日本各名山を旅して

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トムラウシ山

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私も北海道ツーリングに毎年のように行っていた学生時代から5年以上経った2007年に大雪山系でこちらも日本百名山の一つであるトムラウシ(標高2,141m)に登った事があるが、北海道の山々は北アルプスや八ヶ岳など本州の山々とは違って登山道などがあまり整備されていないところがよく見られた。

その分足を踏み入れる人間が少ないからなのか途中の岩場で野生のナキウサギが多く見られた。しかも人間を嫌いなかなか見られない野生動物に出会えた有り難みを忘れてしまうくらい数が多かった。小鳥の声を少し太くしたような独特の鳴き声があちこちで聞こえた。

トムラウシに登頂した時の大雪山などの遠くの山並みの眺めも素晴らしく思い出すだけでもまるで楽園にいるような気分を味わえる。山小屋で一泊する為に十勝平野の北東側の山間にあるトムラウシ温泉から登って来たメインルートと反対側に下山した時は岩場の道なき道を下った。メインルートとは違って他の登山者にお会いした記憶がない。晴れていたから山小屋を目印に下る事が出来たが霧がかかっていたら一つ間違えれば遭難してしまう。人が少ないからこそ山の本当の素晴らしさと恐ろしさを同時に味わえると思えた。

山小屋と言っても避難小屋であるのは水場とトイレのみで食事はコッヘルなどで全て自炊である。

登山口まで乗って来たレンタカーを別の場所にある下山口に業者にお願いして回送して貰い、登りとは別のルートで下山したが、悪天候でしかも標高が高い地帯では登山道を覆っている雪渓、標高が低くなり森林地帯に入ると倒木で道に迷いそうになる。特に霧で見通しが悪い雪渓では道が突然途切れたような状況に陥り焦って途方に暮れてしまいがちだ。その度に山登り専用の地図の地形を見て行く方向を推測して歩いた。そういうポイントが何箇所もあった。おまけにしばらく小川を下るルートもある。そういう悪路を何時間も歩いたのは本当にきつかった。お陰で夏山登山の若葉マークを外せたと自分で勝手に思えるくらいであった。

今あの時自分でカメラで撮った写真を見るとシャクナゲ、キンバイ、ハクサンイチゲ、チングルマ、エゾコザクラ、コマクサなどかなりの種類の花々が写っており、それだけでもあの辺りが高山植物の宝庫であることがわかる。あれだけ素晴らしいところなのに1泊だけで歩くのにはかなりハードなコースで、楽しかったとか感動したというより、何だか時間に縛られずもっとゆっくりとなるべくきつさを感じずに歩きたかったという勿体無い気持ちの方が強かった。

楽しかった感動したというポジティブな思い出をそのまま山に置いて来てしまったような感じだ。特にメインルートとは反対側の大雪山などの山々を望みながらの岩場の道無き道は人も少なく周辺は高山植物の宝庫であり、時間に縛られずにもっと余裕を持ってゆっくりと大雪山を目指して歩けば、楽園にいたような楽しかった思い出をそのまま持ち帰れるかも知れない。かなりハードなコースなのであまり歳を取り過ぎないうちに、余裕のある日程であの時の忘れ物を取りに行くような感じでもう一度行きたい。

ハードスケジュールなどでキツかった分、下山後に入れたトムラウシ温泉の青空と緑の木々を見ながらの広い露天風呂はとても気持ち良かった。
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