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陛下のお忍び来訪
しおりを挟むわたくしの前には土下座をする勢いで頭を下げる陛下のお姿。
どうやらティグリスの話を聞いて、その事実確認と婚約解消の手続き、さらには謝罪をするために内密で現れたらしい。
確かにたかだか伯爵位の家にわざわざ陛下がこられるなど妬みややっかみの対象になりかねない。
その考慮は感謝したいのですが、そのお供が王妃様と何かキラキラが振り撒かれている騎士のお兄さんなのです。
王妃様は母と仲良しでそちらがメインのようなのでまあ、良いですけど騎士のお兄さんは父をにこにこキラキラ眺めていて若干居ずらいです。そんなキラキラをまるっとスルーできる父が羨ましい。
なるべく視界に入れないようにして気にしないようにしながら、陛下に当日の状況を詳しくお伝えした。段々と状況が進むにつれ、顔を青ざめ頭を下げたのだ。
レオは陛下に懐かしそうな表情を浮かべてその回りをふよふよと漂っていたので、その行動に驚いた表情をしている。ちょっと陛下とレオの関係が気になるところだけど、それよりもやらないといけないことが。
「顔を上げてください。王足るものそう簡単に下ろすものではないのでしょ?わたくしは大丈夫ですから。」
「これは、私のけじめだ。ティグリス、男爵令嬢の小娘に何を吹き込まれたのか、嘘をつきおって。何がラスレア嬢が最低だ。最低なのはあいつではないか!」
陛下のお怒りが目に見えて分かる。
いったい王子殿下はなんと言ったのかしら。そこにはあの裏表の激しそうなあの少女も関係しているのかしら?
そういえば、レオはあの後の事知っているのよね。後で聞いてみましょう。
「グリード、娘が大丈夫だと言っているんだ。気にしなくて良い。」
「私の大事なドラクネア家を毒等と言っていたのだ。もう許さん!」
「ふ、毒とは言い得て妙だな。」
本当に我が家が気にしていない様子にそろそろと顔が上がってきた。未だに申し訳なさそうにしているものの先程よりは柔らかな雰囲気に戻っている。
あ、ちなみにグリードは陛下のお名前です。
父がその名を久しぶりに呼んだこともこの雰囲気に戻った一因だと思う。流石です。
「ティグリスを自室謹慎にしているのだが、意味のわからない事ばかり言っていてな。」
『…気に入らないな。』
静かだなと思っていたら、眉間にシワを寄せ気難しい表情でレオが唸っている。友人になって日は浅いが優しいレオがわたしくしのために怒っているのが分かるので、雰囲気は悪いけど嬉しかった。
彼は正義感ももってるから今回の事は許せないのかも知れない。
もしも触れるものなら、王子殿下にもっと見る目を鍛えろとか言って殴って引きずり連れてきてくれたかもしれないわね。
「陛下。わたくしは婚約者ではなくなりますが、王を支える誠実な臣下に成りますわ。だから、あの方が愛する方を害することはありません。」
「ありがとう。その気持ちが嬉しい。ラスレア嬢の様な優秀な者が支えてくれるなら良い国になるだろう。」
しかし、と陛下は覚悟を決めた様な表情になる。
「ティグリスに、王の素質はないだろう。この件だけでなく最近の行動が目に余る。」
「ですが、王子殿下にはご兄弟が…。」
「私もまだまだ若いとはいえ、新たに子を作るにはあと数年は若くないとな。はぁ。」
だけど、会議の大切さも知らない。自分で真実を見ようとせずに偏った者のみの意見を聞き信じる。などなど王の素質としては確かに難しい。それでは国が腐敗してしまうのは確かだ。
陛下も今回の件は王子殿下とわたくしの二人の話しを聞いて、おそらく学園にも話は聞いたりしたはずだ。
「こんな時に弟が側に居ればな。」
「弟?王弟ですか?」
「ん?ああ。ラスレア嬢は離れには行ったこと無かったな。」
お城の離れ?
確かに離れは行ったことはありません。離れには病気の方が居ると聞いていたので、治療の邪魔になるのが憚れたので行かなかったのです。
「歳が離れていてな、確かラスレアより10歳は上か。」
「あら、お若い。」
「昔、事故でな。眠り続けている。」
寂しそうなその、表情に何も言えずにいるとそれに気づいた陛下はわたくしの頭を優しく撫でてくれた。
「とても頼りになる奴なんだ。従姉妹のエリザを助けてな。」
『……た、助かったのか…。』
レオの小さな声は私にさえ届く事は無かった。
それにしてもエリザ様。聞いたことがあるような。
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