っ飛んだと錯覚する程の衝撃が襲ってきた!

「おあッ!ハァハァ。み、水!」

俺はブローマネスタが用意してくれた盃に入っている水を急いで流し込んだ。

「ゴクゴク・・・水じゃない?」

凄い清涼感だ。
口の中の辛みが一気に無くなった。

「ブローマネスタ、コレは?」

「煮込み料理だけじゃ辛すぎるでしょう?辛みを和らげつつ、効果を高める飲み物も作ったの。どう?」

「この飲み物は美味いよ!口の中がさっぱりして・・・」

?」

あ、しくじった。
ブローマネスタは実験的な料理を作る割に、料理の評価が低いのを嫌う。
実際、本人も試行錯誤して味見をしてから試食に出している。
俺やたまに試食の餌食になるスヴェルは毎回悶絶するのだが、何故か本人は刺激をそれほど感じていない。
彼女からすると、俺達の舌が肥えていないだけらしい。
そんな俺達の反応が気に入らないそうで、現在では魔法料理で結果を出す事よりも、俺達の舌を育てる事に重点が置かれているほどだ。
とにかく今は失言を取り戻すべく食べなくては!
怒らせては大変な事になる!

「いや、俺辛いの得意じゃないから、一口目は刺激にばっかり意識が行っちゃって、味わえてなくてさ、次はちゃんと味わうよ!」

しどろもどろになりながら、何とか言い訳をする。

「へぇ~~。」

明らかに疑っている!怪しんでいる!
こんな時は言葉より行動!
食べるのみだ!
スプーンいっぱいに煮込み料理?をすくい、口に入れる。

「~~~~!!」

燃えるような辛さだ。
全身が火を吹いているような感覚。
口が痛い。
舌が痛い。
喉が痛い。
腹の中が熱い。
これまで咳き込んでいない自分を褒めてやりたい。
痛みに耐え、何とかブローマネスタに手振りで美味しいと伝える。
彼女はニコッと笑ってもっと食べろと促す。

ええい、ままよ!

俺はヤケクソになってバクバクと料理を食べる。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い・・・!!!
目がチカチカしてきた。
危ない、これは死にかねない。
飲み物を手に取り、咀嚼そしゃくをしながら流し込む。
おぉ!痛くない!
この痛みを中和出来るって逆に飲み物の方が怖くなってきたな。
だが・・・もしかして、美味いのか?
アレ、美味いかも。
いや、美味い。
料理と飲み物の組み合わせがいいのか?
痛みが無くなった後に旨味が一気に広がる。

「ゴクッ。ブローマネスタ、美味いよ!」

俺は彼女の魔法料理を食べて初めて本心から美味いと言った。

「え~!!嬉しい~!遠慮しないでもっと食べて!おかわりもあるからね~!」

いつも落ち着いているブローマネスタが子供のように喜んでいる。
可愛い・・・。
だがダラダラと食べる訳にはいかない。
彼女を納得させなくては、次が来るかもしれない。

いつの間にか汗でビショビショになっていたが、一心不乱に食べ続ける。
時折、汗が目に入りかけるのを袖で拭きながら、料理、料理、飲み物の順でテンポ良く進めていく。
皿の中身が2/3近くになった時、目の前が真っ暗になった。
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