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本編
3話 一方辺境では ※ランドロフ視点
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一方、少し時間を遡ってカトリーナが侯爵邸から出ていく前。ランドロフは二ヶ月間滞在している辺境の別邸の執務室で一番信頼する側近であるドゥーリッヒに不満を零していた。
「おかしい。どうしてカトリーナから手紙のひとつも来ないんだ?」
「さあ…報告では体調を崩しているとも聞いておりませんので床に臥せっておられる訳ではないようですが。あとは…閣下の重い愛情が嫌になられてしまったというのも考えられますね。」
そう、ランドロフは二ヶ月前から毎日欠かさずカトリーナに手紙を送っていた。最近では返事が返ってこないこと焦れて一日に三通以上、何十枚にもわたって書いている。いい加減気持ちが悪いとドゥーリッヒは何度も伝えているが一向に治る気配はない。
それもそのはず、それらの手紙は一通たりともカトリーナに届いていない。ついでに言えばカトリーナが送った何通かの手紙もランドロフには届いていなかった。
よもや幼い頃からランドロフに良く仕える執事長であるアロンが二人の手紙を勝手に処分したりカトリーナに嫌がらせまがいのことをしているとはこの頃のランドロフは夢にも思わなかった。
「縁起でもないことを言うな! 本当になったらどう責任を取ってくれる…不味いな、ただでさえカトリーナに会えていないのにあの可愛らしい字で書かれる手紙さえも読めないとなると…」
「間違っても奥様の前ではそんなこと言わないでくださいね、間違いなく気持ち悪がられます。」
「…どうも心配だ、胸騒ぎがする。アロンからの報告ではカトリーナに変わった様子は無いのだったな?」
軽口を一旦やめて、真剣に懸念するランドロフにドゥーリッヒは手元に持っていた何枚かの書類を取り出してランドロフに示す。それはアロンに日々のカトリーナの様子を報告させているもので昨日の夕に届いたばかりのものだった。
「はい、週に一度報告が届きますが特に変わったことは何も。この報告も昨日届いたばかりのものですし。」
「……いや、やはり何かおかしい。アロンを疑う訳では無いが…騒動も落ち着いたことだ、中央に帰る。来週にでも馬車を出せ。」
こんな時の嫌な勘は当たる時がある、と苦い顔で言うランドロフに頷きながらドゥーリッヒは辺境に来る前のアロンの様子を思い出し、眉を顰める。ランドロフの前ではおくびにも出さないが一度、ランドロフとカトリーナが婚姻したばかりの頃にアロンがドゥーリッヒにカトリーナが不貞を働いていると言ってきたことがあった。
勿論、秘密裏に調査はさせたが結果は勿論、根も葉もないものだった。その時からドゥーリッヒはカトリーナのことに関してはアロンを信用しないことにしている。まさか、カトリーナを追い出そうとまでは思っていないだろうが嫌っているのは事実。注意しておくに越したことはない。
「畏まりました…閣下、アロンのことですがこと奥様に関してはあまり信用なさらない方がよろしいかと。ご婚姻当初からアロンは奥様のことが気に入らない様子ですので。」
「…アロンが? どういうことだ。」
「おかしい。どうしてカトリーナから手紙のひとつも来ないんだ?」
「さあ…報告では体調を崩しているとも聞いておりませんので床に臥せっておられる訳ではないようですが。あとは…閣下の重い愛情が嫌になられてしまったというのも考えられますね。」
そう、ランドロフは二ヶ月前から毎日欠かさずカトリーナに手紙を送っていた。最近では返事が返ってこないこと焦れて一日に三通以上、何十枚にもわたって書いている。いい加減気持ちが悪いとドゥーリッヒは何度も伝えているが一向に治る気配はない。
それもそのはず、それらの手紙は一通たりともカトリーナに届いていない。ついでに言えばカトリーナが送った何通かの手紙もランドロフには届いていなかった。
よもや幼い頃からランドロフに良く仕える執事長であるアロンが二人の手紙を勝手に処分したりカトリーナに嫌がらせまがいのことをしているとはこの頃のランドロフは夢にも思わなかった。
「縁起でもないことを言うな! 本当になったらどう責任を取ってくれる…不味いな、ただでさえカトリーナに会えていないのにあの可愛らしい字で書かれる手紙さえも読めないとなると…」
「間違っても奥様の前ではそんなこと言わないでくださいね、間違いなく気持ち悪がられます。」
「…どうも心配だ、胸騒ぎがする。アロンからの報告ではカトリーナに変わった様子は無いのだったな?」
軽口を一旦やめて、真剣に懸念するランドロフにドゥーリッヒは手元に持っていた何枚かの書類を取り出してランドロフに示す。それはアロンに日々のカトリーナの様子を報告させているもので昨日の夕に届いたばかりのものだった。
「はい、週に一度報告が届きますが特に変わったことは何も。この報告も昨日届いたばかりのものですし。」
「……いや、やはり何かおかしい。アロンを疑う訳では無いが…騒動も落ち着いたことだ、中央に帰る。来週にでも馬車を出せ。」
こんな時の嫌な勘は当たる時がある、と苦い顔で言うランドロフに頷きながらドゥーリッヒは辺境に来る前のアロンの様子を思い出し、眉を顰める。ランドロフの前ではおくびにも出さないが一度、ランドロフとカトリーナが婚姻したばかりの頃にアロンがドゥーリッヒにカトリーナが不貞を働いていると言ってきたことがあった。
勿論、秘密裏に調査はさせたが結果は勿論、根も葉もないものだった。その時からドゥーリッヒはカトリーナのことに関してはアロンを信用しないことにしている。まさか、カトリーナを追い出そうとまでは思っていないだろうが嫌っているのは事実。注意しておくに越したことはない。
「畏まりました…閣下、アロンのことですがこと奥様に関してはあまり信用なさらない方がよろしいかと。ご婚姻当初からアロンは奥様のことが気に入らない様子ですので。」
「…アロンが? どういうことだ。」
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