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赦免
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久しぶりの再会は過去の自分を改めて恥じ入る機会となり、身勝手な贖いを彼へ乞い求めるきっかけだった。もし金銭を要求されたなら沢渡は素直に応じていただろう。
あっさりと沢渡を許し、さっさと話を終わらせてしまおうとする彼。償いをさせてくれとすがる沢渡の方がまるで助けを求めているようだった。
「なら俺の肉バイブになれよ」
追い縋る沢渡へ、誠からの返答だった。
意趣返し。質の悪い冗談。沢渡を困らせたいだけで本気ではないと、その表情を見ればわかる。
そこにつけ込んだのは自覚しているけれど、沢渡は誠との繋がりが欲しかった。この選択をしていなければ誠は沢渡を避け、いつかのように姿を消してしまう。予感があった。
過去と違い主導権は誠にあった。肉バイブは誠を楽しませる為の存在で、誠にあれこれする立場ではない。
慣れた様子で自らの尻孔をほぐした誠は、見苦しくならない程度に鍛えられた沢渡の体に乗り、蕩けたアナルへ沢渡を受け入れていく。柔らかい蕾は吸い付くように沢渡を迎え入れ、ペニスを無理なく飲み込まれて覚えたのはきゅうきゅうと締め付けられる快感だけではなかった。
記憶の中の誠はいつも沢渡の侵入を拒否するようにアナルを硬く閉じ、押し入るときつく締め付けてきた。
「あんっ♡ ふとぉい♡♡♡」
胎に男を咥え込んで媚びた声を上げたりなんてしなかった。だらしのない表情を晒して、自分から腰を振って性感を高めようとなんてしなかった。
「きもちぃ♡♡♡ あんっ♡ あっ♡ は……んっ♡♡」
セックスに悦びを見出だしたりせず、暴行に耐えていただけの少年は何処にもいなかった。
誠が肉バイブを呼び出して使ったのは関係が始まってから二月程だった。雑談をする仲にもなれず、誠から誘われることがなければ業務以外の接点がなくなる。
沢渡のことを視界に入れなくなった誠は派遣期間を満了して辞めるのだと、彼ではなく上司の口から朝礼で聞かされて――鈍器で頭を殴り付けられたような衝撃に襲われた。
けれど、あの時と比べたら事前に教えられただけマシだ。あの時――高校二年生に進級した春、新しいクラス表の中に自分と誠の名前を探して。どうしても誠の名前が見つけられなかった。
職員室へ向かうや学年主任の教師へ詰め寄った優等生の姿に驚きながら答えを教えられて、沢渡がどれだけ怒り、絶望したことか。
「皆さんには親切に仕事を教えていただいて、短い間でしたがお世話になりました。ありがとうございました」
前へと引っ張り出され挨拶と共に頭を下げる誠に、疎らな拍手が起きた。沢渡も一緒になって手を叩きながら、決めたことはたった一つ。
逃がすわけがないのだ。
「うっ♡ あ……あー♡♡ あっ♡ や、いやぁ♡♡♡」
沢渡の部屋の中。沢渡のベッドの上に転がされ、手足に枷をはめられた誠が沢渡の下で喘いでいる。尻の谷間に隠されていた孔は沢渡の指に押し開かれ、飲まされたローションを垂らしながらひくついていた。
指を出し入れさせて肉筒を擦ってやると誠の尻が喜ぶように振られ、下腹で涎を垂らす誠のペニスもふりふりと揺れた。可愛かった。
指で弄られて甘ったれた声を上げる。かつての少年とは程遠い、沢渡を誘惑してくる誠に流されてしまいたいが、沢渡の注意は手元のスマートフォンにあった。
白いシンプルなカバーが付けられたアンドロイドのスマートフォンは二年前のデザインだ。沢渡は片手で器用に電源ボタンを押す。ロックはかけられておらず、電源を入れるだけで待ち受け画面が映った。
ファイル管理アプリを見つけ、中を見る。写真フォルダを選んでいくと幾つもの画像データが表示され、一番古いものをタップする。
「ひぃっ♡♡」
