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マヌケが異世界へ

異世界に転移したけどよくわかんない!

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 異世界に転移した菜々美は、相変わらずんけがわからずにいた。

「あれ?夢、だよね?」

 試しに指でほっぺを引っ張ってみる。痛い、痛いけど目の前に広がるのは草原である。

「痛いけど夢覚めないな~、そーだ!引っ張りが足りないんだ!」

 そこからは30分ほど両方のほっぺを引っ張り続けた。

「あれ~?なんで覚めないんだろ!こんな夢もあるってこと!すごい!大発見じゃん!みんなに自慢しよ!」

 そんだけ引っ張ってるんだったら、夢じゃないってなんで気づかん、

「夢ってことはさ、何してもいいんだよね!どうせなら覚めるまで思いっきり遊ぶぞ!まずここどこなんだろ~、草原だからー、あ!エジプトか!」

 そこは草原じゃなくて砂漠だろう。普通はモンゴルじゃないのか。

「よし!よくわかんないけどやるぞー!オォー!!」

 菜々美はやる気いっぱいでとても大きな声で叫んだ。

「グルルル~、グルルル~」

「ん?なんだろ?あ、もしかして私のお腹?恥ずかし!」

「グルルル~、グルルル~」

「まだなってるよ!なんなのこのお腹!ポンポンしてやる!」

 とりあえずポンポンしているようだ。

「グルルル~、グルルル~」

「あれ?よく考えたらお腹からじゃないや!ならどこから聞こえるんだろう?後ろかな?」

 菜々美が振り返った。そうしたところ、真後ろにとても大きなオオカミがいた。うん、気づくのが遅い!

「なにこれー!おおきい!すごい!迷子かな?」

 なんでそーなる。どう考えても菜々美を食べようとしてるだろう。

「すごい!かっこいいね!でもなんでそんなにこっち睨んでるの?まあいっか!」

 菜々美は再びオオカミに背を向けた。その時、オオカミが菜々美を噛み付きに行く。すごい勢いだ。

「あ!こんなところにあん時の石あるじゃん!」

 なんと石を拾おうとして屈めたタイミングと、オオカミが噛み付きにいったタイミングが見事に一致した。そして、菜々美はオオカミの噛み付きを回避できた。

「あれ?オオカミさんなんで前にいるの?もしかして私を飛び越えた!?すごいジャンプだね!私もやってみる!」

 菜々美は助走をつけて思いっきりジャンプした。そして着地の時に見事につまづき、オオカミに覆いかぶさるようにしてこけてしまった。

「オオカミさんごめーん、あれ?寝てる?さっきまで起きてたのに、寝付きがいいんだね!」

 オオカミは寝ているのではなく、気絶してるのである。菜々美がつまづいてこけた際、手に持っていた石が宙を舞い、オオカミの頭に見事ヒットしていた。もちろん、菜々美はそのことに気付いていない。

「あれ?石どこだろ?あったあった!これだ!じゃ!オオカミさん、風邪ひかないようにね!バイバイ!」

 菜々美は石を手に取り、その場を離れて行ったのであった。

「とりあえずさ、ここからどう行こう?あ!そーだ!こーゆー時って靴投げてその時でた方向で決めればいいんだ!」

 菜々美は靴を投げようとした。だが、彼女は靴を履いていなかった。今まで彼女は気づかなかったのである。

「あれ?靴ないな~、まあいいや!私の感覚ではこっちが私を呼んでいる!」

 とりあえず適当に歩き出す菜々美であった。

 しばらく歩いていると、シンプルに疲れてきた。しかも水も持っていない。どうしようか。そのとき

「あれ?お嬢さん、どうしたの?」

 馬車が横を通るときに窓から人が顔を出しながら菜々美に話しかけた。

「はい、夢から目覚めないんです」

 菜々美は相変わらず夢だと思っているようだ。

「それは大変だ。さぞかし疲れているのであろう。どうだ、近くの街に行く予定なんだが、そこまで乗って行くか?」

「ありがとうございます!」

 菜々美は特に怪しむこともなく馬車に乗り込んだ。

 馬車の中では自己紹介などが行われていた。

「へー、おじさんはバーガーさんってゆうんだ!なんか美味しそうな名前だね!」

「ははは、それより菜々美くん、本当になにも分からずにあんなところを歩いていたのかい?」

「はい!いきなり夢の世界で意味わかりませんでした!」

「本当に疲れてるようだね、しばらく休むといい。この馬車は比較的おおきい部類だからそこで寝れるよ。ほら、彼女も私の家で雇ってるんだけどね、ぐっすりさ」

 そう、馬車の中にはバーガーさんだけではなく、女の人も寝ていた。女の人の名前はポテトさんと言うらしい。

「わかった!ありがと!くつろがせてもらうね!」

 しばらくゴロゴロしていたところ、マックさんに手招きをされたので、窓の外を見てみた。

「うわー!ここが町ですか!」

「そうだよ、ここはマック町!ここらへんでは大きな町だと思うよ」

「へー!大きいんですか!いいところですね!」

 無事に菜々美は街に到着した。忘れているかもしれないが、彼女はここを夢だと思っている。そして、靴も履いていない。
 菜々美は実際にそんなことを忘れるほどに、街というものに見入っていた。

「よし!よくわかんないけど頑張るぞ!」

 意気込みだけは相変わらずとても立派なものである。しかし、宿や食材を調達するための通貨を持っていないが、どうするのであろうか。
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