誠の尻を掻き回す指が最奥を目指すように中へと押し入った。指の質量に代わり、ローションが孔から押し出されていく。
沢渡の目はスマートフォンに釘付けだった。
開かれた画像ファイルには、高校二年生であろう誠の姿が残されていた。沢渡の通った高校のブレザーとは違う、黒い学生服を着た誠が同年代の見知らぬ少年達と並び、カメラへ向けて笑っている。
指をスライドさせると次の写真が表示される。何処かの街中で友人達と楽しげに話をしている誠。グラウンドに描かれた白線の中を駆ける体操服姿の誠。夕暮れの教室、席に伏せて居眠りしている誠の寝顔。他にも、他にも。
沢渡が見たかったものだった。
高校生の誠ではなく。自然体の誠が見せる何でもない日常風景の何と眩しいことか。腸が煮えくり返る。
「やーっ♡♡ いやっ♡ もうやだっ♡♡♡ いれて♡ いれてよぉ♡♡♡」
誠の声で意識を戻す。腹を自分のもので汚した彼はへこへこと尻を振っている。
沢渡の指は絶え間なく誠の孔を苛めていたらしく、シーツは漏れ出たローションだらけになっていた。
沢渡の視線はスマートフォンへ戻され、次の画像を表示させて――固まった。
一つ前は卒業式の光景を映していた。今は自撮りが映っている。沢渡ではない男の頬へ唇を寄せる誠の自撮りは二人共裸だった。
わかっていた。肉バイブにしてもらっていた時、誠の孔は男を咥えるのに慣れ親しんでいた。どうしたら気持ちいいかを理解して悦んで腰を振り、肉襞は男を抱き締めてくる。
沢渡の前から姿を消した数年間。男に抱かれていたのはわかっていたけれど、認めたくなかった。
「あぁん♡♡♡」
誠の孔から指を引き抜く。スマートフォンを放り投げ、粗っぽく衣服を脱ぐ沢渡を誠は見上げていた。熱に潤む眼差しは期待している。
今から犯されるのだと。
「誠……」
もどかしさに苛立ちながらバックルを外し、スラックスの留め具を外す。ずり下げた下着の中から取り出されたペニスは熱く昂り、それを見つけた誠は目を細めた。
「誠」
体が重なる。愛撫を受けてぽっかりと口を開けたアナルへ、涙を流すペニスでキスをする。すりすりと擦り付けながら誠へ顔を寄せ、唇にもキスをした。
「あ、んぶ、ぅ……ん、ん……」
誠の口内を啜りながら腰を動かし、胎の奥目掛けてペニスを押し入れる。拒むような、迎え入れるような肉筒の締め付けは気持ち良かった。
「ひ、ひ、ひ♡ あーっ♡♡ おっ♡ んぉ♡♡♡」
直腸の奥目掛けて腰を振り、少しでも奥まで入り込もうとする。男に体を拓かれ犯される悦びに鳴く誠を可愛い、美しい、愛しいと思う。
二度と離れない。他の男に渡したりしない。身勝手なプライドは捨てる。高校生の誠が既にこの世にいないように、高校生の沢渡もこの世から消えてしまったのだ。
「くっ、そ……はっ、あ、誠っ……誠っ」
「あはっ♡♡ あ♡ あつぅい♡♡♡」
誠の胎の中へと吐精する。いつもなら熱が冷めて冷静さを取り戻す筈が、胸に巣食う激情はちっとも収まらなかった。
「あんっ♡ あ、あっ♡ あ♡ あ♡ ああっ♡♡」
吐き出した精液を奥へ押し込むように、抽挿を続ける沢渡に応えるように誠も声を上げている。感じ入った、男に媚びた声は喜色に塗れていた。
「うーん」
ごろり、とベッドの上で寝返りを打つのはワイシャツ一枚しか羽織っていない誠だった。広く、品のいい最低限の家具類が置かれただけのシンプルな部屋は殺風景とは言わないが生活感が薄い。寝転がるベッドは誠の使っていたパイプベッドの安くて薄いマットレスより寝心地がいいので気に入っている。
「ひまだ」
再び寝心地を打つ。その度に足元でちゃりちゃりと音が立った。誠の右足首にはソフトレザー製の足枷がはめられ、枷には鎖が取り付けられている。誠がトイレや食事をするには問題のない長さだが、玄関まで行くことは出来ない短さの鎖だ。
「スマホくらい使わせてくれてもいいのに。それがダメならオモチャの二つか三つでも突っ込んでけよ」
沢渡との再会を果たした会社を辞めた誠は数日と経たないうちに沢渡に拉致され、今は軟禁状態にある。女性を拉致監禁する男のニュースをテレビで何度か見たが、今の誠は同じような立場にある――というのに、誠に危機感はなかった。
沢渡に養われて暮らし、沢渡が家に居る間はほとんど常に犯されている。過去の出来事により男にいたぶられる悦びを知った誠にとって現状は理想的ですらあった。外部との接触を断たれたり外へ出ることが出来ないなどの問題点はあるが、沢渡を通報してこの暮らしが終わることと比べるようなものではない。
軟禁が始まってから誠はようやく沢渡と話をした。それまでも言葉を交わしてはいたが、互いの考えを教え合うような話は出来ていなかった。
誠を犯しながら泣いて愛を告げる沢渡に情が生まれてしまったのかもしれない。高校生時代の悪行を再度謝罪し、誠のことが好きだったと
もらし、もう逃がさないと絞り出された支配者の一言に誠の背筋に震えが走った。
見合い相手はどうするの、と返した誠に沢渡は面食らった顔をした。誠が知っている筈がないと思っていたのだろう。
「流石に俺も既婚者と寝るつもりないから」
「見合いはしたけど断った。誠以外と結婚なんてする筈がない」
焦りを滲ませて否定しつつ、端正な顔はにやにやとだらしなく歪んでいく。何だと目で問う誠に、沢渡は素直に答えた。
「誠、僕のこと興味ないんだと思ってたから」
どんなことであれ沢渡のことを気にしてくれるのは嬉しいと、いじらしいことを言ってくる目の前の男に「お前、本当に沢渡か?」と思わず声に出してしまった。誠の記憶の中の沢渡俊一はそんな可愛げのある男ではなかった。
「変わったんだよ、僕も」
苦々しげな声には妙な説得力があった。
「よっ、と」
回想にひたりながら誠の体は筋トレに励んでいた。物の少ない部屋ではそれくらいしかすることがない。
小さなラックに積まれた本は哲学書やら啓発本ばかりで誠の興味は微塵もわかない。体をいじめて昼寝をして、沢渡の帰宅を待つのがルーティンになっている。
腕立て伏せと腹筋を終えた誠はのそのそとベッドへ戻り、窓から見える青空を見つめながらゆっくりと微睡みに包まれていった。
あっさりと沢渡を許し、さっさと話を終わらせてしまおうとする彼。償いをさせてくれとすがる沢渡の方がまるで助けを求めているようだった。
「なら俺の肉バイブになれよ」
追い縋る沢渡へ、誠からの返答だった。
意趣返し。質の悪い冗談。沢渡を困らせたいだけで本気ではないと、その表情を見ればわかる。
そこにつけ込んだのは自覚しているけれど、沢渡は誠との繋がりが欲しかった。この選択をしていなければ誠は沢渡を避け、いつかのように姿を消してしまう。予感があった。
過去と違い主導権は誠にあった。肉バイブは誠を楽しませる為の存在で、誠にあれこれする立場ではない。
慣れた様子で自らの尻孔をほぐした誠は、見苦しくならない程度に鍛えられた沢渡の体に乗り、蕩けたアナルへ沢渡を受け入れていく。柔らかい蕾は吸い付くように沢渡を迎え入れ、ペニスを無理なく飲み込まれて覚えたのはきゅうきゅうと締め付けられる快感だけではなかった。
記憶の中の誠はいつも沢渡の侵入を拒否するようにアナルを硬く閉じ、押し入るときつく締め付けてきた。
「あんっ♡ ふとぉい♡♡♡」
胎に男を咥え込んで媚びた声を上げたりなんてしなかった。だらしのない表情を晒して、自分から腰を振って性感を高めようとなんてしなかった。
「きもちぃ♡♡♡ あんっ♡ あっ♡ は……んっ♡♡」
セックスに悦びを見出だしたりせず、暴行に耐えていただけの少年は何処にもいなかった。
誠が肉バイブを呼び出して使ったのは関係が始まってから二月程だった。雑談をする仲にもなれず、誠から誘われることがなければ業務以外の接点がなくなる。
沢渡のことを視界に入れなくなった誠は派遣期間を満了して辞めるのだと、彼ではなく上司の口から朝礼で聞かされて――鈍器で頭を殴り付けられたような衝撃に襲われた。
けれど、あの時と比べたら事前に教えられただけマシだ。あの時――高校二年生に進級した春、新しいクラス表の中に自分と誠の名前を探して。どうしても誠の名前が見つけられなかった。
職員室へ向かうや学年主任の教師へ詰め寄った優等生の姿に驚きながら答えを教えられて、沢渡がどれだけ怒り、絶望したことか。
「皆さんには親切に仕事を教えていただいて、短い間でしたがお世話になりました。ありがとうございました」
前へと引っ張り出され挨拶と共に頭を下げる誠に、疎らな拍手が起きた。沢渡も一緒になって手を叩きながら、決めたことはたった一つ。
逃がすわけがないのだ。
「うっ♡ あ……あー♡♡ あっ♡ や、いやぁ♡♡♡」
沢渡の部屋の中。沢渡のベッドの上に転がされ、手足に枷をはめられた誠が沢渡の下で喘いでいる。尻の谷間に隠されていた孔は沢渡の指に押し開かれ、飲まされたローションを垂らしながらひくついていた。
指を出し入れさせて肉筒を擦ってやると誠の尻が喜ぶように振られ、下腹で涎を垂らす誠のペニスもふりふりと揺れた。可愛かった。
指で弄られて甘ったれた声を上げる。かつての少年とは程遠い、沢渡を誘惑してくる誠に流されてしまいたいが、沢渡の注意は手元のスマートフォンにあった。
白いシンプルなカバーが付けられたアンドロイドのスマートフォンは二年前のデザインだ。沢渡は片手で器用に電源ボタンを押す。ロックはかけられておらず、電源を入れるだけで待ち受け画面が映った。
ファイル管理アプリを見つけ、中を見る。写真フォルダを選んでいくと幾つもの画像データが表示され、一番古いものをタップする。
「ひぃっ♡♡」
誠の尻を掻き回す指が最奥を目指すように中へと押し入った。指の質量に代わり、ローションが孔から押し出されていく。
沢渡の目はスマートフォンに釘付けだった。
開かれた画像ファイルには、高校二年生であろう誠の姿が残されていた。沢渡の通った高校のブレザーとは違う、黒い学生服を着た誠が同年代の見知らぬ少年達と並び、カメラへ向けて笑っている。
指をスライドさせると次の写真が表示される。何処かの街中で友人達と楽しげに話をしている誠。グラウンドに描かれた白線の中を駆ける体操服姿の誠。夕暮れの教室、席に伏せて居眠りしている誠の寝顔。他にも、他にも。
沢渡が見たかったものだった。
高校生の誠ではなく。自然体の誠が見せる何でもない日常風景の何と眩しいことか。腸が煮えくり返る。
「やーっ♡♡ いやっ♡ もうやだっ♡♡♡ いれて♡ いれてよぉ♡♡♡」
誠の声で意識を戻す。腹を自分のもので汚した彼はへこへこと尻を振っている。
沢渡の指は絶え間なく誠の孔を苛めていたらしく、シーツは漏れ出たローションだらけになっていた。
沢渡の視線はスマートフォンへ戻され、次の画像を表示させて――固まった。
一つ前は卒業式の光景を映していた。今は自撮りが映っている。沢渡ではない男の頬へ唇を寄せる誠の自撮りは二人共裸だった。
わかっていた。肉バイブにしてもらっていた時、誠の孔は男を咥えるのに慣れ親しんでいた。どうしたら気持ちいいかを理解して悦んで腰を振り、肉襞は男を抱き締めてくる。
沢渡の前から姿を消した数年間。男に抱かれていたのはわかっていたけれど、認めたくなかった。
「あぁん♡♡♡」
誠の孔から指を引き抜く。スマートフォンを放り投げ、粗っぽく衣服を脱ぐ沢渡を誠は見上げていた。熱に潤む眼差しは期待している。
今から犯されるのだと。
「誠……」
もどかしさに苛立ちながらバックルを外し、スラックスの留め具を外す。ずり下げた下着の中から取り出されたペニスは熱く昂り、それを見つけた誠は目を細めた。
「誠」
体が重なる。愛撫を受けてぽっかりと口を開けたアナルへ、涙を流すペニスでキスをする。すりすりと擦り付けながら誠へ顔を寄せ、唇にもキスをした。
「あ、んぶ、ぅ……ん、ん……」
誠の口内を啜りながら腰を動かし、胎の奥目掛けてペニスを押し入れる。拒むような、迎え入れるような肉筒の締め付けは気持ち良かった。
「ひ、ひ、ひ♡ あーっ♡♡ おっ♡ んぉ♡♡♡」
直腸の奥目掛けて腰を振り、少しでも奥まで入り込もうとする。男に体を拓かれ犯される悦びに鳴く誠を可愛い、美しい、愛しいと思う。
二度と離れない。他の男に渡したりしない。身勝手なプライドは捨てる。高校生の誠が既にこの世にいないように、高校生の沢渡もこの世から消えてしまったのだ。
「くっ、そ……はっ、あ、誠っ……誠っ」
「あはっ♡♡ あ♡ あつぅい♡♡♡」
誠の胎の中へと吐精する。いつもなら熱が冷めて冷静さを取り戻す筈が、胸に巣食う激情はちっとも収まらなかった。
「あんっ♡ あ、あっ♡ あ♡ あ♡ ああっ♡♡」
吐き出した精液を奥へ押し込むように、抽挿を続ける沢渡に応えるように誠も声を上げている。感じ入った、男に媚びた声は喜色に塗れていた。
「うーん」
ごろり、とベッドの上で寝返りを打つのはワイシャツ一枚しか羽織っていない誠だった。広く、品のいい最低限の家具類が置かれただけのシンプルな部屋は殺風景とは言わないが生活感が薄い。寝転がるベッドは誠の使っていたパイプベッドの安くて薄いマットレスより寝心地がいいので気に入っている。
「ひまだ」
再び寝心地を打つ。その度に足元でちゃりちゃりと音が立った。誠の右足首にはソフトレザー製の足枷がはめられ、枷には鎖が取り付けられている。誠がトイレや食事をするには問題のない長さだが、玄関まで行くことは出来ない短さの鎖だ。
「スマホくらい使わせてくれてもいいのに。それがダメならオモチャの二つか三つでも突っ込んでけよ」
沢渡との再会を果たした会社を辞めた誠は数日と経たないうちに沢渡に拉致され、今は軟禁状態にある。女性を拉致監禁する男のニュースをテレビで何度か見たが、今の誠は同じような立場にある――というのに、誠に危機感はなかった。
沢渡に養われて暮らし、沢渡が家に居る間はほとんど常に犯されている。過去の出来事により男にいたぶられる悦びを知った誠にとって現状は理想的ですらあった。外部との接触を断たれたり外へ出ることが出来ないなどの問題点はあるが、沢渡を通報してこの暮らしが終わることと比べるようなものではない。
軟禁が始まってから誠はようやく沢渡と話をした。それまでも言葉を交わしてはいたが、互いの考えを教え合うような話は出来ていなかった。
誠を犯しながら泣いて愛を告げる沢渡に情が生まれてしまったのかもしれない。高校生時代の悪行を再度謝罪し、誠のことが好きだったと
もらし、もう逃がさないと絞り出された支配者の一言に誠の背筋に震えが走った。
見合い相手はどうするの、と返した誠に沢渡は面食らった顔をした。誠が知っている筈がないと思っていたのだろう。
「流石に俺も既婚者と寝るつもりないから」
「見合いはしたけど断った。誠以外と結婚なんてする筈がない」
焦りを滲ませて否定しつつ、端正な顔はにやにやとだらしなく歪んでいく。何だと目で問う誠に、沢渡は素直に答えた。
「誠、僕のこと興味ないんだと思ってたから」
どんなことであれ沢渡のことを気にしてくれるのは嬉しいと、いじらしいことを言ってくる目の前の男に「お前、本当に沢渡か?」と思わず声に出してしまった。誠の記憶の中の沢渡俊一はそんな可愛げのある男ではなかった。
「変わったんだよ、僕も」
苦々しげな声には妙な説得力があった。
「よっ、と」
回想にひたりながら誠の体は筋トレに励んでいた。物の少ない部屋ではそれくらいしかすることがない。
小さなラックに積まれた本は哲学書やら啓発本ばかりで誠の興味は微塵もわかない。体をいじめて昼寝をして、沢渡の帰宅を待つのがルーティンになっている。
腕立て伏せと腹筋を終えた誠はのそのそとベッドへ戻り、窓から見える青空を見つめながらゆっくりと微睡みに包まれていった。
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